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筧 康明

慶應義塾大学SFC 環境情報学部 准教授

笠井史人

医師
昭和大学医学部リハビリテーション科 准教授

QONVERSATIONS TRIP YOKOHAMAで最初にインタビュアーを務めてくれるのは、慶應義塾大学SFC 環境情報学部の准教授としてインタラクティブメディア/デザインを研究する傍ら、メディアアートユニット「plaplax」のメンバーとしても活動する筧 康明さん。そんな筧さんがインタビュー相手として指名したのは、横浜市青葉区にある昭和大学藤が丘リハビリテーション病院で医師を務める笠井史人さん。現在、リハビリテーションとテクノロジー/デザインという一見かけ離れた領域を結びつけるべく画策しているおふたりの対話をお届けします。

4. 未来のリハビリはどう変わりますか?

笠井史人 

これからどこに向かっていくべきかを考えながら、デザインやテクノロジーと融合することで、患者さんがより豊かな生活を取り戻せるようなリハビリテーションの道を切り開いていけたらいいなと。

Q.テクノロジーの進歩ということを考えると、例えば寝起きの状態でどこかに行けてしまうベッドを作ることは可能かもしれないけど、実際にそんなものがほしいのかという問題があると思うんですね。そういうものよりも、歩いて学校に行くことが楽しくなるとか、歩くことがもっと理解できるというところにテクノロジーを使うべきなんじゃないかと。自転車の補助輪のような存在としてテクノロジーがあって、最終的にはそれがなくても自転車が乗れるようになった方がいいし、そこに技術やデザインの力を注ぎ込みたい。いまお話し頂いた音楽療法の事例も、患者さんが何もしなくても奏でられる楽器を作ったとしても、それはその人の進化にはつながらないですよね。そうではなくて、ちょっとがんばらないといけない部分を持つ道具を作ってそれをどんどん渡していく、もしくは自分で作り変えることができる。そういうところに、インタラクティブメディアとリハビリテーションの接点ができるんじゃないかと思うんです。引いてはそれはリハビリだけではなく、これからのテクノロジーのあり方を見つめるための一つの指標になるのではないかと。

筧:リハビリテーションの世界では現在、テクノロジーをふんだんに取り入れる傾向があります。ロボティクスの技術は進歩していますし、それらをリハビリの場面で使うことは当然あり得る。ただ、日常生活の中にもっとテクノロジーが溶け込んだ状態で、機械にやらされている感がないようなものがあるといいなと漠然と思うんです。外から見ると全然気づかないような部分にテクノロジーが使われていたら凄く良いと思うし、大がかりなことをやりながら、それを感じさせないものというのを筧先生は得意とされている感じがして、凄く共感できるんです。

筧康明、苗村健、松下光範「Tablescape Plus」(2006年) 

Q.テクノロジーを見せることに主眼が置かれている場合はむき出しのまま見せますが、体験が主眼になっている時などはテクノロジーは後ろに回すようにしています。見せないといけないところ、伝えないといけないところのバランスというのは作る過程で意識していますね。

笠井:この50年でさまざまなテクノロジーが入ってきているなかで、それらをどう扱っていくのかというのはリハビリテーションにおいても今後取り組んでいかなくてはいけない課題だと思っています。我々がこれからどこに向かっていくべきかを考えながら、デザインやテクノロジーと融合することで、患者さんがより豊かな生活を取り戻せるようなリハビリテーションの道を切り開いていけたらいいなと。

Q.これから技術はさらに進んでいくでしょうし、そこで僕が見たいと思うのは、人を強烈にモチベートしてくれるようなテクノロジーのあり方です。3Dプリンターなどが出てきて、パーソナル・ファブリケーションが話題になっていますが、これからはリハビリテーションの分野でも、メーカーが作ったリハビリ機器を使うのではなく、自分たちの生活に合ったものをお医者さんと一緒に作り変えていくという時代が来るんじゃないかと思っています。いま僕もそのためのプロトタイプを大量に作り始めているんですが、リハビリの成果を照明や音楽などを伴って空間に配置していくことで人をモチベートできるようなものができたら、在宅でも日常的にリハビリテーションができる時代が近づくのではないかと考えています。

笠井:そうですね。リハビリのプログラムを立てる時に保険診療が制約になるという話をしましたが、どうしても病院でのリハビリというのは定型のものになってしまいます。一方で、在宅でも楽しく集中してたくさんのリハビリができるようなモチベーションが引き出せれば、患者さんが設定したゴールにより近づくことができるだろうし、良い結果が出てきそうです。そういう意味で、日常の生活の中にリハビリの成果をディスプレイスして楽しむという筧さんのコンセプトには僕自身驚かされたし、病院でする苦しく地道な積み重ねのリハビリだけではない、これからのリハビリのヒントがなるんじゃないかと思います。<インタビュー終わり>

もっと知りたい人は…

  • 筧 康明 

    筧 康明

    慶應義塾大学SFC 環境情報学部 准教授

    インタラクティブメディアデザイナー、研究者。慶應義塾大学環境情報学部准教授。博士(学際情報学)。人間の五感や物理素材の特性とデジタル情報を掛け合わせて、人と人、人とモノをつなぐインタラクティブメディアを開発。メディアアートユニット、プラプラックスを共同設立するなど、工学のみならずアートや商業分野を横断しながら、メディア技術を駆使した表現を開拓する。著書に、共著「触感をつくる «テクタイルという考え方»」(岩波書店 岩波科学ライブラリー)、「x-DESIGN —未来をプロトタイピングするために」(慶應義塾大学出版会)等。

  • 笠井史人 

    笠井史人

    医師
    昭和大学医学部リハビリテーション科 准教授

    医師、昭和大学医学部リハビリテーション科准教授。1965年生まれ。日本リハビリテーション医学会専門医。脳卒中のリハビリに音楽療法を取り入れる研究をしている。著書に「基礎から学ぶリハビリテーションと音楽療法」(音楽之友社)など。