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太刀川英輔

NOSIGNER主宰
デザイナー

逢坂 恵理子

横浜美術館 館長

QONVERSATIONS TRIP YOKOHAMAの公開取材イベントの会場となったNOSIGNERは、太刀川英輔さんが主宰するデザインオフィス。ここ横浜に昨年事務所を移転した太刀川さんがインタビュアーとなる最後のセッションでは、横浜美術館で館長を務める逢坂恵理子さんにお越し頂きました。多様化する時代において、「形を作る」だけがデザインの領域ではなくなりつつあるいま、「文脈を作る」キュレーターという仕事に長年携わり、横浜トリエンナーレをはじめ、クリエイティビティと街を紐付ける活動も展開してきた逢坂さんのお話から、これからのデザインのヒントを探ります。

4. 誰でもアーティストになれますか?

逢坂 恵理子 

本物のアーティストというのは簡単にはなれない。でも、日常とアートが分断されているわけではないということを捉えることができると凄く変わるだろうし、そういう時代が来つつあるように思います。

Q.例えば印象派など、大きな流れが生まれて、その表現をマーケットが強要していたような時代というのが過去にはあったかもしれません。でも、現代は表現の中に多様性というものが凄くある時代で、あらゆる表現が許容され得る分、それぞれが大きなマーケットになりにくいという状況がありますよね。

逢坂:ボーダーレス時代と言われているように本当に色々な境界線がなくなってきていますが、「横浜トリエンナーレ」のようなフェスティバルは、美術に限らず色んなジャンルを橋渡しできる機会になると思うし、その役割を少しずつ果たしつつあるように感じています。そのなかで、デザインや建築などのクリエイティブな仕事に対して、私たちがどういうアプローチをする必要があるのかを考えることはあります。

NOSIGNER「The Moon」(2011) NOSINGER「Mozilla Factory Space」(2013)  Photo: HATTA

Q.「OUR MAGIC HOUR」ではないですが、アーティストの専門性から発信するものではなく、誰しもの中にある共感覚みたいなものに訴えていくということで勝負するという考え方もあるのかなと。そういう思考が強まりつつあるなかで、アーティストやデザイナーなどの「表現する人」と、それを「体験する人」の境界もどんどんなくなっていくように感じています。

逢坂:とはいえ、やはり本物のアーティストには簡単にはなれないんですよね。ある時代に瞬間的に評価されることはあっても、クオリティを維持して、一流であり続けるということは非常に大変なことです。多くの方たちに、アーティストが持っている視点を想像し、日常に取り込んでもらいたいと思っていますが、キュレーターとしては、何がこの時代を語り、時代の質を提示できる表現なのかを厳しくチェックしていかないといけないなと思っています。

Q.よくサッカーのたとえを出すのですが、サッカーというのは誰もが少なからず一度はやったことがありますよね。でも、そこからプロサッカー選手になるということは凄く大変なことで、それは少なからずアーティストやデザイナーというものにも当てはまると思っています。要は、最初の垣根の部分の話ですよね。誰もが絵を描いたことはあるけど、自分がアーティストだと考える人はそんなにいない。でも、図画工作が好きだった子供が将来デザイナーになるということが、サッカー選手になりたいと思うくらいの感覚で思えたら、デザインのレベルは全体的に凄く上がると思うんです。そういう競争がもっと過激になった方が面白いしフェアだと思うし、垣根が低くなることでより広い文化圏から発酵するかのようにクリエイティブなことが出てくるんじゃないかと想像するとワクワクします。裾野の広げ方とトップクオリティの上げ方の両方が大事ということですよね。

逢坂:そうですね。トップクオリティを支えるのは結局一人ひとりですよね。美術館は敷居が高いとか、知識がないから行けないと思っている人はたくさんいますが、一人ひとりの生活の中でカーテンの色や食器をどうするかと考えることも実は美術と直接つながっていると思うんです。私は小さい頃から民芸が好きで、日常で使われるザルも竹のものしか使いたくないというこだわりがあったのですが、そうした日常性と、美術館にあるアートが分断されているわけではないことをみんなが捉えたら凄く変わるだろうし、そういう時代が来つつあるように思います。<インタビュー終わり>

インフォメーション

2013年12月7日~2014年2月11日まで、横浜美術館で「生誕140年記念 下村観山展」が開催予定。(休館日:木曜、2013年12月29日~2014年1月3日)

もっと知りたい人は…

  • 太刀川英輔 

    太刀川英輔

    NOSIGNER主宰
    デザイナー

    慶應義塾大学理工学部隈研吾研究室にて、デザインを通した地域再生と建築とプロダクトデザインの研究に携わり、在学中の2006年に「見えない物をつくる職業」という意味を持つデザインファームNOSIGNERを創業。社会に機能するデザインの創出(デザインの機能化)と、デザイン発想を体系化し普及させること(デザインの構造化)を目標として活動している。 平面/立体/空間を横断するデザインを得意とし、新領域の商品開発やコンセプトの設計、ブランディングを数多く手掛け、数多くの国際賞を受賞している。経 済活動としてのデザインのみならず、科学技術、教育、地場産業、新興国支援など、既存のデザイン領域を拡大する活動を続けている。災害時に役立つデザインを共有する「OLIVE PROJECT」代表。IMPACT JAPAN fellow。University of Saint Jpseph (マカオ) 客員教授。

  • 逢坂 恵理子 

    逢坂 恵理子

    横浜美術館 館長

    東京都生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業 専攻芸術学。国際交流基金、ICA名古屋を経て、1994年より水戸芸術館現代美術センター主任学芸員、1997年より2006年まで同センター芸術監督。2007年より2009年1月まで森美術館 アーティスティック・ディレクター。2009年4月より横浜美術館館長に就任。また、1999年第3回アジア・パシフィック・トリエンナーレで日本部門コーキュレーター、2001年第49回ヴェニス・ビエンナーレで日本館コミッショナー、ヨコハマトリエ ンナーレ2011総合ディレクター、横浜トリエンナーレ組織委員会委員長を務めるなど、多くの現代美術国際展を手がける。