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橋本 梓

美術館研究員

中村悠介

編集者

今回インタビュアーを務める橋本 梓さんは、大阪・中之島にある国立国際美術館に勤務する研究員。そんな橋本さんがインタビューする中村悠介さんは、大阪発のローカル・カルチャー・マガジン『IN/SECTS』をはじめ、さまざまなメディアの編集や執筆、イベント企画などを手がける編集者。この7月に国立国際美術館で開催される「Music Today on Fluxus 蓮沼執太 vs 塩見允枝子」の企画を共に進めているおふたりの間で、果たしてどんなお話が繰り広げられるのでしょうか?

2. 編集ってどんな仕事ですか?

中村悠介 

いま自分がやっている仕事は、ある種のチェック機構みたいなもの。門外漢の立場から客観的にものを見て第三者に伝える仕事だと思っています。

Q.中村さんは音楽系の編集者というイメージがあるんですけど、これまでどんな音楽を聴いてきたんですか?

中村:うわー、お里が知れます(笑)。中学に入ってパンクが好きになりました。そこからニューエスト・モデルエルヴィス・コステロなんかが好きになって。あと、やっぱりフリッパーズ・ギターという存在も大きかったですね。例えば、雑誌の「Olive」に盛んに広告を出したり、音楽だけではなく、その戦略やファッションにも衝撃を受けました、いま考えると。その後、高校がアメ村の近くだったこともあって、学校帰りによく寄っていた古着屋さんで当時バイトしていたDJの田中フミヤさんと知り合って、フミヤさんの「CHAOS」っていうイベントでキャッシャーをやったりするようになりました。そこでテクノを聴いてカッコ良いなって。新しいパンクという感じで。それから大学ではヒップホップやジャズが好きになったりしてニューヨークで友達と朝から晩までレコード屋巡りをしたりしていましたね。安いレコードばっかり買ってました、それはいまもですけど。

Q.めっちゃ本格的ですね(笑)。

中村:でも別にDJとかじゃないです。その当時一緒にニューヨークに行った友達と、その後「OK FRED」という雑誌を作ったりもしました。大学生の頃はCRJ-Westというサークルでカレッジチャートをラジオ番組で紹介したりしていて、結構楽しかったですね。別に編集者になりたいと思っていたわけではないんだけど、そうやってレコード屋とか本屋をブラブラしてたら、こういう仕事をするようになったという感じなんです。なんの考えもなく。

Q.音楽関係の仕事をやろうとは思わなかったんですか?

中村:それはなかったんですよね。学園祭でバンドのライブをやったりはしていたんだけど、プロになりたいというよりは、ただ面白いからやっていた感じで。レコードも好きだったけど、自分がレコード屋をやるというよりは、お客さんでいることが良かったんですね。音楽を作りたい気持ちとかはいっさいなしです。ただ、普段サラリーマンをやっていて、土日だけライブに行くとかバンドをするというのもちょっとできない気がしていて。だから就職活動もしてないし。もの凄く中途半端なまま、現在に至る(笑)。

中村さんが編集を手がける雑誌「IN/SECTS」。 中村さんが編集を手がける雑誌「IN/SECTS」。

Q.そうは言っても、曲がりなりにも編集者としてお金をもらっているわけじゃないですか? 自分の仕事のどんな部分にプロフェッショナリズムがあるんですか?

中村:プロの線引きは難しいですけど考えてみると、いま自分がやっている仕事は、聞こえが悪いけど、ある種のチェック機構みたいなものなのかなと思っていて。自分がお客さんの立場としてこれを見た時にどう思うだろう? どうあるべきだろう? という気持ちはずっと持っておきたいというのがあって、例えばさっきのイベントの話じゃないけど、自分がお客さんでそこに来た時にあまりに身内ノリ過ぎて意味不明だったらわざわざイベントやる意味がないですよね。僕は音楽が好きだけど、専門の仕事をしているわけではないし門外漢なんですよ。カマトトぶっているわけではなくて、専門家になってしまうと自分自身がお客さんでいられなくなるし、中に入り過ぎると僕自身が面白くないですよね。門外漢の立場から客観的にものを見て第三者に伝える、というのが編集者としての仕事だと思っています。

展覧会「風穴 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから」(2011年、国立国際美術館)よりcontact Gonzoの展示風景 写真提供:国立国際美術館 撮影:福永一夫 展覧会「〈私〉の解体へ:柏原えつとむの場合」(2012年、国立国際美術館)より柏原えつとむ・小泉博夫・前川欣三《Mr.Xとは何か?》(1968-69)の展示風景  写真提供:国立国際美術館 撮影:福永一夫

Q.そういう意味では、私の場合は、職業的に専門家であることを求められるけど、一方でいま中村さんが話していたようなアマチュアリズム的な気持ちもどこかで持ってないといけないなと。

中村:橋本さんは、作品を歴史や文脈を踏まえた上で位置づけていくということをされていて、大変な仕事だなと思うんですね。憧れます。一方で僕の場合は、好き勝手に作品を見たいという思いがどうしてもあるというか。作家が友達だったとしても、がんばってなるべくフラットな目線で。お客さんとして。例えば、名画と言われるような作品でも自分があまり面白くないと思えばそれはそれでいいわけで。当たり前ですけど鑑賞はそれが楽しいと思うわけです。鑑賞人生ですね(笑)。でも、いまは色んな情報が入ってきたりして、だんだんそういう感覚を保つのが難しくなってくるなというのも感じるんです。ピュアなままでいたい、ピーターパン症候群(笑)。

インフォメーション

橋本さんと中村さんが企画に携わっている「Music Today on Fluxus 蓮沼執太 vs 塩見允枝子」は、7月7日に国立国際美術館で開催予定。

もっと知りたい人は…

  • 橋本 梓 

    橋本 梓

    美術館研究員

    1978年滋賀県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程指導認定退学。2008年より国立国際美術館にて研究員を務める。企画展に「風穴 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから」(国立国際美術館、2011年)、「〈私〉の解体へ:柏原えつとむの場合」(国立国際美術館、2012年)、共同キュレーションによる「Omnilogue: Alternating Currents」(PICA、オーストラリア/国際交流基金、2011年)。共訳書に、ジョナサン・クレーリー『知覚の宙吊り』(平凡社、2005年)。

  • 中村悠介 

    中村悠介

    編集者

    1976年生まれ。京都市在住。雑誌編集者。過去は「Lマガジン」(京阪神エルマガジン社)、「OK FRED」(リトルモア)。現在は大阪の谷町6丁目で「IN/SECTS」(LLCインセクツ)の編集業に携わる。