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寺井元一

株式会社まちづクリエイティブ代表

和多利浩一

キュレーター
ワタリウム美術館

今回カンバセーションズに初登場するのは、アーティスト、クリエイターらを交えながら、千葉・松戸で”クリエイティブな自治区”の創造を目指す「MAD Cityプロジェクト」を推し進める株式会社まちづクリエイティブ代表の寺井元一さん。そんな寺井さんがインタビュー相手として指名したのは、現代美術を中心に扱う東京・渋谷の私立美術館「ワタリウム美術館」でキュレーターを務める和多利浩一さん。国内外で開催された数々の展覧会やアートプロジェクトなどにも関わりながら、青山キラー通り商店会会長、原宿地区商店会連合会会長、原宿神宮前まちづくり協議会代表幹事など、まちづくりにも関わってきた経験を持つ和多利さんに寺井さんが迫ります。

5. アーティストとはどう付き合っていますか?

和多利浩一 

単純に本当に面白い人と仕事がしたいんです。この人とやると決めたらこちらも覚悟をするし、アーティストにもプレッシャーをかけ、とびきりの作品を作ってもらいます(笑)。

Q.僕は、アートのジャンルに関係なく、ただ面白いと感じる部分で接点を持ちたい感覚があるんですね。でも、アートの世界に関われば関わるほど世界が狭まっていくような感覚があって、それがイヤなんです。和多利さんはそのあたり、どう考えてらっしゃるんでしょうか?

和多利:ワタリウム美術館では、現代アートだけではなくて、建築や思想、史学的な展覧会などもしているのですが、そこには自分の目を変えていかないといけないという意識があります。例えば、岡倉天心日本庭園をテーマにした企画などもやってきましたが、これらは元館長だった私の母(故・和多利志津子氏)が企画したもので、最初はなぜそんなことをするのかと思っていました。でもいま思うとそういうものが自分の幅を広げてくれたし、スタディをすることが大事なんだなと。アーティストというのは一点突破の方がブレイクスルーしやすいところもありますが、私たちの仕事は社会の中に入っていかないといけなし、区長からPTAまでを相手にしていくものです。そこでは懐の深さというものが大事になるし、面白いと感じるものはなるべく取り入れるようにしています。

チン↑ポム「非常口」(奥)、「生き残る」(手前)   ワタリウム美術館「ひっくりかえる展」より JR「東北の人たちのポートレイト」 ワタリウム美術館「JR展」より

Q.アートはクリエイティブで刺激的なものという印象や理解がありますが、アートの世界ではその業界なりの利害が固まっていて、想定の範囲内でしか物事が動かないことも多いなと思って、そこに対しても違和感があるんですが…。

和多利:そういう人とは仕事をしなければいいんだと思います(笑)。以前にワタリウム美術館で展覧会をしたバリー・マッギーなどは、いまや数千万円で作品が売れるアーティストですが、それでも名前を変えて変な場所で展覧会をやっていたりするんですね。JRなどにしても作品は凄く売れているけど、そこで稼いだお金で貧しいところでプロジェクトをやったりしていて、そういう姿勢がとても好きなんです。僕は別にグラフィティが特に好きというわけでもないし、単純に本当に面白い人と仕事がしたいんです。もちろん僕の場合は、そこに現代アートの文脈とその評価など自然に肌にしみ込んでいて、このアーティストは数年後にこのくらいまでいくだろうということが瞬時に見えてしまいますので、それもひとつの軸にはなっています。ただ、いくら作品の評判が良くても、話してみると全然面白くなかったり、お金のことしか考えていないような人もいて、そういうアーティストとは仕事はできないし、やる必要もないのかなと。その分この人とやると決めたらこちらも覚悟をするし、アーティストにもプレッシャーをかけ、とびきりの作品を作ってもらいます(笑)。自分がやらないといけないことを明快にしておくことが大事だし、そこで嘘をつかないということが正解だと思います。

Q.ストリートアートやサンプリングカルチャーなどが隆盛し、本物とコピーが入り混じるような状況があるなかで、現代アートの世界でもさまざまなアプローチがやり尽くされてきた感がありますが、今後アートはどんな方向に進むと思いますか?

和多利:これからもアートマーケットは変わらず存在していくと思いますが、僕が個人的に感じているのは、「〇〇派」などとは違うアーティスト同士の不思議なネットワークが生まれてくるんじゃないかということです。それが社会や経済レベルにまで広がっていくかはわかりませんが、これだけネットがつながっている時代において、ギャラリーにもミュージアムにも国にも属さないで、アーティスト同士が自分の弱い部分をシェアしながら、助け合っていけるような関係性というものが築かれていくかもしれないし、そうなればいいなと思っています。

Q.いまのお話にちょっとピンと来るところがあります。どこまでやれるかわかりませんが、まちづくりの人間からのアプローチとして、そういうことを少しでも形にできたらいいなと思います。<インタビュー終わり>

インフォメーション

MAD Cityエリア内に誕生したアーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」では、新たな公募アーティストの長期滞在が予定されており、審査結果の発表のほか、クラウドファンドでの支援も募集中。また、MAD Cityでも随時イベント等が開催中。詳細はこちらから。

もっと知りたい人は…

  • 寺井元一 

    寺井元一

    株式会社まちづクリエイティブ代表

    1977年生まれ。2002年にNPO法人KOMPOSITIONを設立。表現者に活動の場や機会を提供する活動を始める。横浜・桜木町の壁画プロジェクト「桜木町 ON THE WALL」や、渋谷・代々木公園でのストリートバスケ大会「ALLDAY」などを企画運営。2010年、まちづクリエイティブを設立し、「MAD Cityプロジェクト」開始。以降、「MAD City不動産」の運営、地域アートプロジェクト「松戸アートラインプロジェクト」の運営などに携わる。現在はエリアの町内会などを主体とする地域経営組織「松戸まちづくり会議」の事務局長も務めている。

  • 和多利浩一 

    和多利浩一

    キュレーター
    ワタリウム美術館

    ワタリウム美術館キュレーター。東京都渋谷区出身。1980年オンサンデーズ設立。美術書籍の出版社イッシプレス設立後、1990年ワタリウム美術館開館。ドイツのドクメンタ9で初の日本人スタッフ、第1回南アフリカ・ヨハネスブルグ・ビエンナーレ日本代表コミッショナーなど国内外で活動。地域ボランティアとして、青山キラー通り商店会会長、原宿地区商店会連合会会長、原宿神宮前まちづくり協議会代表幹事なども務め、街づくりに参加してきた。