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藤井佳之

「な夕書」店主

岡 昇平

建築家
「仏生山温泉」番台

高松でのインタビュアーを務めてくれるのは、高松市街で完全予約制の古書店「な夕書」を営む藤井佳之さん。その藤井さんがインタビュー相手として挙げてくれたのは、高松・仏生山温泉の番台を務め、さらに仏生山の街全体をひとつの旅館に見立てる「まちぐるみ旅館」計画なども進めている建築家の岡昇平さんです。それぞれ東京の出版社、建築事務所で働いた経験を活かし、その後高松に自らの拠点を持ちながら、独自の活動を続けているおふたりが、岡さん設計の仏生山温泉の素敵な休憩室で語り合ってくれました。

3. 目立つことは嫌いですか?

岡 昇平 

周りからどういう風に見られるかというところはあまり気にしないんですよ。もともとメディアなどに出たいという欲求もないんですが、それはここが温泉だからというのが大きいと思います。

Q.岡さんは建築の仕事もされていますが、ベースはいまも建築の方にあるのですか?

岡:ベースというのはものづくりにあるんですよ。もともとものをつくることが好きで、たまたまちゃんと学んだのが建築だったんですね。でも、建築のスキルというのは表面的な技術で、ものづくりにおけるほんの一部でしかないんです。少しやり方を変えるだけで色んなものができていくわけで、建築に限らず色々なものをつくるということをやっているんです。だから、僕が取り組んでいる「まちぐるみ旅館」や「ことでんおんせん」なども全部ものづくりの一貫なんです。

仏生山温泉 仏生山温泉

Q. 例えば仏生山温泉を設計するというのは「ものづくり」だと思うんですけど、温泉ができた後というのはどちらかというと「場づくり」に近いような気がするし、実際にメディアなどの取り上げ方もそういうものが多いですよね。例えば、僕がやっている「な夕書」も紹介をされる時も「人と人が出会う場所」というような場づくり的な観点で捉えられることがあるんです。でも、自分の中では「な夕書」はあくまでも本を売るところであって、場づくりをしているつもりはないし、そこにはあまり興味がないんです。仏生山温泉の場合は、温泉で本が読める「場」や、人がリラックスできる「場」をつくるという側面も強いですよね。

岡:そもそも建築というのはつくってしまった後には場所ができるので、広い意味では場づくりだと思うんです。でも、藤井さんがいま話されているのは、「交流のための交流の場」ということですよね。それには僕も違和感があるし、そういう場所にはろくなものがないと思うんです。まずは本屋として機能していることが大事で、その結果交流の場所にもなっているのであれば、それは健康的ですよね。僕自身交流の場をつくることを目的にはしていないし、たまたまそうなっていればいいなという感覚ですね。

Q.少し話が変わりますが、僕は古本屋「な夕書」の店主をやっていて、「な夕書」の売上がその月の自分の収入のどのくらいの割合を占めるかは月によって変わるんですが、どんな場合でも「古本屋の店主」であることを前提にしているところがあるんですね。僕みたいなフリーで企画や編集、ライティングをしている人間が、これから10年後20年後とずっとフリーで「何でもできますよ」というスタンスで通用するほど甘くはないと思うんです。だから、「古本屋の店主だけど、こういう記事も書いたりします」というアプローチで働いているんです。岡さんは、仏生山温泉の番台であり、建築の仕事もされていますが、そういう部分を意識することはありますか?

岡:周りからどういう風に見られるかというところはあまり気にしないんですよ。もともとメディアなどに出たいという欲求もないし、仏生山温泉ではそういうプロモーションは一切していないんですが、それはここが温泉だからというのが大きいと思います。例えば、僕が「な夕書」をやっていたとしたらメディアに出てプロモーションをしていたかもしれない。要はその場所が社会的にどうありたいかということなんですね。僕は、温泉というのは、100年くらい続いた方がいいと思っているんです。だから流行らせる必要はないし、年に1%程度ずつ成長していればいい。それが温泉の社会的役割だと思っているし、その場所がどういう状況の時に最も素敵で楽しく最適化された状態になれるのか、そこを目指していきたいというのがありますね。もちろん、パーソナルな性格の部分もあるとは思いますが。

藤井さんが営む予約制書店「な夕書」。 藤井さんが営む予約制書店「な夕書」。

Q.それも大きいですよね。僕は基本目立つのが好きですから(笑)。一見目立つのが嫌いなように振る舞いつつ、「ブルータス」とかで紹介されたりしたら、「いやぁ断れなくて」と渋い顔をしながら、ニヤニヤ掲載誌を立ち読みしているようなタイプなんです(笑)。

岡:でもそれは大切なことですよね。メディアに出ること自体は、社会に必要とされている状態のひとつのあり方だと思うので、喜ばしいことですよね。

もっと知りたい人は…

  • 藤井佳之 

    藤井佳之

    「な夕書」店主

    1976年生まれ。大阪市出身。横浜国立大学を卒業した後、ドキュメンタリー番組の制作に携わる。角川書店の新規事業に参画した後、29歳で中学高校と過ごした高松へ。完全予約制の古書店「なタ書」を開店させる。お店の予約がない日には故郷での錦の飾り方を考えている。お店の予約は→070-5013-7020まで。(繋がらないこと多し)

  • 岡 昇平 

    岡 昇平

    建築家
    「仏生山温泉」番台

    1973年香川県高松市生まれ。徳島大学工学部卒業、日本大学大学院芸術学研究科修了。みかんぐみを経て高松に戻る。建築の設計を本業としながら、家業の温泉を運営。まち全体を旅館に見立てる「仏生山まちぐるみ旅館」を10年かがりで進めつつ、「仏生山まちいち」「ことでんおんせん」「50m書店」「おんせんマーケット」などを始める。