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「問い」をカタチにするインタビューメディア

問いから学ぶ

ITONAMI(旧EVERY DENIM)共同代表・山脇耀平さんと始める、カンバセーションズの新プロジェクト【インタビュアー募集】

ITONAMI(旧EVERY DENIM)共同代表・山脇耀平さんと始める、
カンバセーションズの新プロジェクト【インタビュアー募集】

「問い」をカタチにするインタビューメディアとして2018年に再スタートしたカンバセーションズでは、これまでに計6名のインタビューたちがそれぞれの「問い」を携え、プロジェクトの実現に向けて各界のスペシャリストたちにインタビューを重ねてきました。そしてこの度、カンバセーションズはリニューアル時より掲げてきた「共創のプラットフォーム」いうメディアのあり方を確立していくために、新たな取り組みをスタートさせることになりました。

そのパートナーとして、本プロジェクトの先導役になってくれるのは、デニム産業が集積する岡山県の児島を拠点とするブランド・ITONAMI(イトナミ)の山脇耀平さんです。広く知られていた「EVERY DENIM」から「ITONAMI」へとブランド名を変え、新たなスタートを切る山脇さんのほか、今回のプロジェクトでは、アフターコロナ時代のものづくりを模索するメーカーやブランドを募り、計3名(組)の同期インタビュアーたちが、「これからのものづくりのあり方」という大きな問いを共有しながら、各々のプロジェクト実現に向けてインタビューを重ねていきます。
本企画のキックオフとして、まずはEVERY DENIM改めITONAMIのこれまでの歩みや、カンバセーションズで追求したい「問い」などについて山脇さんに聞いたインタビューをお届けします。記事の最後には、クラウドファンディングやオンラインコミュニティなども活用しながら、これからの時代における「読者との関係性」「メディア運営のあり方」を模索する今回のカンバセーションズのチャレンジについてもコメントして頂きましたので、ぜひご覧ください。

カンバセーションズ
消費されないデニムを届けたい

まずは、EVERY DENIM(現ITONAMI)というブランドが生まれた経緯から聞かせてください。

山脇:共同代表である自分と弟は兵庫県加古川市出身なのですが、弟が大学進学をきっかけに岡山に行き、ジーンズの職人さんと出会ったことが最初のきっかけです。うちは両親ともに公務員で、普通の住宅街で育ったのでものづくりや地域に根づいた暮らしなどと無縁だったのですが、その職人さんにものづくりの現場を見せてもらった時に、凄くカッコ良いと感じたんですね。それがきっかけとなり、デニム産業の集積地である岡山、広島エリアの他の工場の方などにもお話を伺うようになり、彼らのものづくりへの思いや誇りをもっと多くの人たちに知ってほしいと思うようになりました。そして、EVERY DENIMという名前で、職人さんたちから聞いた話をWebで発信する活動を始めたのですが、縮小傾向にあるデニム産業のためにもっと力になれることはないかと考え、自分たちがデニム製品の企画・販売をすることに決め、2015年に最初の製品をリリースしました。

オンライン取材に応じてくれた山脇耀平さん。

製品はどのように販売していったのですか?

山脇:当初から「攻め」の姿勢で、各地の人が集まっていそうな場所にデニムを持っていき、販売していました。その頃はちょうど全国にゲストハウスやコミュニティスペースが増え始めていた時期だったので、そうした場所を週末にお借りして、自分たちが岡山から来たことを伝えた上でデニムの試着してもらい、共感してくれた方に販売するということを続けてきました。さらに、2017年にはクラウドファンディングでキャンピングカーの購入資金を募り、それに乗って僕たち兄弟が47都道府県をまわってデニムを届けるとともに、各地の地場産業で働く人たちとも交流するというプロジェクトを行いました。毎月1週間ずつ、3都道府県をまわるペースで旅をして、計15ヶ月をかけて47都道府県をコンプリートし、色々な人たちとのつながりをつくることができました。

2019年には岡山に宿泊施設もオープンされましたよね。

山脇:はい。以前から固定の拠点を持ちたいという思いはあったのですが、キャンピングカーで全国を回る中で、その土地の資源を使い、地域に根ざし、貢献することを誇りに思っているつくり手たちの姿に影響を受け、自分たちも岡山に戻ったら人を迎えられる場所をつくろうと考えるようになりました。そして、クラウドファンディングでの資金調達なども行い、倉敷市児島に「DENIM HOSTEL float」をオープンしました。国内のデニム産業のことをたくさんの人たちに知ってもらいたいという僕たちの願いはいまも変わらず、それを直接体験してもらえる施設にしていきたいと考えています。

EVERY DENIMでは、「消費されないデニムを届ける」ことを理念に掲げていましたが、ここにはどんな思いがあったのですか?

