インタビューアーにスポットを当てる新感覚インタビューサイト

RSS

Qonversations Twitter

QONVERSATIONS > TRIP > yokohama

大川哲郎

大川印刷 代表

椎野秀聰

椎野正兵衛商店 代表

インタビュアーを担当する大川哲郎さんは、1881年に横浜で創業した大川印刷の代表取締役社長。NPO、NGOと協働しながら、市民参加のワ ークショップでファシリテーターを数多く務めるなど、地元のための活動にも積極的な大川さんがインタビューするのは、椎野正兵衛商店の椎野秀聰さんです。世界的音楽機材メーカー・ベスタクスを創業するなど数々の事業を成功させ、現在は、江戸末期開港当時から絹ビジネスを展開し、世界的な評価を獲得した曽祖父・椎野正兵衛氏の意思を引き継ぎ、絹製品ブランド「S.SHOBEY」の製造販売を行っている椎野さんが、横浜の街やもの作りの真髄について語ってくれました。

3. 売れるものを作ってはいけないのですか?

椎野秀聰 

みんなが売れるものを作るということばかり考えるようになったけど、それによって見失ってしまっているものがあるんじゃないかと。売れるものというのは、いつか必ず売れなくなる。

Q.椎野正兵衛商店では、本物のシルク製品を作るために蚕からこだわっているんですよね。

椎野:いま日本で作ることができる一番良い糸は何かということなどを調べて、日本の蚕の中でも最高の蚕を大事に育てるというところに行き着きました。日本の糸のレベルはだいぶ下がってしまっているんだけど、養蚕には長い歴史があって、そこで培われてきたものは大切にしないと消えてしまうんです。やっぱり人間の知恵には連続性がないとダメだし、もの作りの根源というのはそこにある。ところがいまはなんでも使い捨ての時代でしょ。私はそれがイヤなんです。人が昔に作ったものを見ていると捨てられなくなるし、そこから何か聞こえてこないか、見えてこないか、昔の人の生活が垣間見られないかというところからものを作ってきているんです。

S.SHOBEYのシルク製品。 S.SHOBEYのシルク製品。

Q.現在「S.SHOBEY」の製品は、販売会やインターネットなど一部の場所だけで買えるという状況になっていますよね。

椎野:店を全部辞めてしまいましたからね。あえて売らないというスタンスが面白いでしょ(笑)。でも、ずっとそういう仕事がしたいと思っていたし、そうすると人は探してくれるんですよね。明治の中盤くらいからエコノミズムという考え方が出てきて、みんながあまりにも売れるものを作るということばかり考えるようになったけど、それによって見失ってしまっているものがあるんじゃないかと。売れるものを一生懸命作ろうと思ってもダメなんですよ。売れるものというのは、いつか必ず売れなくなる。ファッションだって、なくなるからこそファッションなわけでしょう。それをなくならないと思って作っているから不思議なんですよね。

Q.冗談のように聞こえる人もいるかもしれないですが、そこに椎野さんのもの作りの精神というのがあるのだと思います。

椎野:最近、私みたいなジジイのところに若いイギリス人やフランス人が「一緒に何かをやりたい」と言って来るんですよ。何をやりたいかと聞いてみると、残るものを作りたいと言うんです。なんでも使い捨ての時代になって失われてしまったものを取り戻そうとしている若者も世界にはいるんだなと。スイスの時計メーカーが1万年後まで動いている時計というものを作っていて、そんなもの売れないとは思うけど、1万年後に人類がいなくなっていたとしても、その時計だけは動いているわけですよね。生きているうちは誰も評価してくれないかもしれないけど、儲けてやろうとか余計な野心を持たずに一生懸命作っているものは、必ず残るんですよ。

もっと知りたい人は…

  • 大川哲郎 

    大川哲郎

    大川印刷 代表

    東海大学法学部法律学科卒。1993年株式会社大川印刷入社。2005年代表取締役社長に就任。2001年社会起業家との出会いから、「印刷を通じて社会を変える」視点に気付き、2004年「本業を通じて社会的課題解決に取り組む『ソーシャルプリンティングカンパニー』」と言うビジョンを掲げる。現在、食物アレルギーや宗教上の理由で食材を自由に選べない人たち、一般の人たちにも分かりやすい、ピクトグラム(絵文字)の活用を推進していく「食材ピクトグラム」の他、複数の社会的課題解決プロジェクトを各種NPOと協働し推進。NPO、NGOとの協働の経験から市民参加のワ ークショップなどでファシリテーターを数多く務める。

  • 椎野秀聰 

    椎野秀聰

    椎野正兵衛商店 代表

    1947年生まれ。横浜育ち。ベスタクス株式会社社主。日本楽器製造(現ヤマハ)等を経て、77年、椎野楽器設計事務所を設立。日本初のギタープロショップ、ESP、PACOを創業し、アコースティックギター、エレクトリックギター、ベースギターの製造・販売に携わる。事業を発展させたVestaxでは、ギターを始めとする楽器のほか、アンプ、エフェクター、音響機器、録音機器、DJミキサー、ターンテーブルなどでミュージックシーンをリードする。その後、曽祖父である椎野正兵衛の足跡を調べ、その事業を再興しようと「椎野正兵衛商店」を設立、絹製品ブランド「S.SHOBEY」の製造販売に乗り出す。