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原田祐馬

デザイナー

小川さやか

文化人類学者

大阪を拠点に活動するデザイナーの原田祐馬さん。グラフィックデザインをはじめ、空間デザイン、展覧会/イベント企画などジャンルを越えてさまざまなプロジェクトを展開している彼が、今回インタビュー相手として指名してくれたのは、タンザニアの路上で古着を売り歩き、タンザニア人の人間関係や処世術を調査した「都市を生きぬくための狡知」で、サントリー学芸賞を受賞した小川さやかさん。現在、「瀬戸内国際芸術祭 2013」の小豆島・醤の郷+坂手港エリアで、町の人たちとともにプロジェクトを進めている原田さんが、「関係」をテーマにさまざまなお話を聞きました。

3. 文化人類学はどんな学問ですか?

小川さやか 

この世界にたしかに存在しているアナザーワールドから、私たちの経済や社会、文化において「これ以外にはない」と思っている考え方ややり方を相対化することで、ひとつではない多様な世界を考えることができる面白い学問です。

Q.僕が教えている京都造形芸術大学のゼミでフィールドワークをすることがあるのですが、デザインを考える上でのフィールドワークはどうしてもその時限りになりがちで、ほとんどが記録にしかならないんです。でも、小川さんの場合は、実際にタンザニアの商人になって現地に何年も入り込んでいて、凄いエネルギーだなと(笑)。

小川:文化人類学は「参与観察」と言って、現地の人と一緒に暮らしてながら研究するという手法を看板に掲げているのですが、実際に現地の社会に影響を与えないようにするのはなかなか難しいなと感じます。要は、フィールドワーカーとして自分が何者になるかということなんですよね。

タンザニアのマチンガ(零細古着商人)と小川さん。(2005年撮影)

Q.文化人類学の研究者は普通「透明人間」になるけど、自分はそうなれていなくて、現地の人に影響を与えてしまっていると書かれていましたよね。研究という意味ではよくないことなのかもしれないですが、こういう場所に入っていくと、何かしらの干渉や関係性は絶対生まれてしまいますよね。むしろ商人になって入り込んでいたからこそ、本を読んでいても街の様子が凄く伝わってきたし、登場人物の隣にいるような気分になりました。

小川:タンザニアでは、297人のライフヒストリーをそれぞれ5,6時間程かけて聞いたんですね。毎晩バーに飲みに行って話を聞いていたので、すっかりザル化してしまいました(笑)。相手が飲むお酒に自分も合わせるので、タンザニアの蒸留酒などを飲む相手の場合は大変でしたね。だいたい12時くらいまで飲んで、翌日は朝6時から行商をして、仕事が終わったらまた飲みに行くという生活だったので、一人になれる時間はなかったですね(笑)。

Q.いまでもタンザニアの人たちとは交流があるのですか?

小川:そうですね。いまはアフリカに氾濫している中国の非正規品の流通と消費について研究をしていて、中国に非正規品を仕入れに行くアフリカ商人を調査しているので、フィールドは中国にシフトしましたが、タンザニアで調査していた頃の仲の良い友人たちとはまだ付き合いがあります。私が初めてタンザニアに入った時は22歳だったんですが、いまでは当時の調査助手には3人の子どもがいます。現地の人たちの変化は大きくて、すでに都市から村に帰った人などもいますが、彼らの今後も調査もしていきたいなと思っています。

タンザニアの古着の定期市(2004年撮影)

Q.やはり、最終的に人と人の関係に帰結していくんですね。そもそも小川さんにとって、文化人類学とはどんなものなんですか?

小川::アナザーワールドから考えるという感じですかね。例えば、「若者の不安定就労問題」など比較的はっきりした課題や問いを設定して、それに対する考察や解決策を提示していく隣接分野の研究に比べて、民族誌の中に問いを埋め込み、必ずしも明確な答えを書かない文化人類学は回りくどい学問です。でも、この世界にたしかに存在しているアナザーワールドから、私たちの経済や社会、文化において「これ以外にはない」と思っている考え方ややり方を相対化することで、ひとつではない多様な世界を考えることができる面白い学問なんです。例えば、一夫多妻制という言葉を聞くとたいていの女の子は「え~嫌だ」と言うんです。でも、それは「単婚」しかあり得ないと信じる何らかの価値から、一夫多妻制を評価しているだけかもしれない。家族の概念や実態は文化によって全然違うし、良い面も悪い面も何が問題となるかも違う。そこから「家族とはこういうものだ」「こうあるべきだ」という自分の考えを見つめ直すという方法だって、日本の家族が抱える様々な問題を考えるヒントになるし、私はそういうふうに身近な問題を考えるのが好きなんです。

インフォメーション

原田さんが、エディトリアルスタジオ「MUESUM」と共同企画している「瀬戸内国際芸術祭2013」小豆島・醤の郷+坂手港プロジェクト「観光から関係へ」 の夏会期が7月20日からスタート。また、原田さんが実行委員を務める「DESIGNEAST04」が9月14日〜16日まで名村造船所跡地で開催される。

もっと知りたい人は…

  • 原田祐馬 

    原田祐馬

    デザイナー

    1979年生まれ。UMA / design farm代表。2002年京都精華大学芸術学部デザイン学科建築専攻を卒業後、インターメディウム研究所(IMI)7期生として入学。2005年まで在籍。2005年より京都造形芸術大学非常勤講師。2007年、UMA/design farmを設立。アートディレクター/デザイナーとして、ブックデザイン・グラフィックデザイン・エキシビジョンデザインなどを手がける。2009年より「DESIGNEAST」ディレクター、2013年よりULTRA FACTORY/studio ZZZディレクターを務める。

  • 小川さやか 

    小川さやか

    文化人類学者

    1978年生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科を指導認定退学。博士(地域研究)。学術振興会特別研究員、国立民族学博物館機関研究員、同博物館助教を経て、立命館大学先端総合学術研究科准教授。主な著書『都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』(第33回サントリー学芸賞)。