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「問い」をカタチにするインタビューメディア

【レポート】カンバセーションズ第3期インタビュアー中間報告会

去る9月13日、カンバセーションズ第3期インタビュアー3組と、それぞれの担当編集・ライターによる中間報告会をオンラインで開催しました。2部構成で進められた会の前半では、各担当編集・ライターからインタビュアーへのインタビュー形式でこれまでのカンバセーションズでの歩みやこれからの展望についてそれぞれに語って頂きました。そして後半は、各インタビュアーから今後プロジェクトを進めていく上での道標となるような「問い」が参加者に投げかけられ、活発な議論が交わされました。すでに公開済みの3本の中間報告インタビュー(※ページ下部の「関連インタビュー」参照)に続き、今回は中間報告会の後半パートのレポートをお届けします。

カンバセーションズ第3期インタビュアー+各担当編集・ライターが一同に会した中間報告会。

ITONAMI・山脇さんからの問い「愛に必要な『信念』って何ですか?」     

オンラインで行われた中間報告会には、第3期インタビュアーの3組と、各担当編集・ライター3人のフルメンバーが参加。各担当編集・ライターからインタビュアーへのインタビュー形式でこれまでの歩みを振り返った前半に引き続き、会の後半は、3組のインタビュアーそれぞれが用意した「問い」について、参加者がそれぞれの視点から応答する議論の場となりました。

トップバッターを務めてくれたのは、本プロジェクトのきっかけをつくってくれたITONAMIの山脇耀平さん。直近のインタビューで、エーリッヒ・フロム『愛するということ』の訳者・鈴木晶さんに取材した山脇さんは、「愛に必要なのは、理にかなった信念である」という同書の論旨を引き合いに出し、こんな質問を投げかけました。

山脇:フロムはこの本を通じて、モノを愛するためには、周囲の情報やアドバイス、トレンドなどに振り回され過ぎずに、自らの経験や知識から得た信念が必要であること。そして、その信念にもとづいた行動を積み重ねることが自己肯定感を高め、ひいては他者にも愛を与えられる人間になれることを伝えているのだと解釈しています。先日インタビューした鈴木先生は、信念を得るために必要なのは「内省」だと仰っていましたが、いま僕は、自分にとって何が大切なのかということを内省する時間が持ちにくくなっていて、少し危機感を抱いています。そこでみなさんには、誰がなんと言おうとこれは好きだと言えるような信念があるか、そしてそれはどのように獲得されたのかということを聞いてみたいです。

ITONAMIの山脇耀平さん。

山脇さんからの問いの投げかけを受けて、以前に「愛する喜び」をテーマにしたカンバセーションズの座談会にも参加したCIALの戸塚佑太さんは、「僕は、まず自分でつくってみるというのが一番の近道だなと感じています。つくることによって見えてくるものがあるし、自分はディテールの面白さがわからなければそれを愛せないところがあります」と答えてくれました。この中間報告会にも和服姿で参加していた戸塚さんは、最近初めて自分で着物をつくったそうです。「つくることによって縫製などのディテールを解像度高く見られるようになったことがとてもうれしかった」という戸塚さんは、「自らつくることによって、自分が何を大事にしたいのかということにも向き合える」と続けてくれました。

CIALの戸塚佑太さん。

一方、ナオライの三宅紘一郎さんは、愛するに至る過程において、「『変化するもの』がひとつのキーワードなのではないか」と話してくれました。「変化していくもの」への愛については、まさに鈴木晶さんのインタビューでも議論されたトピックでしたが、三宅さんはご自身の農業の経験から、レモンの苗木を例に出してくれました。「先日、4年前に植えた苗木が初めて自分の背丈を越えたのですが、それが本当にうれしくて。例えば、宝石などにしても『永遠の輝き』などと言われたりしますが、実は鉱物である宝石は少しずつ変化しているかもしれない。そうした対象の変化が感じられることが大事なんじゃないかなと思います」。

三宅さんの言葉を受けて山脇さんは、「プロセスに寄り添えること自体が、人とモノの間にある固有の体験として価値を持つのかもしれないですね。そういう意味でも、変化することによって魅力が高まっていくようなものであることは重要なのだと改めて思いました。着古されたデニムに魅力を感じる人と、逆に汚いと感じる人がそれぞれいるのですが、経年変化に魅力を見出せる感覚を育んだり、そのプロセスを楽しみながらモノを使っていけるような体験を提供したいですね」とカンバセーションズでのアウトプットを見据えて、議論をまとめてくれました。

