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「問い」をカタチにするインタビューメディア

地域と関わる

ITONAMI(旧EVERY DENIM)共同代表・山脇耀平さんが聞きたい、「顧客と一緒に地域ブランドを育てる方法」

「顧客と一緒に地域ブランドを育てる方法」から、ITONAMIの問いを変更します!

インタビュアー自らが掲げた「問い」を、継続的なインタビューを通じて深め、最終的なアウトプットを世に送り出すことを目指すカンバセーションズの新しいプロジェクト。同企画のインタビュアーのひとりであるデニムブランド「ITONAMI」の共同代表・山脇耀平さんは、当初「顧客と一緒に地域ブランドを育てる方法」という問いを掲げていましたが、そこから少し問いを変更することになりました。新しい問いは、「デニムブランドが考える、“愛すること”の覚え方」。どうして山脇さんは問いを変えることになったのでしょうか。本編のインタビューに入る前に、ITONAMIの山脇さんと、山脇さんの「問い」をカタチにしていくプロセスを発信する役割を担う編集者・ライターのあかしゆかさんの会話をお届けします。

あかしゆか
問いのテーマをシンプルにする

山脇:プロジェクト一緒にできるのうれしい。これからよろしくね。

あかし:こちらこそうれしい! よろしくね。でも、ちょっと気になっていたことがあって。「顧客と一緒に地域ブランドを育てる方法」っていう問い、とても良いなと思う反面、ちょっとわかりづらい気もするんだよね。

山脇:どういうところが?

あかし:耀平くんが、この問いを掲げた理由について話している記事を読んで凄く共感したんだけど、記事の中にもあったように、いまの問いの中には、ふたつの問いが混じっていると思うの。

山脇:「いかに(ブランドが)地域にとって大切な存在になれるのか?」と、「いかにお客さんに刹那的な消費をさせず、長く使ってもらえる製品を届けられるか?」だね。

あかし:そうそう。そのふたつの問いが混じって、「顧客と一緒に地域ブランドを育てる方法」といういまの問いになっていると思うんだけど、問いを混ぜてしまうと、途中で混乱しちゃう可能性があるのかなと思って。

山脇:うーん、たしかに。ただ、このふたつの問いは、「これからのブランドやメーカーは、何を目指すべきなのか?」という大きな問いを分解したときに出てきたもので、ぼくとしてはつながってはいるんだけど。

あかし:うんうん。大きなテーマとしてつながっているのは十分に理解した上で、「地域にとって大切な存在になること」と、「お客さんに長く使ってもらえる製品を届けること」って、問いの方向性が違うような気がする。問いをひとつに絞ってシンプルにした方が、結果的に深く掘り下げていけるんじゃないかな。

山脇:それはたしかにそうかも……。いまの問いは、ちょっと複雑過ぎるのかもしれない。このカンバセーションズの取り組みを見てくれる読者の人たちと問いを共有して一緒に深めていくためにも、もっとシンプルにした方が良さそうだね。

あかし:そう思う!

あかしゆか
「消費を超えたい」とずっと思っている

山脇:少し話は変わるけど、僕は前々からずっと「消費を超えたい」と思っていて。

あかし:耀平くん、ずっと前から言ってるよね。

山脇:うん。例えば、僕たちがメディアに出たりすると、「デニム兄弟がやっているブランドだから買った」という声をいただいたりすることも多いんだけど、それだとやっぱり、「消費」という枠を超えることはできないなと思ってる。僕たちがつくっているから買った、とか、ストーリーに共感したから買った、というのももちろんうれしいんだけど、それよりも、ちゃんと「モノ自体」に、持ち主自身が価値を感じてほしい。モノとお客さんの関係性が主人公であって、僕たちは主人公ではないというか。自分が手をかけることによってモノが変化していくことを美しいと思えるような、言わば「育てる」ことの楽しみを、いろんな人に感じてほしいというのが、ぼくの根本にある思いなんだよね。

あかし:うんうん。

山脇:強過ぎるメッセージがあると、それが記号になってしまうから「点」として消費されやすくて。そうではなく、もっとお客さんと「長く続いていく」関係性でいたいなと思う。でも、それをどうやったら達成できるのかについては、ずっと悩んでいることだなぁ。