山脇:僕らは創業以来、岡山や広島の地で大切につくられた素材の良さを活かしながら、つくり手たちの思いを製品に込めて届けたいという考えを持ち続けてきました。一方で、製品を受け取ってもらうお客さん側に対しては、洋服に限らずモノや情報が飽和し、時間の過ごし方も刹那的になっている時代だからこそ、何かひとつ自分が大切だと思えるモノを持ち、そのモノとの関係性を長い時間軸の中で育んでもらいたいという変わらぬ思いを持っています。時間をかけて大切につくった僕らのデニムが刹那的に消費されてしまわないような届け方をしていきたいし、お客さんの手に渡った後も大切に使い続けてもらいたいという願いが、この理念には込められています。

瀬戸内海に浮かぶ島々が望める、デニムを基調としたホステル・アパレル・カフェの複合施設として2019年にオープンした「DENIM HOSTEL float」。

カンバセーションズ
これからのメーカーは何を目指すのか?

クラウドファンディングなどを通じてプロジェクトや製品づくりのプロセスから発信するなど、従来のメーカーやブランドと消費者の関係とは一線を画すリレーションシップを育まれていますよね。

山脇:はい。メーカー側の一方的な都合でモノを売るというのはある種の押しつけにもなりますし、それこそ刹那的な消費を促してしまうことにもなりかねません。そうした一方的な関係性ではなく、よりフラットな状態でお客さんとコミュニケーションを取りたいと僕たちは考えています。例えば、オンラインサロンを通じて製品の企画段階から関わってもらったり、クラウドファンディングで支援をしてもらうなど、少しでも深い関係、継続的な関係をブランドと持ってもらうことによって、最終的に届けられたモノをより大切にしてもらえるのではないかと思っています。

プロセスをオープンにすることで仲間や支援者を増やしていくというのは、今回参加して頂くカンバセーションズがメディアとして目指しているところでもあります。ちなみに、これまでにインタビューや対話をものづくりのプロセスに取り入れたことはありましたか?

山脇:自分たちのものづくりのスタイルや目指しているものに関する仮説や問いを立て、インタビューしていくようなものづくりはしたことがありません。カンバセーションズのユニークな点のひとつは、インタビュアーたちが各分野の専門家たちに話を聞いていく様子から、それぞれの問いに向き合う姿勢が浮き彫りになってくるところです。僕らもこの貴重な機会を通じて、あるべきブランドの姿についてさまざまな人たちと議論を重ね、学びや気づきを得ていく様子を、ブランドの顧客やこれからITONAMIのことを知ってくださる方たちに発信しながら、ものづくりを進めていくというチャレンジがしてみたいですね。

これまでに山脇さんたちは、会員制オンラインサロンのメンバーたちと話し合いを重ね、1年間かけて1本のデニムをつくったことも。

カンバセーションズのインタビューを通じて掘り下げていきたい山脇さんの「問い」は何ですか?

山脇:大きな問いとしてあるのは、「これからのブランドやメーカーは、何を目指すべきなのか?」ということです。具体的な問題意識としては大きく2つあって、まずは岡山に根ざしたものづくりをしている自分たちにとって、「いかに地域にとって大切な存在になれるのか?」ということがあります。地域と深い関係が築けなければ、「地方発」といった言葉なども単なる記号として消費されてしまうように思いますし、やや抽象的な話になりますが、長い時間軸の中で地域との関係を育んでいくことで、消費というものを超えていけるのではないかという気がしています。また最近は、自分たちがどんな場所の上に成り立っているのかということをしっかり踏まえた上でものづくりに取り組まなければ、ブランドとしても製品としても弱いものになってしまうのではないかとも思っています。

もうひとつの問題意識についても教えてください。

山脇:これまでの話とつながりますが、「いかにお客さんに刹那的な消費をさせず、長く使ってもらえる製品を届けられるか?」というのがもうひとつのテーマです。閉ざされた空間の中で過ごさざるを得なくなったコロナ禍の自粛期間中というのは、多くの人たちにとって自分の存在と身の回りのモノとの関係を見直す機会にもなったと思うんです。そしてこれは、自分が人生において本当に大切にしたいもの、あるいは目指すべき生き方について考えることでもあったはずです。僕たちは一デニムブランドとして、自分が大切にしたいスタイルの拠り所になるようなもの、生きていることを肯定してくれるようなものを届けていくことで、個々人が納得できる生き方を見つけていくことに貢献できないかと考えているんです。

試着展示会のための撮影風景。
試着展示会の様子。

こうした「問い」のもと、どんな人たちにインタビューしていきたいと考えていますか?

