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筧 康明

慶應義塾大学SFC 環境情報学部 准教授

笠井史人

医師
昭和大学医学部リハビリテーション科 准教授

QONVERSATIONS TRIP YOKOHAMAで最初にインタビュアーを務めてくれるのは、慶應義塾大学SFC 環境情報学部の准教授としてインタラクティブメディア/デザインを研究する傍ら、メディアアートユニット「plaplax」のメンバーとしても活動する筧 康明さん。そんな筧さんがインタビュー相手として指名したのは、横浜市青葉区にある昭和大学藤が丘リハビリテーション病院で医師を務める笠井史人さん。現在、リハビリテーションとテクノロジー/デザインという一見かけ離れた領域を結びつけるべく画策しているおふたりの対話をお届けします。

2. リハビリとデザインに共通点はありますか?

笠井史人 

リハビリテーションは、患者さんの肉声から、趣味、好きな食べ物、生活空間など多くの情報をキャッチしてからでないと臨床ができません。そういう意味では、デザインと通じるところがあるのかもしれません。

Q.リハビリテーションというのが、適した状態になることを目的にした活動だとして、どうなればそのリハビリが成功したのか、どんなところにゴールを設定するのかということに興味があります。僕自身インタラクションをデザインする時に、どうなればゴールなのかということを考えるんですね。例えば、肩が以前よりも10度動かなくなってしまった人が、その10度を取り戻すことがリハビリテーションなのかというと、もしかしたらそうではないのかもしれない。その辺りはどう捉えていらっしゃいますか?

笠井:医学にいま求められているのは、エビデンスなんですね。医療を施したことによってどんな成果が得られたのかということを、科学的な証拠をもって示す必要がある。そういう意味では、いま筧先生がおっしゃったように、肩の可動域が10度回復したというのはわかりやすいエビデンスになることは確かです。ただ、リハビリというのは生活と密着していて、肩が動いたり指が少し開くようになったことで、生活にどんな豊かさがもたらされたのかということは数値では表せない。私としては、その患者さんの生活がどれだけ豊かになったか、これまで楽しめていたものが再び楽しめるようになったかというところを最終ゴールとして考えたいと思っています。だから、動かなかった指がこれだけ動くようになったということももちろん大切なのですが、その指を使ってこんな編み物ができるようになったということを見せてもらうことに満足を得ているところはあります。

Q.インターフェースデザインの世界にも似たところがあり、特に大学で研究をする場合は、画面内のここにボタンを置くと操作が何秒早くなったというようなことが大事にされます。でも、秒数が早くなること以上に、その作業がいかに自分の身になったのかとか、作業が楽しくなったのかという質的な部分に僕らは貢献でき得るんじゃないかと思っていて、それはリハビリテーションと共通する問題なんじゃないかなと。先ほどリハビリテーションは日本語にできないという話がありましたが、例えば、リハビリテーションツールというものを考えた時に、その余白を埋めるようなものがデザインやテクノロジーによって作り得るんじゃないかと思っています。

笠井:そうですね。また、リハビリテーションというのは、あなたにとってこれが適する状態ですよとこちらから押し付けても意味がないんですね。あくまでも患者さん自身にとって適するものは何か、ニーズはどこにあるのかということを引き出していく必要があるし、そこで間違ったゴールを設定してはいけないんですね。

plaplax「hanahanahana」(2009年)

Q.それはデザインの世界にも通じるところですね。デザインをする時も相手が何を好きで、どんな所に住んでいて、何がその人にとっての問題なのかをヒアリングするなどして問題をあぶり出すところから始まります。その上で必要なものを投入するというのがデザインです。

笠井:リハビリテーションは、レントゲンや血液検査をして調べるようなものではなく、患者さんの肉声から、趣味、好きな食べ物、生活空間などをはじめ、多くの情報をキャッチしてからでないと臨床ができません。そういう意味では医療の中でも特殊な分野ですし、おっしゃる通りデザインと通じるところがあるのかもしれません。

もっと知りたい人は…

  • 筧 康明 

    筧 康明

    慶應義塾大学SFC 環境情報学部 准教授

    インタラクティブメディアデザイナー、研究者。慶應義塾大学環境情報学部准教授。博士(学際情報学)。人間の五感や物理素材の特性とデジタル情報を掛け合わせて、人と人、人とモノをつなぐインタラクティブメディアを開発。メディアアートユニット、プラプラックスを共同設立するなど、工学のみならずアートや商業分野を横断しながら、メディア技術を駆使した表現を開拓する。著書に、共著「触感をつくる «テクタイルという考え方»」(岩波書店 岩波科学ライブラリー)、「x-DESIGN —未来をプロトタイピングするために」(慶應義塾大学出版会)等。

  • 笠井史人 

    笠井史人

    医師
    昭和大学医学部リハビリテーション科 准教授

    医師、昭和大学医学部リハビリテーション科准教授。1965年生まれ。日本リハビリテーション医学会専門医。脳卒中のリハビリに音楽療法を取り入れる研究をしている。著書に「基礎から学ぶリハビリテーションと音楽療法」(音楽之友社)など。