僕が作りたいと思っているのは、まちに住んでいる人たちが楽しく過ごすためのインフラなんです。自分の最大のテーマというのは、いかに自分の周りをニヤニヤできる状況に変えていけるかということなんです。
Q.岡さんが進めている「まちぐるみ旅館」計画はどのくらい進んでいるのですか?
岡:「まちぐるみ旅館」というのは仏生山のまち全体を旅館に見立てて、まちに点在する飲食店、浴場、物販店、客室などのお店を旅館というネットワークでつないでいくプロジェクトなのですが、去年1つ目の客室を始めたばかりなんです。まずは10年くらいが一区切りだと思っていて、今年が2年目なので進行状況としてはまだ1割程度という感覚です。
Q.今後は具体的にどうしていきたいと考えているのですか?
岡:僕がこうしたいと考えられるのは半分くらいで、結局はお店を作るだけではなく、それをやる人がそこにいるか、もしくは来てくれるかということが大事なんですね。例えば、僕としては、次はおいしいごはんのお店がほしいと思っていますが、実際にやってくれる人が出てくるかどうかでそれは変わってきます。この「まちぐるみ旅館」もそうなのですが、僕が作りたいと思っているのは、まちに住んでいる人たちが楽しく過ごすためのインフラなんです。僕らは高松に拠点があって、この周辺で今後も生きていくと思うんですが、そのなかで自分の最大のテーマというのは、いかに自分の周りをニヤニヤできる状況に変えていけるかということなんです。
Q.例えば、いま流行りの「ソーシャル」や「コミュニティ」という言葉がありますが、仏生山というまちを、そういう観点から他の地域と比較・分析することはありますか? 例えば、今年開催されている瀬戸内国際芸術祭からどんなものが派生して、そこから何が起こっていくのかとか、僕はそういう動きに注目をしているし、期待しているところもあります。高松にしても、街の中で大なり小なりいろんな動きが起こってきていますし、これからもしばらく高松、香川を拠点としていく上で、5年〜10年くらいのスパンで注目していることなども個人的にはあります。岡さんはそういう面でいま注目しているものなどはありますか?
岡:藤井さんは仕事柄そういう情報を仕入れながら自分で発信されているので、凄く色んなことに着目されていると思うのですが、僕は全然そういうことは興味がないんですよ。他の地域の動きなどを分析的な視点で見たりはしますが、その視点を仏生山温泉のことに置き換えるということはないし、比べる必要はないかなと思っています。
Q.そうなんですね。やっぱりこうして話してみると、僕と岡さんは全然違うんですね(笑)。最後の質問ですが、仏生山温泉というのは岡さんのお父さんなくしては存在しなかったものですよね。そのなかで独立して高松に帰ってきた岡さんは、実際に仏生山温泉の運営をするようになって、考え方などで変わった部分はありますか?
岡:僕がものづくりに興味があるのは、価値や魅力というものをいかに掛け合わせて、1+1=3にできるかということなんですね。それは建築であろうと、温泉であろうと、宴会場であろうと基本的には変わらないんです。ただ、実際に温泉を運営するようになって、誰かが喜んでくれる姿を見ることが凄く楽しくなりました。もちろん、誰かが喜んでくれるものをつくるというのは大切なことで、それは理解していたのですが、温泉を運営するようになって、そこに実感が伴うようになりました。お客さんがここに来た時の顔と、温泉に入って帰っていく時の顔が全然違うんです。これは凄く素敵なことだなと思います。<インタビュー終わり>