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植原亮輔

アートディレクター

平松正顕

天文学者

今回、カンバセーションズで初めてインタビュアーを務めてくれる植原亮輔さんは、デザインスタジオ「キギ」の代表を務めるアートディレクター。グラフィック、プロダクト、空間など幅広い領域のデザインを手がけ、さらに作品集の出版や展覧会でのプライベート作品の発表なども精力的に行う日本屈指のクリエイターである植原さんがインタビューするのは、国立天文台で働く天文学者の平松正顕さんです。星の形成や電波天文学を専門とし、南米・チリにある電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」のプロジェクトにも関わる平松さんに、植原さんが聞きたいこととは?

3. スピリチュアルには向かわないんですか?

平松正顕 

研究者は自然の仕組みを知りたいので、主観を排除するという考えの上に立っています。何かを解明しようとした結果、自分がどう変化するかということは興味の範疇ではないんです。

Q.宇宙の謎を解き明かしていこうとする過程で、スピリチュアルな方向に進んでいくことはないのですか?

平松:天文学者の間ではあまりないと思います。そもそもスピリチュアルとは何かという定義が必要だと思いますが、それを一旦置いておくと、天文学者に限らず、研究者というのは自然がどうなっているのかという仕組みを知りたいので、基本的には主観を排除するという考えの上に立っています。だから、何かを解明しようとした結果、自分がどう変化するかということは、研究上の興味の範疇ではないんです。もちろん、天文学者が宇宙の原理を明らかにして、それが社会に浸透した結果、自分の世界観と結合させてスピリチュアルな考えを持つ人は世の中にいると思いますし、それ自体を否定することはありませんが、天文学者がそうなることはまずないと思います。

Q.例えば、僕は太陽というのは、内側に向かう自分のパワーがあまりにも強くて、それが外側に漏れるように火が吹き出していると考えているんですね。それを自分たちの世界に置き換えると、自分自身がパワーで満たされていなければ、誰かにサービスしたり、愛を与えるということはできないんじゃないと。そういう意味で、太陽系の惑星に愛を与えている太陽は「生きている」と思うし、その恵みをもらって呼吸している地球もまた、生きていると思ってしまうんです。

平松:昔から世界各地に太陽信仰というものがあり、それはまさに太陽の恵みや愛をもらって生きているという人間の認識が現れたものだと思います。もちろん、天文学者も惑星のことを生まれる、死ぬと表現することはありますが、そこに精神的な意味合いはなく、あくまでも理解を促すための手段として、星を擬人化しているんですね。物事のメカニズムを考える研究者からすると、太陽の火が吹き出すのは、水素の核融合反応が起き、太陽の表面に磁力線が生えているからということになってしまいます。そういう物事の考え方をするから、あまりスピリチュアルな方には行かないんです。

アルマ望遠鏡の観測画像より。ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T.A. Rector (University of Alaska Anchorage). Visible-light image: ESO アルマ望遠鏡の観測画像より。 ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), S. Takano et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope and A. van der Hoeven アルマ望遠鏡の観測画像より。 ESO/ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/H. Arce. Acknowledgements: Bo Reipurth

Q.そうクールに言われてしまうと…(笑)。

平松:誤解を恐れずに言えば、研究者というのは世の中が「どのように」できているかということについては答えることができます。でも、「なぜ」そうなっているのかということになると話は別です。例えば、すべてのものに質量がある理由は、「ヒッグス粒子」が存在するからだということを解明した研究者は、ノーベル賞に受賞しました。ただ、なぜヒッグス粒子があるのかということはまだ明らかになっていません。研究者は、そうした根本的な「なぜ?」には答えられない場合があって、単にこの世の中がそういう物理法則になっているという理解しかしていません。どのように私たちが生まれてきたかということは、地球や太陽などのプロセスを調べていくことで答えが見つかりますが、なぜ私がここにいるのかというのは、哲学的なテーマだと言えます。これは私の個人的な意見ですが、研究者というのはどうやっても答えられなさそうな問いを立てても意味がなく、答えられるであろう問いを立て、観測やシミュレーションを通して新しい理論を発見するというのが基本的なスタンスなのだと思います。<続く>

もっと知りたい人は…

  • 植原亮輔 

    植原亮輔

    アートディレクター

    2012年KIGIを設立。幅広くクリエイティブ活動を行う。主な仕事に、PASS THE BATONのVI、シアタープロダクツのグラフィックワークなど。D-BROSのフラワーベースは毎年新しいデザインを発表し、現在80種類以上のラインナップがある。また、滋賀県の伝統工芸の職人達と陶器、家具、布製品のブランド「KIKOF」を立ち上げたり、デザインワークの流れの中で作品制作をして展覧会をするなど、自在な発想と表現力であらゆるジャンルを横断しながら、クリエイションの新しいあり方を探し、生み出し続けている。東京ADCグランプリ、第11回亀倉雄策賞等受賞。東京・白金にキギのデザインしたプロダクトが並ぶショップ&ギャラリー「OUR FAVOURITE SHOP」をオープンさせた。

  • 平松正顕 

    平松正顕

    天文学者

    1980年岡山県生まれ。2008年、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 博士課程修了。博士(理学)。台湾中央研究院天文及天文物理研究所博士研究員を経て、2011年より国立天文台に勤務。電波望遠鏡を使って星の誕生プロセスを明らかにするための研究をしている他、アルマ望遠鏡をはじめとする電波天文学プロジェクトの広報担当として、講演や執筆活動を行っている。