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船越雅代

レストラン「Kiln」シェフ
ディレクター

江上昌伸

ワインショップ「ethelvine」

京都・四条木屋町にあるレストラン「キルン」でシェフを務める船越雅代さんが、同じく京都でワインショップ「エーテルヴァイン」を営む江上昌伸さんににインタビューしたQONVERSATIONS TRIP KYOTO Day2。世界各地の一流レストランや船上レストランのシェフなどさまざまな経験を積み、2013年より京都に活動拠点を移した船越さんが、キルンに置かれているほぼすべてのワインをセレクトしているという「エーテルヴァイン」の江上さんに、現在の仕事をはじめるまでの経緯や、自然派ワインならではの魅力などについて聞きました。

2. ワインと日本酒の違いは何ですか?

江上昌伸 

ワインは世界で唯一外から何も加えずに完成できるお酒です。ウイスキーや焼酎などの蒸留酒には火が必要ですし、日本酒にしても、お米をそのまま放っておいてもお酒にはなりません。

Q.キルンでは1年半くらい前から、自分たちで育てた酵母でパンをつくっているんですね。はじめた頃は酵母が死にそうになったりと色々大変だったんですが、最近は京都の酵母としてしっかり育ち、とても元気な状態なんですよ。ワインと同じように、自然の力に委ねていく面白さというのを感じています。

江上:僕はもともと発酵食品にとても興味があるんです。「好物は?」と聞かれたら、「発酵食品全般」と答えています(笑)。もちろん美味しい食材をそのまま頂いても感動するのですが、例えば、日本のなれずしの文化というのは世界に誇れるものだと思っていて、珠玉の一本の鮒寿司なんかに出会うと、日本人として誇らしい気持ちになります。また、パンにしても、ワインにしても、いまでは発酵のプロセスというものが科学的にある程度解明されていますが、数百年前までは科学的なアプローチではなく、経験に頼ってつくっていたわけですよね。昔の人たちは、発酵を神々の領域のものだと信じていましたし、いまだにお酒というのは神様に捧げる風習がありますよね。

Q.日本の場合は、それが日本酒ということになると思うんですが、なぜ江上さんは日本酒ではなく、ワインだったのですか?

江上:明確な理由はわかりませんが、なぜか当初はワインの方が身体に合う確率が高かっただけだと思います。また、ワインというのは、唯一外から何も加えずに完成できるお酒なんです。ウイスキーや焼酎などの蒸留酒には火が必要ですし、ワインと同じ醸造酒である日本酒にしても、お米をそのまま放っておいてもお酒にはなりません。どこかから水を持って来なくてはいけない。そのお米に内包されている水以外の水をです。このことから、ワインで使われる「テロワール」という言葉を、そのまま日本酒に当てはめるのはなかなか難しいと思うんですね。なんとなくそういったところにロマンを感じたんでしょうか。ただ、遅ればせながら、ここ数年で大好きな日本酒に出会えました。本当にびっくりしました。今は僕にとってワイン>日本酒ではないです。この造り手のお酒は、今や最も好きな醸造酒の中のひとつです。

ethelvine ethelvine ethelvine

Q.日本産のワインについてはどのように見ているのですか?

江上:例えば、僕はサッカー日本代表を強く応援しますが、2014年現在世界屈指のチームとは思いません。応援と評価とは違うものですが、世界一のチームになってほしいと願っていますし、不可能ではないとも思います。ただ、ワインの場合はもっと複雑です。多くの方々が日本のワインに関わり、とてつもない努力をされています。僕は、偉そうに言えるほど多くの日本ワインを経験しているわけではありませんが、いくつかの生産者を除いて、魂が揺さぶられるようなワインにはまだ出会えていません。日本のワインの中にも、技術的に凄いと思うワインはたくさんあります。ですが、生産者の努力だけがそのワインの評価の基準になるかと言うと、それでは事足りないと思います。土壌や気候というものもありますし、ワインを生み出す人だけがいくら優れた結果を出せても、やはりスケールに欠ける気がします。日本には素晴らしい栽培家、醸造家がたくさんいらっしゃいます。ですが、土壌、気候が醸造用葡萄に適した場所が多く存在する国だとは、まだ思えません。ワインは無理やり造られるべきものではなくて、ある程度自然と出来上がるものだと思います。先に話した数件の生産者は、最上の努力と、その土地に出会えた幸運によって、それらのワインを生み出すための「補助」ができているのだと思います。彼らならどこのどの葡萄でも良いワインができるというわけではないはずです。ですので、最上の応援とともに、自分なりの本質のみの評価、判断をし続けたいです。本当に偉そうにすみません。

もっと知りたい人は…

  • 船越雅代 

    船越雅代

    レストラン「Kiln」シェフ
    ディレクター

    幼少より台所を自らの実験室とし、家族や友人をうんざりさせ、時に喜ばせる。ニューヨーク・Pratt Instituteで彫刻を専攻。Institute of Culinary Education卒業後、料理の世界へ。ニューヨークの「Blue Hill」「Union Pacific」「WD50」で勤めた後、オーストラリアのサーフブランドの専属シェフとして、太平洋中をめぐる。ホテル「Tandjung Sari」のエグゼクティブシェフなどを経て、現在は京都「Kiln」のシェフ/ディレクター。元々の畑であるアートと食を融合させた活動の一貫として、「Edible Landscape」を世界各地で実施している。

  • 江上昌伸 

    江上昌伸

    ワインショップ「ethelvine」

    大学卒業後、輸入酒類、食材の商社へ入社。そこでワインと出会い、その後京都のワインショップで経験を積んだ後、2006年、エーテルヴァインを立ち上げる。2012年には岡崎に新店舗を構える。