山脇:まずは、地域における商業や経済学、地場産業などに明るい方にインタビューしてみたいですね。日本の地場産業の多くは小規模な企業の分業によって成り立っていると思うので、地域内でのネットワーク形成ということを中心にお話を聞いてみたいです。また、ブランドという観点から、例えば広島の「マツダ」のように地域発ブランドとして成功を収め、長年にわたってその地を背負ってきたようなメーカーの方や、地域ブランドのコンサルタントのような方ともお話しをしてみたいです。あとは、これからの消費のあり方や消費社会の向かう方向性など、消費論に詳しい方にもインタビューしてみたいと思っています。

現時点では、どんなアウトプットのカタチを想定していますか?

山脇:やはり僕らの場合は、製品というアウトプットを出すことがベストだと考えています。専門家の方たちにインタビューを重ねていく中で醸成されていった考えを製品に落とし込み、それをもって自分たちの研究報告にできるといいなと。

リニューアルしたITONAMIのロゴマーク。

カンバセーションズ
求む! 問いを共有するインタビュアー

新型コロナウィルスの影響であらゆる業界、産業が一旦立ち止まり、未来について考えることを余儀なくされましたが、今回のカンバセーションズの企画では、「これからのものづくり」「ブランドやメーカーのあり方」という大きな問いを共有しながら、個々のプロジェクト実現に向けて切磋琢磨していける“同期生”とも言えるインタビュアーを、山脇さんの他に2名(組)ほど募りたいと考えています。ここまでにお話し頂いた「メーカーとユーザー」「個人とモノ」「ブランドと地域」などのこれからの関係性を主なテーマに、共に未来を考えていけるような仲間となる人たちが見つけられると良いなと考えています。

山脇:横並びでこうしたテーマについて考えていける人たちがいるのはとても心強いですね。また、例えば「地域に根ざす」と言っても僕らのように出身地ではない地域で活動している人間と、その土地に生まれ育ち、家業を継いだような方では立場も考え方も大きく異なると思いますし、そうした人たちの問題意識や考え方に触れられることも非常に楽しみです。

第一期インタビュアーの方たちも語ってくれていましたが、同期インタビュアーの横のつながりからコラボレーションなどが生まれることにも期待しています。ちなみに、第三期となる今回のインタビュアーの方たちの取材やインタビュー記事の制作をはじめとした運営費を、クラウドファンディングで募る予定です。そして、ゆくゆくは第三期インタビュアーの面々と支援者となってくれた方たちが大きな「問い」を共有しながら、お互いに知見を深めていけるようなイベントの開催やオンラインコミュニティの運営などにもつなげていきたいと考えています。

山脇:さまざまなメディアが読者との関係やマネタイズの方法などを模索している中で、今回のカンバセーションズの取り組みはひとつの新しいやり方になると思います。自分たちも主体的に関わりながら、メディアと読者の新しい関係性を世の中に示していきたいですし、こうしたチャレンジにもワクワクしてくれるようなものづくり企業やメーカーの人たちが手を上げてくださるといいですね。

ITONAMI共同代表の山脇耀平さん(左)と島田舜介さん(右)。

山脇さんからのメッセージ

2020年10月、僕たち「EVERY DENIM」は、「ITONAMI」へと生まれ変わりました。この「EVERY DENIM」というブランド名があったからこそ、僕たち兄弟は前進することができたし、胸を張って活動を続けることができました。しかし、さまざまな取り組みを通して多くの人たちと出会い、ブランドの価値を問い続けていく中で、いつしかEVERY DENIMという名前は、ブランドがこれから進むべき道筋を指し示すものではなくなりつつあると感じるようになりました。
ITONAMIという名前は、僕たちの生業であるデニム・繊維産業(=糸)と、自分たちの拠点である岡山の海(=波)を表したものですが、同時に個人の「意」思から、物事が「波」のように広がっていくさまも重ね合わされています(I・TO・NAMI)。ITONAMIでは、意志を持ってモノを選ぶこと、モノとともに自分なりの理由を持つこと、モノとの関係を育む中で生まれる発見や喜びを他者と分かち合うことを大切にするデニムブランドとして、新たなスタートを切ります。
このカンバセーションズでのインタビューを通して、僕らが温め続けてきた企画であり、ITONAMIの最初の一歩となるプロジェクトをしっかりカタチにしていきたいと考えています。