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原田祐馬

デザイナー

小川さやか

文化人類学者

大阪を拠点に活動するデザイナーの原田祐馬さん。グラフィックデザインをはじめ、空間デザイン、展覧会/イベント企画などジャンルを越えてさまざまなプロジェクトを展開している彼が、今回インタビュー相手として指名してくれたのは、タンザニアの路上で古着を売り歩き、タンザニア人の人間関係や処世術を調査した「都市を生きぬくための狡知」で、サントリー学芸賞を受賞した小川さやかさん。現在、「瀬戸内国際芸術祭 2013」の小豆島・醤の郷+坂手港エリアで、町の人たちとともにプロジェクトを進めている原田さんが、「関係」をテーマにさまざまなお話を聞きました。

2. ストリートにもリテラシーは必要ですか?

小川さやか 

ストリートのリテラシーは規範というより、人びとが日々の関係のやりくりのなかで創り出しているやり方ではないかと思うんです。

Q.本の中で「ストリート・リテラシー」という言葉を引用されていましたが、この考え方も興味深かったです。例えば、日本の道路では緊急車両が止まる場所に「救急」などと書かれていますが、もしこの文字が消えかけていたとしても、町に住む人が道路に無断で文字を書き直すことは違法ですよね。でも、それを町の人たちがやることは、ゴミや枯れ葉が落ちていたら拾うとか、食べ物が余ったら皆で分けることと同じで、本来なら自分たちの町のことだから、当たり前のことなんじゃないかとも思うんです。

小川:例えば、路上商売は道路交通法などの法令に違反しているんですが、多くの住民の認識では必ずしも違法だと思っていなかったりするんです。政府は、事故を引き起こす原因になるからといって公設市場などに追いやろうとするのですが、路上商人は、その街のさまざまな職業の人たちと利害関係があるんですね。例えば、バスの運転手からすると、路上商人を追い払ってしまうと乗客が少なくなるから儲からなくなる。少し前に、東京で路上で売られているワンコイン弁当が問題になっていて、それは衛生上の観点に加え、店舗を構える周辺の弁当屋との関係も問題になっているという理由だったんです。

ムランゴ・ムモジャ古着市場の露店商(2004年撮影)

Q.そういえばうちの事務所のそばにも500円以下で買える弁当が売っていて、スタッフもよく食べています。でも、周りには他にもたくさん食事ができる場所はあるわけで、どこまでお互いの商売について考え、弁当を売っているかというと疑問です。

小川:その点、タンザニアの路上商人は自らのニッチを凄く考えています。路上商人というのはそもそも隙間産業で簡単に排除されてしまう存在なんですが、彼らは政府をあまり怖いと思っていないんです。むしろ、軒先で商売をさせてもらっている商店主を怒らせる方がよっぽど怖いんですね。タンザニアの路上商人は、商店主と消費者の媒介者となり、双方が利益を得られるような共生関係を作るということを、色んな相手とやっているんです。

Q.そういうストリート・リテラシーのようなものをどこまで取り戻せるか、再設定し直せるかということは、僕らがこれから生きていくためにもとても重要になってくるのかなという気がします。

小川:ストリートのリテラシーは規範というより、人びとが日々の関係のやりくりのなかで創り出しているやり方ではないかと思うんです。日本にはこのやりくりに代わる制度や規定がたくさんあって、それはそれで便利なんですが、逆にそれらに縛られている側面もあります。例えば、道に迷った時、インフォメーションセンターや交番など道を教えてもらえる場所を探したりしますよね。でも、アフリカの人たちなら「目の前に人がいるんだから聞けばいいじゃないか」と考える。人間関係にしても、まず「私たちはこういう関係だ」という規定があり、「だからお互いに助けあうべきだ」という話になるし、何か問題が生じた場合は、新しいルールや制度を作るという方向に進みがちだけれど、私は「○○という場や関係では○○すべきだ」という関係や振る舞いの条件やルールを考える代わりに、「いかに無条件・無根拠に人と関わったり、行動できるか」に関心があるんです。そこで大事になってくるのが、狡知、その場を切り抜ける生命力で、その場その場のやりくりを通じて生みだされる関係性や了解ですかね。

インフォメーション

原田さんが、エディトリアルスタジオ「MUESUM」と共同企画している「瀬戸内国際芸術祭2013」小豆島・醤の郷+坂手港プロジェクト「観光から関係へ」 の夏会期が7月20日からスタート。また、原田さんが実行委員を務める「DESIGNEAST04」が9月14日〜16日まで名村造船所跡地で開催される。

もっと知りたい人は…

  • 原田祐馬 

    原田祐馬

    デザイナー

    1979年生まれ。UMA / design farm代表。2002年京都精華大学芸術学部デザイン学科建築専攻を卒業後、インターメディウム研究所(IMI)7期生として入学。2005年まで在籍。2005年より京都造形芸術大学非常勤講師。2007年、UMA/design farmを設立。アートディレクター/デザイナーとして、ブックデザイン・グラフィックデザイン・エキシビジョンデザインなどを手がける。2009年より「DESIGNEAST」ディレクター、2013年よりULTRA FACTORY/studio ZZZディレクターを務める。

  • 小川さやか 

    小川さやか

    文化人類学者

    1978年生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科を指導認定退学。博士(地域研究)。学術振興会特別研究員、国立民族学博物館機関研究員、同博物館助教を経て、立命館大学先端総合学術研究科准教授。主な著書『都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』(第33回サントリー学芸賞)。