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植原亮輔

アートディレクター

平松正顕

天文学者

今回、カンバセーションズで初めてインタビュアーを務めてくれる植原亮輔さんは、デザインスタジオ「キギ」の代表を務めるアートディレクター。グラフィック、プロダクト、空間など幅広い領域のデザインを手がけ、さらに作品集の出版や展覧会でのプライベート作品の発表なども精力的に行う日本屈指のクリエイターである植原さんがインタビューするのは、国立天文台で働く天文学者の平松正顕さんです。星の形成や電波天文学を専門とし、南米・チリにある電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」のプロジェクトにも関わる平松さんに、植原さんが聞きたいこととは?

2. 学者とクリエイターに共通点はありますか?

平松正顕 

一定の条件をクリアした上で、いかに想像を膨らませられるかという部分は、共通しているように感じます。

Q.天文学者というのは、果てしない夢を追いかけるような仕事ですよね。直近の目的やゴールはあっても、死ぬまでに解明できないことも多いでしょうし、次世代につないでいく仕事である天文学者は、ある意味主体が自分にないとも言えるのかなと。一方で、クリエイターというのは主体が自分にあり、しかも結論をすぐに出さないといけないので、そういった点では天文学者と対極にあると感じています。ただ、まずイメージや勘が先行して、作業を繰り返して答えを生み出していくという点は共通しているような気もします。学者である平松さんの目には、クリエイターという存在はどのように映っていますか?

平松:植原さんの作品を色々見させて頂きましたが、非常に自由な発想でつくられていて、研究者もそうじゃないといけないと思っています。クライアントの要望など一定の条件をクリアした上で、いかに想像を膨らませられるかという部分は、研究者の仕事にも共通するように感じます。天文学者は果てしないお仕事だと仰って頂きましたが、ゴールにたどり着けるかどうかは別として、すべての答えは宇宙にあると考えることもできます。一方でクリエイティブというのは、ある意味答えがない世界で、むしろそちらの方が果てしないんじゃないかとも感じます。

植原亮輔「集合と拡散」

Q.僕は、宇宙について考えれば考えるほど、抽象的な概念や精神的なところに向かっていくところがあるんです。キギという会社名にもつながるのですが、僕はクリエイティブというものを一本の木のような構造で捉えているのですが、ここには「集合と拡散」というテーマがあり、それにもとづいた作品などもつくっています。「集合と拡散」という構造はクリエイティブだけに当てはまることではなく、ビッグバンなどの宇宙の成り立ちや惑星の一生にも共通するんじゃないかと。宇宙の法則というのは、生命の営みや人生から、料理や会議まで、あらゆるものに通じるんじゃないかという気がしているんです。

平松:たしかに、散らばったものが集まってひとつになり、また拡散していくというのは、惑星の成り立ちなどにも言えることです。それが何回も行われた結果、我々がいる地球ができ、生命が誕生しました。宇宙全体のことは私もよくわからない部分がありますが、宇宙は拡散を続けていて、その中にあるものは重力によって集まり、星になるというのが基本的な考え方です。宇宙以外のあらゆるものにも類似性があるという話はとても面白いですね。

Q.こういう話を天文学者同士ですることはありますか?

平松:星の一生についてはよく話しますが、人間社会と類似性があるということを話すことはありません。そう言われてみると発見があるし、こういう話は自分の研究を一般の方に説明する時のたとえ話になるので、面白いなと思います。

平松さんがプロデュースで関わった「ALMA MUSIC BOX」は、アルマ望遠鏡が捉えた、寿命を迎えようとしている星「ちょうこくしつ座R星」の電波データをもとに制作されたアート作品。70枚のオルゴール盤から生まれた70種類の「死にゆく星のメロディ」を元に、国内外のミュージシャンが楽曲を制作した。 撮影:木奥恵三 写真提供:金沢21世紀美術館 平松さんがプロデュースで関わった「ALMA MUSIC BOX」は、アルマ望遠鏡が捉えた、寿命を迎えようとしている星「ちょうこくしつ座R星」の電波データをもとに制作されたアート作品。70枚のオルゴール盤から生まれた70種類の「死にゆく星のメロディ」を元に、国内外のミュージシャンが楽曲を制作した。 撮影:木奥恵三 写真提供:金沢21世紀美術館

Q.最近はアートなどの世界で、天体データなどを利用した作品などをつくる作家もいますが、そういう表現に興味はありますか?

平松:あります。これらは研究の中身を直接的に進展させるものではないかもしれませんが、ある意味では、自分たちの研究結果が社会の中に果実として生み落とされたものととらえることもでき、それを見るのは面白いですね。<続く>

もっと知りたい人は…

  • 植原亮輔 

    植原亮輔

    アートディレクター

    2012年KIGIを設立。幅広くクリエイティブ活動を行う。主な仕事に、PASS THE BATONのVI、シアタープロダクツのグラフィックワークなど。D-BROSのフラワーベースは毎年新しいデザインを発表し、現在80種類以上のラインナップがある。また、滋賀県の伝統工芸の職人達と陶器、家具、布製品のブランド「KIKOF」を立ち上げたり、デザインワークの流れの中で作品制作をして展覧会をするなど、自在な発想と表現力であらゆるジャンルを横断しながら、クリエイションの新しいあり方を探し、生み出し続けている。東京ADCグランプリ、第11回亀倉雄策賞等受賞。東京・白金にキギのデザインしたプロダクトが並ぶショップ&ギャラリー「OUR FAVOURITE SHOP」をオープンさせた。

  • 平松正顕 

    平松正顕

    天文学者

    1980年岡山県生まれ。2008年、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 博士課程修了。博士(理学)。台湾中央研究院天文及天文物理研究所博士研究員を経て、2011年より国立天文台に勤務。電波望遠鏡を使って星の誕生プロセスを明らかにするための研究をしている他、アルマ望遠鏡をはじめとする電波天文学プロジェクトの広報担当として、講演や執筆活動を行っている。