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梅沢和木

美術作家

泥犬

アニメーション作家
劇団イヌカレー

カンバセーションズにはインタビュアーとして2度目の登場となる現代美術作家の梅沢和木さん。その梅沢さんが今回インタビュー相手として選んだのは、『魔法少女まどか☆マギカ』における異空間設計をはじめ、『ニセコイ』『偽物語』『うさぎドロップ』など数々の作品に関わってきたアニメーション作家ユニット「劇団イヌカレー」の泥犬さん。メディアやアプローチこそ違えど、同じコラージュという手法を用いて独自の世界観を構築してきた泥犬さんに、アニメーションの世界にも精通する梅ラボさんが迫った貴重なインタビューをお届けします。

3. なぜ個人性が大切なのですか?

泥犬 

ピクサーのアニメーションは大好きですが、同じことをやって勝てるのかと。ひとつの対抗手段として、徹底して個人的であるということも必要だと思っています。

Q.商業アニメで面白いと感じるのは、多くの人が関わった結果出てきたものがひとつの作品になるところで、監督や脚本家が意識していないところに作品の新しい魅力が生まれることもありますよね。例えば、「まどマギ」にしても、新房(昭之)監督とキャラクターデザインの蒼樹うめさん、さらに劇団イヌカレーさんそれぞれの個性が混ざって化学変化が起きている。蒼樹うめさんと劇団イヌカレーさんの組み合わせによるギャップは、最初から確信的だった印象があります。

泥犬:自分自身に対しての言い訳にもしているのですが、作品内に部分的でも何か個人性へ通じることが見えるのは大切なんじゃないかと考えています。例えば、ピクサーのアニメーションは大好きなのですが、イヌカレーで同じことをやって勝てるのかと。そのひとつの対抗手段として、徹底して個人的であるということも必要だと思っています。とはいえ、商業アニメーションの場合は、表に名前が出ない非常に多くの人たちの労働法ギリギリの努力によって成り立っているという前提がありますし、それを考えると、手前勝手に個人性ということも簡単には言えない気もしますが。イヌカレーは皆さんの優しさで成り立っています。

Q.アニメーターというのは、表現者、技術者それぞれの側面がありますからね。でも、泥犬さんが仰っているのは、とてつもなく大きな存在に対抗できるものが、個人の強さであるということですよね。

泥犬:10人中8人に支持されるものではなく、3人くらいをターゲットにするような、ある意味カルト的なものを目指した方がむしろ良いのではないかということを、自分たちの映像の言い訳にはしています。単純に「お前がそう言うならどうしようもない」というような個人性があると思うんです。例えば、漫画などにしても、きっちり論理的につくられた作品がある一方で、『グラップラー刃牙』のように個人性が非常に強いものもある。「刃牙がそう言うならしかたない」と思わせるものがありますよね。

梅沢和木「テラストラクチャーオブクィアバイン」

Q.「まどマギ」は物語の重要な起点が震災を挟んで放映されたということもあり、社会性という観点からも注目された作品でしたが、普段の制作で社会性などを意識することはありますか?

泥犬:例えば、梅ラボさんのようなアーティストの方は、社会に向けてこうしたいという思いが少なからずあると思うのですが、劇団イヌカレーは社会性というものを目指したことはなく、非常に個人的な視点でつくっています。犬も個人の悩みや不安というところにしか興味がなかったので、その個人性を軸に、自分たちができる範囲で表現していこうという前提がまずありました。それが「まどか」のような非常に多くの人に観て頂くアニメ作品の一部として協力させてもらえたことは未だにどこか実感がないですし、不思議な感覚です。そもそも、現代社会で生活している人間がつくっている以上、必然的にある程度の社会性が入ってくると思いますし、自分たちとしては意識してそれを持たせようと思って取り組んでいるわけでありません。<続く>

インフォメーション

劇団イヌカレーによる漫画「ポメロメコ」が隔月刊『Nemuki+』にて連載中。6月には、劇団イヌカレー「イメージノート2」が別巻で同梱された『「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語」 PRODUCTION NOTE』が発売。
3月28日から4月20日までビリケンギャラリーで開催される『セーラー服コンプレックス 3』展に梅沢さんが新作を出品予定。また、5月10日から25日まで、森ビル内ROPPONGI HILLS A/D GALLERYにて、梅沢さんが所属するカオス*ラウンジが新作を発表予定。6月から7月末にかけては、ニューヨーク・Friedman Benda Galleryにて、『Duality of Existence – Post Fukushima』を開催予定。

もっと知りたい人は…

  • 梅沢和木 

    梅沢和木

    美術作家

    1985年生まれ。美術家。ネット上の画像を集め再構築し、アナログとデジタル、現実と虚構の境目を探る作品を制作し発表している。2013年に『LOVE展:アートにみる愛のかたち―シャガールから草間彌生、初音ミクまで』(森美術館)などの展示に参加。2013年に個展『エクストリームAR画像コア』(DIESEL ART GALLERY)を開催。CASHIおよびカオス*ラウンジに所属。beatmania IIDX tricoroSP段位皆伝(1467-5211)。

  • 泥犬 

    泥犬

    アニメーション作家
    劇団イヌカレー

    日本犬初のアニメーション作家(雑種)。『魔法少女まどか☆マギカ』の異空間設計や、TVアニメのオープニング、エンディング映像などを手がける他、イラスト等の仕事も行う。好きな鳩は土鳩。