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植原亮輔

アートディレクター

平松正顕

天文学者

今回、カンバセーションズで初めてインタビュアーを務めてくれる植原亮輔さんは、デザインスタジオ「キギ」の代表を務めるアートディレクター。グラフィック、プロダクト、空間など幅広い領域のデザインを手がけ、さらに作品集の出版や展覧会でのプライベート作品の発表なども精力的に行う日本屈指のクリエイターである植原さんがインタビューするのは、国立天文台で働く天文学者の平松正顕さんです。星の形成や電波天文学を専門とし、南米・チリにある電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」のプロジェクトにも関わる平松さんに、植原さんが聞きたいこととは?

5. 人類への貢献を意識しますか?

平松正顕 

研究テーマを考える上では、人類全体のことは考えません。ただ、ある程度の普遍性を持ち、他の人と共有できるものなら、自分が研究しても良いかなと。

Q.クリエイティブの世界では、同じようなアイデアがいくつかあった時に、それをいかにプレゼンテーションするかというところが勝負になってくることがあります。どんなつながりでどのように発信していくのかというような本質とは少し離れた要素がものを言うケースも多く、正直どうなんだろうと思うこともあります。天文学の世界にも、こういうことはあったりしますか?

平松:それは大いにあります。研究者の場合は、成果を論文で発表するわけですが、そこで研究者が明らかにしたことは、また別の研究者の論文に引用されていきます。例えば、似たような結果をほぼ同時に発表したとしても、ひとつの論文ばかりが引用され、もう一方が忘れ去られてしまうということがあるんですね。これは、研究の中身とは別の話で、「私はこういうことを明らかにした」ということを同業者に宣伝してまわったり、研究会で大々的に伝えるかどうかなんです。アメリカやヨーロッパの研究の数が断然多い中、日本の研究グループが先に見つけた結果がしっかり宣伝できなかったことで、後発の欧米の研究チームの成果と受け取られてしまうということは、これまでに何度もありました。

Q.日本人は宣伝が上手じゃないですからね。ところで、そもそも平松さんが星の成り立ちに興味を持つようになった理由は何だったのですか?

平松:決定打があったわけではないのですが、自分のルーツを探るということに興味があり、考古学なども好きだったんです。それなら宇宙の始まりを研究すればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、それはちょっと遠すぎて、自分の中でルーツとして上手くつながらなかったんです。でも、地球や太陽がどのようにできたかということであれば、ギリギリ自分のルーツとつながる気がしました。生まれたばかりの星を観察することで、星が生まれるプロセスを理解し、そこから太陽や地球の成り立ちを解明したいということが、自分のモチベーションになっています。

Q.そうした個人的な動機から研究を始める人も多そうな気がしますが、宇宙の謎を解明することは、全人類のためでもありますよね。天文学者として、個人の動機と人類への貢献というバランスについてはどう考えていますか?

平松:研究テーマを考える上では、人類全体のことは考えません。ただ、講演会などで、なぜ自分がこれに興味を持っているのかということを話すと、「私もそれを知りたい」という人がそれなりにいるんです。それによって、たとえ個人の興味から始まったものだとしても、ある程度の普遍性を持ち、他の人と共有することができるんだということが確認できたので、それなら自分が研究しても良いかなという気になっています。でも、アインシュタインなどは、他の人に理解されなくても、これこそが本質に迫るものだと信じて、相対性理論の研究を続けたわけです。必ずしも他の人に興味を持ってもらえなければ、個人の研究が進められないということではないですが、一方で天文学の世界には税金が使われているので、一定の理解を得ることも大切です。例えば、日本はアルマ望遠鏡に年間で20億円程度を使っているのですが、これは日本人一人が年間20円を払っているという計算になります。そういう意味で天文学者は、チロルチョコ1個分の価値があると思ってもらえるような成果をアルマ望遠鏡で出さないといけないと思っています。<インタビュー終わり>

もっと知りたい人は…

  • 植原亮輔 

    植原亮輔

    アートディレクター

    2012年KIGIを設立。幅広くクリエイティブ活動を行う。主な仕事に、PASS THE BATONのVI、シアタープロダクツのグラフィックワークなど。D-BROSのフラワーベースは毎年新しいデザインを発表し、現在80種類以上のラインナップがある。また、滋賀県の伝統工芸の職人達と陶器、家具、布製品のブランド「KIKOF」を立ち上げたり、デザインワークの流れの中で作品制作をして展覧会をするなど、自在な発想と表現力であらゆるジャンルを横断しながら、クリエイションの新しいあり方を探し、生み出し続けている。東京ADCグランプリ、第11回亀倉雄策賞等受賞。東京・白金にキギのデザインしたプロダクトが並ぶショップ&ギャラリー「OUR FAVOURITE SHOP」をオープンさせた。

  • 平松正顕 

    平松正顕

    天文学者

    1980年岡山県生まれ。2008年、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 博士課程修了。博士(理学)。台湾中央研究院天文及天文物理研究所博士研究員を経て、2011年より国立天文台に勤務。電波望遠鏡を使って星の誕生プロセスを明らかにするための研究をしている他、アルマ望遠鏡をはじめとする電波天文学プロジェクトの広報担当として、講演や執筆活動を行っている。