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筧 康明

慶應義塾大学SFC 環境情報学部 准教授

笠井史人

医師
昭和大学医学部リハビリテーション科 准教授

QONVERSATIONS TRIP YOKOHAMAで最初にインタビュアーを務めてくれるのは、慶應義塾大学SFC 環境情報学部の准教授としてインタラクティブメディア/デザインを研究する傍ら、メディアアートユニット「plaplax」のメンバーとしても活動する筧 康明さん。そんな筧さんがインタビュー相手として指名したのは、横浜市青葉区にある昭和大学藤が丘リハビリテーション病院で医師を務める笠井史人さん。現在、リハビリテーションとテクノロジー/デザインという一見かけ離れた領域を結びつけるべく画策しているおふたりの対話をお届けします。

3. プログラムはどうやって作るのですか?

笠井史人 

どのくらい集中して、目的意識を持って取り組めるか、そこにどんなモチベーションを持てるのかということで結果が変わってくる。枠組みや制約があるなかでもプログラムの立て方次第で目標設定を引き上げることはできます。

Q.リハビリテーションのプロセスとして、まず対話が必要というお話でしたが、そこからどのようにプログラムを設計されていくのですか?

笠井:患者さんにとってどんな生活が適しているのかということを正確にキャッチできたとしても、それを実現するためのプログラムを考えていく際に、医療保険という制約がかかってくるんですね。医療保険制度の中でプログラムを組み込んでいくという作業が必要になるのですが、そのなかで妥協点というものが生まれてきます。こういうことを達成したいという明確な目標が患者さん側にあっても、決められた期間ではそれが難しい場合は、ゴールの設定を下げざるを得ないこともあるし、アプローチも変わってきます。この部分はどうしても我々が調整しないといけない難しい部分です。

筧康明、南澤孝太、仲谷正史、三原聡一郎「TECHTILE toolkit」(2012年)  山岡潤一、筧康明「dePENd」(2013年)

Q.設定したゴールに対してできることをどんどん組み合わせてプログラムを作っていく感じなんですね。

笠井:そうですね。リハビリテーションというのは勉強に似ている気がしていて、やればやるほど効果は出てくると思っています。ただ、勉強というのは集中せずに漫然と長時間やっていても効果は出にくいですよね。どのくらい集中して、目的意識を持って取り組めるか、そこにどんなモチベーションを持てるのかということで結果が変わってくる。枠組みや制約があるなかでもプログラムの立て方次第で目標設定を引き上げることはできます。良い先生に巡り合うことで成績が伸びるのと同じで、お薬や注射などで治療をするわけではない我々の仕事では、いかに一人ひとりのスキルを上げていくかが大切なんです。

Q.具体的なプログラムのひとつとして、笠井先生は音楽療法というものを取り入れていますが、これについてもご紹介頂けますか?

笠井:6年程前に、二十歳の男性が脳出血で入院をしたのですが、その方はプロミュージシャン志望でした。残念ながらその患者さんは失語症になり、右の手足も動かなくなってしまい、元の通りの音楽を続けることは難しい状態になってしまいました。リハビリを一生懸命やって、もうすぐ退院というところまで歩けるようにはなったのですが、本当にやりたいことは達成できてなくて、うつ状態になっていたんですね。その時に、「ちょっとつらいかもしれないけど弾いてみたら」と言ってギターを渡してみたんです。最初は逆にそれが心の傷を深めてしまうことになるのではないかという心配もあったのですが、凄く喜んでくれて、動かない手で弾こうとしてくれたんです。そこから二人三脚で、その患者さんでも演奏ができるようなデバイスを色々作り、それなりに演奏できるようになりました。その方はそれで凄く元気になってくれて、気がついたら手がより動くようになっていて、とても驚きました。いまでも自分でギターを弾いていますし、コンピュータで音楽制作を楽しんでいるようです。その時に音楽の力を改めて実感し、身体が麻痺した患者さんにギターを弾いてもらうという治療法を始めたんです。

もっと知りたい人は…

  • 筧 康明 

    筧 康明

    慶應義塾大学SFC 環境情報学部 准教授

    インタラクティブメディアデザイナー、研究者。慶應義塾大学環境情報学部准教授。博士(学際情報学)。人間の五感や物理素材の特性とデジタル情報を掛け合わせて、人と人、人とモノをつなぐインタラクティブメディアを開発。メディアアートユニット、プラプラックスを共同設立するなど、工学のみならずアートや商業分野を横断しながら、メディア技術を駆使した表現を開拓する。著書に、共著「触感をつくる «テクタイルという考え方»」(岩波書店 岩波科学ライブラリー)、「x-DESIGN —未来をプロトタイピングするために」(慶應義塾大学出版会)等。

  • 笠井史人 

    笠井史人

    医師
    昭和大学医学部リハビリテーション科 准教授

    医師、昭和大学医学部リハビリテーション科准教授。1965年生まれ。日本リハビリテーション医学会専門医。脳卒中のリハビリに音楽療法を取り入れる研究をしている。著書に「基礎から学ぶリハビリテーションと音楽療法」(音楽之友社)など。