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伊藤直樹

クリエイティブ・ディレクター
PARTY

名和晃平

彫刻家
SANDWICHディレクター

京都造形芸術大学にて、情報デザイン学科の教授を務めるクリエイティブ・ディレクター・伊藤直樹さんが、同じく同大学で教鞭をとる名和晃平さんにインタビューしたQONVERSATIONS TRIP KYOTO Day4。東京とニューヨークに拠点を置くクリエイティブラボ「PARTY」の代表を務め、近年はアートの領域にも強い興味を示している伊藤さんが、2009年に京都伏見区に立ち上げた創作のためのプラットフォーム「SANDWICH」のディレクターであり、世界的に注目される彫刻家の名和さんに、京都で「育む」ことをテーマにインタビューしました。

4. 学生時代は何を育めばいいですか?

名和晃平 

人間の中にはクリエーションの化け物のようなものが潜んでいます。その存在に気づき、しっかり育てていくことで制作欲を膨らませていくことができれば、凄いことになるはずです。

Q.「見たこともない表皮をつくる」という名和さんの作品の核となる部分が築かれていったのはいつ頃なのですか?

名和:留学をしている時に、ヨーロッパの宗教芸術や現代美術を見て回ったのですが、その過程で自己表現というものに固執する考え方がなくなったんですね。表現というものが世界中で行われているなかで、いまという時代にどんなクリエーションが起こり得るのかを考えた時に、極端に言うと、わざわざ自分自身の内面を表現のテーマにしなくてもいいんじゃないかと思うようになりました。それよりも開かれた表現によって、いかに見る人との接続点や接続面を作品に持ち込めるかということを意識するようになりました。そこから、新しいマテリアル、テクスチャ、インターフェースを求めて、言葉やコンテクストを越えて感覚が接続されるというテーマを掘り下げていくことで、強い彫刻表現ができるようになるのではないかと考えるようになりました。そのコンセプトを実践していったのが大学院時代の2年間でした。

名和晃平「PixCell-Armor」(2014)   Photo : Nobutada OMOTE | SANDWICH 名和晃平「PixCell-Armor」(2014)   Photo : Nobutada OMOTE | SANDWICH

Q.名和さんは大学院まで出ていますが、大学教育というものは名和さんの活動や作品に対してどのような影響を与えたと感じていますか?

名和:大学を卒業する時には、色んな人から大学院には行かなくていいと言われたりしてかなり迷ったのですが、いま振り返ってみて、博士課程の3年間はやって良かったと思っています。当時、田中泯さんの舞台の手伝いなどもしていて、泯さんからも大学にいつまでいるんだ、社会に出て戦えなどと言われたのですが、僕は彫刻をやっていたので大学のようなスペースや機材を他で手に入れることは難しかったですし、3年間粘ってつくり続けたことで、自分の作品の理論や体系を構築していくことができました。また、博士課程の頃には積極的に作品発表もしていたのですが、そうした実践の中で学べたということが非常に大きかったと感じています。当時は、大阪のギャラリーで毎年個展をしていて、ギャラリーのディレクターと喧嘩するほど意見交換を続けながら作品をつくっていったのですが、そこには大学の先生が言うこととはまったく違うシビアな観点からの意見もたくさんありました。悔しくて寝れないようなこともしょっちゅうありましたが、当時の経験はとても重要だったと思います。その頃に学んだことがベースとなり、当時は技術的、予算的な理由でつくれなかったものを、この10年の間で少しずつ実現している感じです。

Q.名和さんの作品の理論や体系というのは、頭がおかしくなるくらい考え抜いた末に残ってきたものなのだと思います。最後に、京都に学びに来ている学生たちに向けて、何かメッセージを残して頂けますか?

名和:この大学には色々な先生が来ているし、外部からの刺激がたくさん入ってくると思いますが、その情報量に負けないようにすることが大切です。飽和状態のなかでお腹いっぱいになった気になって大学時代をやり過ごしてしまうのは、もったいないことです。自分自身がこの1年、1ヶ月で何を得るのかを明確に意識することが大事です。それは知識でも経験でもいいし、何かが身体に染みこんでくるような環境でもいいのですが、自分のハードルや価値基準を高く保てる環境や人とのつながりを発見できると良いと思います。また、人の中にはクリエーションの化け物のようなものが潜んでいて、それは時に獰猛で、何をしでかすかわからないようなエネルギーを持っています。その存在に気づき、しっかり栄養を与えて育てていくことで、食欲や性欲、睡眠欲に勝るほどの制作欲という、クリエーションに対する欲望を膨らませていくことができれば、もの凄いことになるはずです。周りのペースに合わせる必要はありません。自分が世界一になってやろうというくらいの野心を持ってがんばってほしいですね。そういう人がこの大学からゴロゴロ出てくるようになるといいなと思っています。<インタビュー終わり>

インフォメーション

8月2日から30日まで名和さんが参加するグループ展『Favorite Books』が大阪・ギャラリーノマルで開催予定。また、8月31日まで東京都現代美術館で開催されているグループ展『ミッション[宇宙x芸術]ーコスモロジーを超えて』にも名和さんの作品が出展されています。

もっと知りたい人は…

  • 伊藤直樹 

    伊藤直樹

    クリエイティブ・ディレクター
    PARTY

    静岡県生まれ。ADK、GT、ワイデン+ケネディトウキョウ代表を経て、2011年クリエイティブラボ「PARTY」を設立。チーフクリエイティブオフィサーを務める。京都造形芸術大学教授。これまでにナイキ、グーグル、ソニーなど企業のクリエイティブディレクションを手がける。「経験の記憶」をよりどころにした「身体性」や「体験」を伴うコミュニケーションのデザインは大きな話題を呼び、国際的にも高い評価を得ている。経産省「クールジャパン」(2011)クリエイティブディレクター。「クールジャパン官民有識者会議」メンバー(2011,2012)。

  • 名和晃平 

    名和晃平

    彫刻家
    SANDWICHディレクター

    1975年大阪府生まれ。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻修了。京都造形芸術大学准教授、2009年京都伏見区に立ち上げた創作のためのプラットフォーム「SANDWICH」ディレクター。2011年、東京都現代美術館で個展 「名和晃平ーシンセシス」開催。その後も2013年の瀬戸内国際芸術祭、あいちトリエンナーレなど、数々の国際展にてサイトスペシフィックな彫刻作品を発表する。同年、韓国チョナン市に大規模な屋外彫刻 “Manifold” を設置。ビーズ、プリズム、発泡ポリウレタン、シリコーンオイルなど様々な素材とテクノロジーを駆使し、彫刻の新たな可能性を拡げている。現在、京都を拠点に活動。