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渡邉格、麻里子

パン屋「タルマーリー」

吉田全作

酪農家
吉田牧場

渡邉 格麻里子さん夫妻が営む「タルマーリー」は、今年の2月に岡山県真庭市にオープンした自家製天然酵母&国産小麦のパン屋さん。昨年まで千葉県いすみ市で開いていたお店をたたみ、震災を機に岡山にお店ごと移住してきたおふたりがインタビューするのは、家族4人で自家製チーズを生産し、全国各地の有名レストランなどに販売している吉田牧場の吉田全作さん。吉田さんの本を読んで以来、いつかはお会いしてみたいと思っていたというおふたりと一緒に、岡山県吉備中央町にある吉田牧場さんを訪ねてきました。

2. 東京はどんな場所だと思いますか?

吉田全作 

東京というのは、好奇心を持っている人間でも、お金がないと何もできない。自由なところだと勘違いしがちだけど、これほど行動が制約されてしまう場所はないんです。

Q.最初にも話しましたが、僕らは千葉にいる時から、近くで採れるものを使って、その土地の菌で発酵させたパンを作るということをしてきたのですが、原発事故でそれが足元から揺るがされてしまったんですね。もともと千葉を選んだのは、東京から近くて、田舎の良いところもあるからという理由だったんですが、今回岡山に来てみて、東京経済から離れてしまうと、こんなにも豊かなんだと。まず水が美味しいし、それはパンを作る上でも生活をする上でも重要なファクターになっています。

吉田:僕は東京で5年ほど暮らしていた時期があったんですよ。でも、東京というのは、好奇心を持っている人間でも、お金がないと何もできないんですね。例えば、お金がないから自分で本棚を作ろうと思っても、道具や材料を買いに行かないといけない。道具を手に入れても、今度は電ノコを使おうとすると、隣の人が苦情を言うし、広い場所もないから釘もろくに打てない(笑)。東京は自由なところだと勘違いしがちだけど、これほど行動が制約されてしまう場所はないんです。それを異常だと知らない人たちが集まっている異常な所なんですよ。だから、子育てなんかをするにしても最低の場所でしたね。

岡山県加賀郡吉備中央町にある吉田牧場。 岡山県加賀郡吉備中央町にある吉田牧場。

Q.私たちはパン作りの職人として、発酵の状態を見たり、味を確かめたりするために、なるべく五感を鍛えていかないとと思っていて、それはおそらくチーズ作りでも同じだと思うんですね。例えば、吉田牧場さんで放牧している牛は100パーセント自力で出産するそうですが、動物には当たり前にあるそういう感覚や運動神経というのが、人間は鈍ってしまっているような気がします。僕らは東京で35年間暮らすなかでそういう危機感を覚えて、それはこちらに移ってきたいまも持ち続けているのかもしれません。

吉田:原発事故があって、本当は何が一番大事だったのかということを、みんなが少しずつ気づいてきているとは思います。人間は、食べ物を食べて、子どもを育てて、生きている。でもそれが、ある日突然ダメになるということもあるし、失ったものが二度と手に入れられなくなることもあるということに、やっと気づき始めたんじゃないかなと。

Q.そうですね。私の友達でも離婚して母子で岡山に移住してきた人がいます。岡山には移住してきた人たちが多いですよね。

吉田:着の身着のままで地方に行ったところで、そこで生活できないということはないですからね。過疎地というのは、孤独な一人暮らしの老人が多いというイメージがあるけど、あれもウソですよ。一人で暮らしている人はたしかに多いけど、岡山市とかで働いている子供なんかが週一で世話をしに来ていることも多いから孤独ではないし、畑で楽しくやっているのに、とやかく言われる必要ないんですよ(笑)。

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もっと知りたい人は…

  • 渡邉格、麻里子 

    渡邉格、麻里子

    パン屋「タルマーリー」

    「パンを作れば作るほど、社会と環境が良くなっていく」経営が目標。自家製酵母のみを使用し、自然栽培素材と天然菌によるパンを製造。酒種、レーズン酵母、全粒粉酵母、サワー種という4種の酵母を使い分け、柔らかいパンからかたいパンまで、幅広い味と食感のパンを提供している。震災後、千葉県から、江戸時代の美しい町並みが残る岡山県勝山へ移転。古い町屋を改装したパン屋には、イートインカフェも併設されている。

  • 吉田全作 

    吉田全作

    酪農家
    吉田牧場

    1955年岡山県生まれ。'79年北海道大学農学部畜産学科卒業後、5年間のサラリーマン生活を経て、'84年に岡山県・吉備高原にて酪農業を開業。'88年、念願のチーズ作りを始める。土地に根ざし牛を放牧し、餌や牧草にこだわり、おいしい乳を搾り、家族のみで手作りチーズを生産し続ける。その誠実で妥協なき味わいには全国にファンが多い。