あかし:なるほど。これは、分解したふたつめの「いかにお客さんに刹那的な消費をさせず、長く使ってもらえる製品を届けられるか?」という問いにつながるところだよね。

山脇:そうだね。

あかし:私は実は、いままで「点」の消費をしてきた人間なんだよね。最近になってようやく、何かを大切に、長く使っていくことの楽しみを覚えてきた。育てることの楽しみを、この年齢になってやっと感じられるようになったというか。「育てる」ことって、「愛する」ことだなぁって思うようになったの。

山脇:育てることは、愛すること。まさにそうだと思う。ゆかちゃんは、どうして愛することの大切さに気づいたの?

あかし:私はいままで、割と「愛される」側になることが多くて、自分が「愛する」側になる経験ってあまりなかったの。でも、プライベートで「愛することを覚えなきゃ、これから私は幸せになることができなさそうだ」と思う出来事があって、そこから、愛することに興味を持ち出した。

山脇:おもしろいね。

「服と、ヨリを戻そう。」をテーマに、デニム製造に使われるインディゴ染料を用いて衣類を染め直すITONAMIの新サービス「fukuen」。2018年から運営する「服のたね」に続く、「服との付き合い方」をテーマにした企画の第2弾として、2021年1月にスタートした。

あかし:でも、愛することって難しいよね。愛することに興味を持ち出したとしても、愛し続けることができなかったりもする。大切にしようと意気込んで花を買ったとしても、すぐに枯らしちゃったりとか……。愛することの楽しみを覚えることができたとき、そして、ちゃんと愛し続けることができるようになったとき、人はもしかしたら、モノを長く大切にできるのかもしれない。

山脇:それは本当にそうだと思う。エーリッヒ・フロムの名著『愛するということ』でも、「愛は技術である」という名言があるよね。

あかし:わかる。「愛は技術である」っていう言葉を知ったとき、私も衝撃を受けた……! 愛って、後天的に学べるものなんだなぁって。

山脇:愛することについては、もっと突き詰めていきたいかも。ゆかちゃんが言ってくれたように、そこに、お客さんに長く製品を大切に使ってもらうためのヒントが隠れている気がする。

あかし:これじゃない? 新しい問い(笑)。「愛することに興味を持ち、適切に愛せるようになるためには、どうすればいいのか?」。私のような「愛すること初心者」が、うまく愛せるようになるためにはどうすればいいのか。ラブビギナーズに優しいインタビュー連載になるといいのかも。

山脇:いいね、ラブビギナーズ(笑)。「デニムブランドが考える、“愛することの覚え方”」。新しい問いはそれにしよう!

あかしゆか
愛することの3段階に沿ってインタビューを進めよう

あかし:愛することを覚えるって、「愛することっておもしろいんだ」という「気づき」のフェーズのあとに、「愛し続ける」という「継続」のフェーズがきて、さらには、ブランド側の視点として、「愛させること」の上手さも関係してきそうだよね。

山脇:たしかに。愛することのおもしろさに気づくこと、愛し続けられること、そして愛させること。インタビューも、その3段階にわけて考えられると良さそう。そして、最終的なアウトプットとして、「愛すること」の楽しみを実感できるようなサービスをつくれるとよさそうだね。

あかし:それはめっちゃいい……。

山脇:ずっとITONAMIでやりたかったけどできなかったことでもあるし、このプロジェクトはぜひ実現させたい!

あかし:賛成! 第1回目のインタビューは、もうすでに、雑誌『d design travel』の編集長の神藤秀人さんにお話を聞くことが決まってるんだよね。

山脇:うん。当初は、「顧客と一緒に地域ブランドを育てる方法」として聞く予定だったけど、それも、「愛することの覚え方」というテーマに絞って聞いていった方がいいのかも。

あかし:それが良いと思う! 地方のさまざまなブランドやプロダクトを見てきた神藤さんだからこその「愛すること」の定義も絶対あるはず。

山脇:そうしようか! じゃあ、その方向性で進めていこう。あらためて、これからよろしくお願いします!