ナオライ・三宅さんからの問い「どうやって『Do』を提供すればいいですか?」   

続いて登場するのは、ナオライの三宅さんです。
まず三宅さんは、現在ナオライのインパクトアドバイザーとなっている一般社団法人アースカンパニーの濱川明日香さん、濱川知宏さんから聞いたという「Be-Do-Haveのコンセプト」について教えてくれました。「現代社会では、たくさん勉強し、働くこと(=Do)によって、お金をはじめさまざまなものを得て(=Have)、幸せになったり夢を叶えようとする(=Be)人がほとんどです。でも、自分がどうありたいか(=Be)が先にあれば、なすべきアクション(=Do)を見えてくるし、その結果得られるものがある(=Have)と考えることが大切だとアースカンパニーさんから教わりました」と話す三宅さんは、続けてこんな問いを参加者に投げかけました。

三宅:ナオライにとっての「Be」は、カンバセーションズで掲げている問いにもつながる「自然と一体化した生き方をしたい」ということなのですが、これに共感してくれた人たちに対して、どんな「Do」の機会を提供できるのかということが大きなテーマになっています。そこで、みなさんには、ブランドとしての「Do」の提供の仕方についてご意見を伺ってみたいと思っています。

ナオライの三宅紘一郎さん。

この問いに最初に反応したのは、CIALの加藤大雅さん。この10月に大学時代を過ごした秋田への移住が決まっている加藤さんは、「秋田に行くという話をすると、だいたい何をしに行くのか(=Do)を聞かれるんです。もちろん、やりたいことはありつつも、それ以上に『こうありたい』『こう生きていきたい』という『Be』が先にあるから、秋田に行くという感覚なんです。そういう意味で、『Be』が先にあるというお話にはとても共感できたし、Beを共にする人たちの間でDoが共有できると、ブランドとしても大きな広がりが生まれそうですよね」と話してくれました。

また、三宅さんの伴走者である編集・ライターの米山凱一郎さんは、「僕はナオライのお手伝いなどもさせて頂いていますが、自分にとっての『Do』はナオライの拠点がある三角島に行くことで、それによって自分自身の『Be』にも大きな影響がありました」とご自身の経験を話してくれました。

ナオライ三宅さんの担当編集・ライターの米山凱一郎さん。

とはいえ、島に行くというのは多くの人が選択できる「Do」ではないことも事実です。ブランドが提供できる「Do」のあり方として、先日ITONAMIが行ったデニムの回収プロジェクト「FUKKOKU」は一つのヒントになるかもしれません。このプロジェクトが生まれた背景についてITONAMIの山脇さんは、「自分たちが伝えたいことをみなさんに考えてもらうきっかけをつくりたいという思いがありました」と振り返ります。さらに、拠点である岡山県の児島で宿泊施設「DENIM HOSTEL float」も運営している山脇さんは、「自分自身のことをについてゆっくり考える余裕がない人たちをここに連れてきて、自分なりに過ごせる時間を提供したい」と語るように、モノだけではなく、時間もまた、ブランドが提供できる「Do」だと考えているようです。

最後に、山脇さんの伴走者のあかしゆかさんが、こんな視点を提供してくれました。「私にとっては、『Be』がひとりにならないことが大事だと感じました。例えば、『この場所でこの人たちと同じ時間を共有したい』といった複数人で成り立つ『Be』が見つけられたら、結果的にその人たちのために何かをしたいというGIveの『Do』が生まれるんじゃないかなと」。あかしさんが今年になって瀬戸内で始めた本屋「aru(アル)」や、山脇さんと進めているカンバセーションズでのプロジェクトも、ひとりにならない『Be』が大きな動機になっているのだそうです。

それぞれ視点からの意見にしきりに頷いていた三宅さんは、この議論を通してさまざまな気付きを得られたようでした。

ITONAMI山脇さんの担当編集・ライターのあかしゆかさん。

CIALの問い「どんなものづくりなら誇りを持てますか?」     

そして、最後はCIALからの問いです。
中間報告インタビューでも、自分たちがモノを生み出す意味について改めて考えたいと話していた戸塚さん、加藤さんは、自社ブランドを運営しているナオライ・三宅さんとITONAMI・山脇さんにこんな問いを投げかけました。

