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太刀川英輔

NOSIGNER主宰
デザイナー

逢坂 恵理子

横浜美術館 館長

QONVERSATIONS TRIP YOKOHAMAの公開取材イベントの会場となったNOSIGNERは、太刀川英輔さんが主宰するデザインオフィス。ここ横浜に昨年事務所を移転した太刀川さんがインタビュアーとなる最後のセッションでは、横浜美術館で館長を務める逢坂恵理子さんにお越し頂きました。多様化する時代において、「形を作る」だけがデザインの領域ではなくなりつつあるいま、「文脈を作る」キュレーターという仕事に長年携わり、横浜トリエンナーレをはじめ、クリエイティビティと街を紐付ける活動も展開してきた逢坂さんのお話から、これからのデザインのヒントを探ります。

3. アートと街はどう結びつきますか?

逢坂 恵理子 

横浜の歴史、精神、風土は「横浜トリエンナーレ」の文脈に一致しているし、様々なことを発信していく上で非常にポテンシャルがある街だなと。

Q.話に出た瀬戸内や越後妻有のような場所ではなく、大都市でトリエンナーレを行うという点で横浜は先駆的だったと思います。逢坂さんが「横浜トリエンナーレ」に関わるにあたり、横浜の街とクリエイティビティを紐付けていくということにはどんな意義を感じていましたか?

逢坂:2011年に横浜美術館を主会場として開催した第4回では、総合ディレクターとして展覧会の企画全体を見る立場にあったのですが、まずなぜ横浜市がこうした現代美術の大きなフェスティバルをするのかということを考えました。横浜は、鎖国を経て日本が開国した際に開港した150年の歴史しかない街です。でも、日本の近代化とともに一気に発展した横浜では、海外からの文化や経済、政治システムが流れ込み、人々の交流も盛んに行われました。そのなかで新しいものを受け入れていく土壌が育まれた横浜は、新しい表現を紹介していく大規模な展覧会にふさわしい場所なんですね。横浜の歴史、精神、風土は「横浜トリエンナーレ」の文脈に一致しているし、様々なことを発信していく上で非常にポテンシャルがある街だなと。

Q.それは僕も横浜に引っ越してきてから強く感じています。世界の窓口になっていた横浜がクリエイティブハブとなり、ここから世界につながっていくというのは凄く素敵ですよね。ただ、それが実現するためには何かしらの事件のようなものが起こらないといけないのかなと。クリエイティブのハブになる得る場所で、世界からお客さんが来るようなイベントも行われているなかで、これらがどう結びついて何が起きるのか見てみたいんです。そこでは、多くの人にとってアートやデザインというものを自分事にさせる設計が必要だと思うんですが、前回の「横浜トリエンナーレで」はどんなことを考えていましたか?

逢坂:前回は東日本大震災があった2011年の8月に開催されたことなどもあり、色々な意味で開催にこぎつけるまでが大変な状況でした。「OUR MAGIC HOUR」というのがトリエンナーレのテーマだったのですが、まさにマジックのようになんとか間に合い、オープンすることができました。このテーマには、すべてが便利になった情報化/コンピューター化社会において、理性や知識だけでは計り知ることができないもの、掴み取ることができないものが実は世の中にたくさんあるのではないかというメッセージが込められていました。私たちが直面している日常生活とは切り離されたところにある不思議なものへ、通常とは異なる視点からアプローチしていく展覧会だったんです。

Ugo RONDINONE「moonrise. east.」(2005)   Courtesy the artist and Galerie Eva Presenhuber,Zürich, ©the artist, Photo by KIOKU Keizo, Photo courtesy of Organizing Committee for Yokohama Triennale

Q.それもひとつの文脈化と言えるかもしれないですね。みんながみんなアート好きではないけれど、シャボン玉というものを見れば老若男女問わず不思議に感じるし、虹などもそうだと思いますが、何かよくわからないマジカルなものというのは世界中で愛されていますよね。日頃の固定概念から外れたものがパンと現れることで琴線に触れる瞬間というのがあって、その時にもっとそれと関係したいと思うことがあるのだと思います。リテラシーや前提の知識をキャンセルしてでも伝わるものをどうすれば設計できるかということは、僕も常に考えているところなんです。

逢坂:例えば、「OUR MAGIC HOUR」という言葉を虹のアーチのようにしたウーゴ・ロンディノーネというアーティストの作品があったのですが、虹は普通晴れた昼間の空でしか見られないですよね。この作品は夜になると光るのですが、夜に見られる虹というのは一体何なんだろうと。結局私たちが見ているものは視覚によって受け止められているけれど、世の中にはそれだけでは受け止め切れないものもたくさん存在しているということを示唆する作品なのですが、みなさんがアプローチしやすく、どこかマジック的で不思議な要素を含んでいる作品が前回のトリエンナーレには多かったように思います。

インフォメーション

2013年12月7日~2014年2月11日まで、横浜美術館で「生誕140年記念 下村観山展」が開催予定。(休館日:木曜、2013年12月29日~2014年1月3日)

もっと知りたい人は…

  • 太刀川英輔 

    太刀川英輔

    NOSIGNER主宰
    デザイナー

    慶應義塾大学理工学部隈研吾研究室にて、デザインを通した地域再生と建築とプロダクトデザインの研究に携わり、在学中の2006年に「見えない物をつくる職業」という意味を持つデザインファームNOSIGNERを創業。社会に機能するデザインの創出(デザインの機能化)と、デザイン発想を体系化し普及させること(デザインの構造化)を目標として活動している。 平面/立体/空間を横断するデザインを得意とし、新領域の商品開発やコンセプトの設計、ブランディングを数多く手掛け、数多くの国際賞を受賞している。経 済活動としてのデザインのみならず、科学技術、教育、地場産業、新興国支援など、既存のデザイン領域を拡大する活動を続けている。災害時に役立つデザインを共有する「OLIVE PROJECT」代表。IMPACT JAPAN fellow。University of Saint Jpseph (マカオ) 客員教授。

  • 逢坂 恵理子 

    逢坂 恵理子

    横浜美術館 館長

    東京都生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業 専攻芸術学。国際交流基金、ICA名古屋を経て、1994年より水戸芸術館現代美術センター主任学芸員、1997年より2006年まで同センター芸術監督。2007年より2009年1月まで森美術館 アーティスティック・ディレクター。2009年4月より横浜美術館館長に就任。また、1999年第3回アジア・パシフィック・トリエンナーレで日本部門コーキュレーター、2001年第49回ヴェニス・ビエンナーレで日本館コミッショナー、ヨコハマトリエ ンナーレ2011総合ディレクター、横浜トリエンナーレ組織委員会委員長を務めるなど、多くの現代美術国際展を手がける。