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田中良治

ウェブデザイナー

鈴木 健

「SmartNews」代表取締役

今回カンバセーションズに初登場するのは、ウェブサイトのデザインから展覧会での作品発表まで、デザイン/プログラミング領域で多彩な活動を展開している「セミトランスペアレント・デザイン」の田中良治さん。その田中さんがインタビューするのは、日本発のニュースアプリとして人気を獲得している「SmartNews」の共同創設者であり、著書『なめらかな社会とその敵』や、仮想通貨「PICSY」などでも知られる鈴木健さん。学術分野からベンチャービジネスまで、多岐にわたる領域を行き来している鈴木さんに、田中さんが聞きたいこととは?

5. 「なめらかな社会」は実現できそうですか?

鈴木 健 

あまり良い兆しはないですよね(笑)。ただ、僕もすべてを見ているわけではないですし、そういう動きも色々あるとは思います。

Q.パーソナライズされたニュースばかりが届けられると、自分の興味があるものだけに情報が偏ってしまうおそれがあるという議論もよくされていますよね。その辺についてはどう考えていますか?

鈴木:自分の周りの話題だけにしか興味を示さなくなってしまうという問題はたしかにあって、いわゆる「フィルターバブル」と言われているものです。情報をパーソナライズすればするほど人の興味は狭く深くなり、それによって民主主義の基盤が脅かされ、対話ができない社会になってしまうと、「フィルターバブル」という言葉をつくったイーライ・パリサーなどは言っています。現在の「SmartNews」では、ジェネラルニュースを配信することで、その危険性を回避しているところがあります。自分の周りのことにしか興味がない人も、地球の裏側のことにしか興味がない人もどちらも不健全だと思うのですが、人々は概して二元論が大好きなので、極端になりがちですよね。それをなくすためにどうすれば良いかということは常に考えていますし、両者をなめらかにつなげられる環境をつくっていく必要があると思っています。

Smartnews社内で行われた数学者・森田真生さんによるアラン・チューリングに関するレクチャー。

Q.以前に「SmartNews」さんのオフィスで、数学者の森田真生さんによるアラン・チューリングに関するレクチャーを聞かせてもらったのですが、チューリングは哲学的な問いを数学的なモデルにして、それを解いていくことで抽象的な問題を考えていくという話があって、それがとても腑に落ちたんです。「SmartNews」にもそれに近い考え方があるように感じていて、「なめらかな社会」の実現を、ニュース配信という形で目指していることがとても興味深いと思います。

鈴木:本というのは、哲学のフォーマットのひとつですが、普及したのはここ数千年間の話で、それ以前から人類は哲学をしていたはずですよね。宇宙のことや自分たちの存在のことなどを考えながら、人類は歌ったり、祈ったり、踊ったりと色んな行為で哲学をしてきたわけで、現在に置き換えればプログラミングを書いたり、会社をつくったり、数学をしたりすることも哲学のフォーマットになり得ると考えています。

Q.同時に、そういうレクチャーが受けられる環境が社内にあるということも素晴らしいと感じました。

鈴木:社内でそういう勉強会を開いているのは、思想や歴史の基礎中の基礎を共有していないとコミュニケーションの基盤が築けないんじゃないかと考えているからです。もちろん社員一人ひとりに異なる興味・関心があっていいんですが、共通の部分もないといけなくて、それがチューリングの研究や、(マーシャル・)マクルーハンのメディア論だったりするんです。
ちょうどクリスマス近くだったので、森田くんの講演はクリスマス・レクチャーにしました。(マイケル・)ファラデーの「ロウソクの科学」は素晴らしいですよね。以前に、(クリストファー・)ビショップ教授のクリスマス・レクチャーを拝聴したことがあるんですが、小学生の聴衆を相手にページランクや量子コンピューターについて説明しているんですよね。本質的な理解は、決して難しくないのです。逆に言えば、難しくしか説明できないのであれば、私たちがまだ本質的な理解に達していないのであるという(リチャード・P・)ファインマンの考えを参照してもいいでしょう。

Q.かつてはサブカルチャーのような存在が真ん中をつなぐ役割を果たしていて、社会はもう少しなめらかだったような気がします。ひねくれ者だった僕自身も、中学生の頃からヒットチャートの音楽を聴くのはイヤで、中間的な存在としてのサブカルチャーを摂取して育ってきた感覚があります。だから、鈴木さんが考えている二元論に陥らないためのなめらかな社会の実現という考え方は非常に理解しやすいし、それは僕らの世代の空気としてもあるのかなと。現時点で、なめらかな社会を実現できる兆しのようなものは何か見えていますか?

鈴木:あまり良い兆しはないですよね(笑)。ただ、僕もすべてを見ているわけではないですし、そういう動きも色々あるとは思います。自分たちとしても、人々のものの見方を変えていくということを、アーキテクチャの力で実現していきたいと考えています。

Q.個人的にも「SmartNews」の今後にはとても期待しています。ちなみに、今後もスタッフはどんどん増やしていくのですか?

鈴木:そうですね。そうすると実際に顔を合わす機会がない社員も増えてくるかもしれませんが、そこもなめらかにつないでいければと思っています(笑)。<インタビュー終わり>

もっと知りたい人は…

  • 田中良治 

    田中良治

    ウェブデザイナー

    株式会社セミトランスペアレント・デザイン代表取締役。1975年三重県生まれ。同志社大学工学部、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー卒業。企業ブランディング、ウェブ広告の企画・制作から国内外の美術館・ギャラリーでの作品展示までウェブを核とした領域にとらわれない活動を行っている。近年の活動にセミトランスペアレント・デザイン退屈展(ggg)や光るグラフィック展(G8)の企画がある。2015年JAGDA新人賞受賞。

  • 鈴木 健 

    鈴木 健

    「SmartNews」代表取締役

    1998年慶応義塾大学理工学部物理学科卒業。2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。情報処理推進機構において、伝播投資貨幣PICSYが未踏ソフトウェア創造事業に採択、天才プログラマーに認定。著書に『なめらかな社会とその敵』(勁草書房、2013年)。東京財団研究員、国際大学グローバル・コミュニケーションセンター主任研究員など歴任し、現在、 東京大学特任研究員。2006年4月株式会社サルガッソー設立、代表取締役社長就任。2012年6月スマートニュース株式会社(創業時社名:株式会社ゴクロ)に共同創業者として参画、取締役に就任。2014年6月代表取締役会長共同CEO就任。SmartNews米国版ローンチのため米国法人SmartNews International. Inc.を設立、Presidentに就任し、2014年10月日米のニュースを同時に楽しめる SmartNews 2.0を日米同時リリース。海外メディアとの連携を進めながら、世界中の良質な情報をなめらかに発信中。