加藤:今回天盃さんとつくるコーヒーリキュールでは、コーヒーの焙煎やパッケージなどのデザインを自社で行う一方で、原料の生産やお酒づくりの部分を自分たちが担うわけではありません。そこでおふたりには、「自分たちがこれをつくった」と誇れるものづくりとは何か、ということについて聞いてみたいです。

戸塚:ものづくりは総合的なプロセスなので、これを自分がつくったと言い切ってしまうことに少しおこがましさを感じるところがあります。逆にこれを失ったら自分たちのものづくりではなくなるということなどもお聞きしたいです。

CIALの加藤大雅さん。

これに対してITONAMIの山脇さんは、「アパレル業界はサプライチェーンが非常に長く、世界的に見てもすべてを自社でつくっている企業はないんです」と前置きした上で、「自分たちの知識や技術が及ばない部分は、専門の工場などにお任せしたり、教えて頂かなくてはいけないのですが、大切なことは自分たちが関係する生産の工場や原料の農家さんらと向き合う態度だと思います。どこまで自分事にできるかということが、誇りにもつながっていくのかもしれません」と答えてくれました。

その言葉を受けてナオライの三宅さんは、「僕らが造るお酒も、原料となるお米や日本酒は別の方がつくっていますが、物理的に異なる会社がサプライチェーンを分担しているだけであって、どの工程においても何か問題があったら一目散に駆けつけたいと思っています。自分たちとしては、サプライチェーンについて所有の概念に縛られずに考えたいし、地元全体がナオライの生産工場だと考えています」と、メーカーとしての責任感、共にものづくりをする人たちへの信頼感、一体感を大切にされていることを伺わせるコメントを残してくれました。

さらに山脇さんは、「目の前にお客さんがいる自分たちは感謝をされやすい立場にあるのですが、ものづくりの上流にいくほどそれが難しくなります。だからこそ、お客さんからの評価や感謝を製造者側にもしっかり共有していくことが、一緒にものづくりをしていく上で大事なことだと思っています」と自社ブランドを持つメーカーとしての心構えについて話していました。

ものづくりにおけるあらゆる工程や関係性を自分事として認識できれば、きっとその仕事は、事業主体者であるメーカーにとっても、サプライチェーンを担う製造者たちにとっても、誇りが持てるものになるはずです。三宅さんは、「僕らの浄酎に使われているお米をつくってくれているタナベファームの田邉真三さんは、田んぼの土壌づくりから発酵が始まっていると仰るんですね。それを聞いて、酒造りは稲の段階から始まっていると感じられたことが僕らに大きな変化をもたらしましたし、田邉さんご自身も自分の田んぼからつくられている浄酎のことを誇りに思ってくれています」というエピソードを話してくれました。

CIALのPRエディターとして本プロジェクトにも併走してくれているイノウマサヒロさんは、「編集などの仕事をしていて大事だなと感じるのは、取材などで向き合う相手の志にどれだけ共感できるかということ。ものづくりにおいても、一緒につくる人の志に共感できれば自分事になるはずですし、そのためにも相手との対話を続けることが大事だと思いました」と、来るべき天盃との協働を見据えて語ってくれました。

CIALのイノウマサヒロさん。

それぞれの志が共有される場   

こうして幕を閉じた中間報告会は、3組のインタビュアーそれぞれにとって実りのある時間となったようです。また、三者三様の問いを投げかけ合い、議論が交わされたこの場自体もまた、ものづくりにおける志を共有する機会となり、オンライン開催にもかかわらず、終始温かい雰囲気で満たされていたことも印象的でした。

最後には、中間報告会に同席してくださったクラウドファンディング支援者の方からも、「つくられたものを使う側に感じられる誇りというものもあると思います。今日のようにつくり手の方たちが迷いながら問いを深めていく様子を目の当たりにすることで、誇りや共感はより大きくなっていくのだと思います」というありがたい感想を頂きました。

それぞれのアウトプットに向けて、これからも3組のインタビューは続いていきます。
今後の動向にもぜひご注目ください!