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田中良治

ウェブデザイナー

鈴木 健

「SmartNews」代表取締役

今回カンバセーションズに初登場するのは、ウェブサイトのデザインから展覧会での作品発表まで、デザイン/プログラミング領域で多彩な活動を展開している「セミトランスペアレント・デザイン」の田中良治さん。その田中さんがインタビューするのは、日本発のニュースアプリとして人気を獲得している「SmartNews」の共同創設者であり、著書『なめらかな社会とその敵』や、仮想通貨「PICSY」などでも知られる鈴木健さん。学術分野からベンチャービジネスまで、多岐にわたる領域を行き来している鈴木さんに、田中さんが聞きたいこととは?

2. 「PICSY」はどうやって生まれたのですか?

鈴木 健 

貨幣の価値というのは生成されるものだという考えに至り、1カ所に価値がとどまるのではなく、流れていくような仕組みがつくれないかと考えるようになりました。

Q.90年代半ば以降、インターネットを使った活動としては、他にどんなことをされてきたのですか?

鈴木:いまでこそネット選挙という言葉が一般化していますが、当時そういうことをしている人はほとんどいなかったんですね。その中で、1996年の衆議院議員選挙の時に、おそらく日本初であろう選挙サイト「インターネット政策比較プロジェクト」をつくりました。その時は東京6区のすべての立候補者の政策を比較するというテーマで、下北沢を駆けずり回り、各立候補者に話を聞いたりしました。その頃からWebで社会システムを変えるということを強く意識するようになっていきました。でも、当時はインターネットユーザーが少な過ぎましたね。数百万人しかいなかったんです。

Q.その後、00年にかけていわゆるITバブルが起こりましたが、その影響などは何かありましたか?

鈴木:ITバブルが起きる前というのは、Webというものが夢を持った時代でしたよね。僕がインターネットを始めた1995年頃は、日本のインターネット人口はまだ100万人程度でした。当時は、インターネットやWebというものがここまで社会に浸透するとは考えていなかったし、普及したとしてもマイナーなものであり続けると思っていました。1998年に大学院に入ると、引きこもって東大駒場の図書館で哲学や数学、物理の本などを読んだりしていました。だから、1999年くらいに、日本にインターネットバブルが起きているということにも当時は知りませんでした。

「PICSY」Webサイト

Q.そうした感覚が「PICSY」という通貨システムを開発することにもつながっていくんですか?

鈴木:そうですね。ITバブルが崩壊した後に、ニュースでバブルが起きたという事実を後から知ったのですが、ぼくらがインターネットの可能性を探求していた1995年から1997年くらいまでのコンテクストとは全く異なり、ITによって生産性の拡大が無限に続いていくというニューエコノミー論や時価総額経営といった考え方がもてはやされたという事実を知り、なんか世の中終わってるなと感じました(笑)。自分がインターネットの可能性を追求していかないと、誰も本質的な探求をしないのではないかという使命感を覚えたのです。
当時は、インターネットの話とは別に、地域通貨が注目され始めていたんですが、自分で貨幣をつくれるということが面白いなと感じていました。ただ、調べていくうちに、地域通貨はあまりうまくいかないだろうと感じ、全く新しい仕組みをつくった方が良いと考えるようになりました。そもそもお金というのはただの紙切れなのに、なぜ価値を持つのかと考えると不思議ですよね。ものの価値というのはどこにあるんだろうということは、もともと大学時代から考えていたんです。あらゆるものが実は無根拠だということがわかってきて、その最たるものがお金であり、要は共同幻想的なものなんだろうと。また、貨幣というものにはフェティシズムがあり、その価値というのは生成されるものなんだという考えに至ったのですが、1カ所に価値がとどまるのではなく、流れていくような仕組みがつくれないかと考えるようになりました。そして、2000年の夏にシャワーを浴びている時に、それまで漠然と考えていた複数のことがつながり、マルコフ過程を使えば貨幣がつくれると思ったんです。それが、未踏ソフトウエア創造事業に採択され、2002年に実装したのですが、その過程で、価値が流れていくというのは投資なんだということに気づき、「PICSY(伝播投資貨幣)」という名前をつけたんです。<続く>

もっと知りたい人は…

  • 田中良治 

    田中良治

    ウェブデザイナー

    株式会社セミトランスペアレント・デザイン代表取締役。1975年三重県生まれ。同志社大学工学部、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー卒業。企業ブランディング、ウェブ広告の企画・制作から国内外の美術館・ギャラリーでの作品展示までウェブを核とした領域にとらわれない活動を行っている。近年の活動にセミトランスペアレント・デザイン退屈展(ggg)や光るグラフィック展(G8)の企画がある。2015年JAGDA新人賞受賞。

  • 鈴木 健 

    鈴木 健

    「SmartNews」代表取締役

    1998年慶応義塾大学理工学部物理学科卒業。2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。情報処理推進機構において、伝播投資貨幣PICSYが未踏ソフトウェア創造事業に採択、天才プログラマーに認定。著書に『なめらかな社会とその敵』(勁草書房、2013年)。東京財団研究員、国際大学グローバル・コミュニケーションセンター主任研究員など歴任し、現在、 東京大学特任研究員。2006年4月株式会社サルガッソー設立、代表取締役社長就任。2012年6月スマートニュース株式会社(創業時社名:株式会社ゴクロ)に共同創業者として参画、取締役に就任。2014年6月代表取締役会長共同CEO就任。SmartNews米国版ローンチのため米国法人SmartNews International. Inc.を設立、Presidentに就任し、2014年10月日米のニュースを同時に楽しめる SmartNews 2.0を日米同時リリース。海外メディアとの連携を進めながら、世界中の良質な情報をなめらかに発信中。