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太刀川英輔

NOSIGNER主宰
デザイナー

逢坂 恵理子

横浜美術館 館長

QONVERSATIONS TRIP YOKOHAMAの公開取材イベントの会場となったNOSIGNERは、太刀川英輔さんが主宰するデザインオフィス。ここ横浜に昨年事務所を移転した太刀川さんがインタビュアーとなる最後のセッションでは、横浜美術館で館長を務める逢坂恵理子さんにお越し頂きました。多様化する時代において、「形を作る」だけがデザインの領域ではなくなりつつあるいま、「文脈を作る」キュレーターという仕事に長年携わり、横浜トリエンナーレをはじめ、クリエイティビティと街を紐付ける活動も展開してきた逢坂さんのお話から、これからのデザインのヒントを探ります。

2. どうすれば関係性が生まれますか?

逢坂 恵理子 

ホワイトキューブと言われるギャラリーの中から、作品が外に出ていく流れは、美術ファンではない人たちが先入観なくアートに目を向けるきっかけになった気がします。

Q.デザインには、ユーザー視点でコンセプトを考えていく「ユーザーオリエンテッド」という考え方があります。デザイナーやメーカーの思いや技術主導で生まれていくものがある一方で、それを使う人とどう関係していくかという部分に重きをおいて設計していくやり方もあるんです。デザイナーの中でもそのどちらに寄っているのかというのは人それぞれで、自分が作る形や作品性を押し出して成功している人ももちろんいますが、もう少し相手に寄り添う形で作っていくタイプもいます。そういう意味で言うとキュレーターという仕事は、ユーザー寄りの立ち位置ということになるのですか?

逢坂:色々なタイプがあると思います。キュレーター主導で自分の好みを全面的に押し出すこともありますし、一歩引いて全体のバランスを取りながら回路をいっぱい開いていく場合もあります。私自身としては、ひとつのやり方にこだわらずに色々試したいと思います。

日埜直彦「家プロジェクト1/セントラルビル」(2004/カフェ・イン・水戸)  撮影:逢坂恵里子 アトリエ・ワン「家プロジェクト3/植物の家」(2004/カフェ・イン・水戸)  撮影:逢坂恵里子 NOSIGNER「OCICA」(2011)  Photo: LYIE NITTA

Q.全然美術に無縁だった人たちを関係付けるということは、世界中の美術館が試みていると思いますが、逢坂さんの経験の中で成功例などはありますか?

逢坂:過去に「カフェ・イン・水戸」という展覧会を水戸芸術館で2度ほど開催したんですね。CAFEは「Communicable Action For Everybody」の頭文字から取ったもので、誰とでもコミュニケーションができるアクションという意味です。行動ということにポイントを置いて作家や作品を選定し、美術館の外に作品を設置したり、コミュニケーションをキーワードにして色んな方と作品を作ったりしたのですが、いままで美術館に来てくれたことがなかった人たちの関心を引き出すことができました。「こういう人たちにこういうものを提示しても反応してくれないんじゃないか」と思いながら出したものに意外な反応がありました。40歳以下の社長さんたちが集まる青年会議所のメンバーは、最も忙しく、美術館に来る機会がない人たちでしたが、一緒に展覧会を作ることができ、ネットワークが非常に広がりました。

Q.ビジネスの世界で頑張っている未来のある人たちがアートや伝統工芸品を愛して、自分の成長ステージに見合った素敵なものを手に入れるということが、文化の盛り上がりにもつながると思うんですね。でも、実際にはそういう人たちはアートや伝統工芸品を買っていない。おそらくそれは、その人たちが常日頃求めている形に翻訳されていなかったり、そもそも関係付いていなかったりするからではないかと。

逢坂:この「カフェ・イン・水戸」は、公立美術館が外に出て行く大きなきっかけになったんですね。この流れをより大きく展開したものが、「越後妻有アートトリエンナーレ」や「瀬戸内国際芸術祭」のような自然の中に作品を設置していく国際展ですよね。ホワイトキューブと言われるギャラリーの中で展示をするのではなく、場所探しから始まり、土地の歴史や文化を意識しながら作品を作っていくということが新鮮だったし、美術ファンではない人たちが先入観なくアートに目を向けるきっかけになった気がします。

インフォメーション

2013年12月7日~2014年2月11日まで、横浜美術館で「生誕140年記念 下村観山展」が開催予定。(休館日:木曜、2013年12月29日~2014年1月3日)

もっと知りたい人は…

  • 太刀川英輔 

    太刀川英輔

    NOSIGNER主宰
    デザイナー

    慶應義塾大学理工学部隈研吾研究室にて、デザインを通した地域再生と建築とプロダクトデザインの研究に携わり、在学中の2006年に「見えない物をつくる職業」という意味を持つデザインファームNOSIGNERを創業。社会に機能するデザインの創出(デザインの機能化)と、デザイン発想を体系化し普及させること(デザインの構造化)を目標として活動している。 平面/立体/空間を横断するデザインを得意とし、新領域の商品開発やコンセプトの設計、ブランディングを数多く手掛け、数多くの国際賞を受賞している。経 済活動としてのデザインのみならず、科学技術、教育、地場産業、新興国支援など、既存のデザイン領域を拡大する活動を続けている。災害時に役立つデザインを共有する「OLIVE PROJECT」代表。IMPACT JAPAN fellow。University of Saint Jpseph (マカオ) 客員教授。

  • 逢坂 恵理子 

    逢坂 恵理子

    横浜美術館 館長

    東京都生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業 専攻芸術学。国際交流基金、ICA名古屋を経て、1994年より水戸芸術館現代美術センター主任学芸員、1997年より2006年まで同センター芸術監督。2007年より2009年1月まで森美術館 アーティスティック・ディレクター。2009年4月より横浜美術館館長に就任。また、1999年第3回アジア・パシフィック・トリエンナーレで日本部門コーキュレーター、2001年第49回ヴェニス・ビエンナーレで日本館コミッショナー、ヨコハマトリエ ンナーレ2011総合ディレクター、横浜トリエンナーレ組織委員会委員長を務めるなど、多くの現代美術国際展を手がける。