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環ROY

ラッパー

角田光代

小説家

今回カンバセーションズにインタビュアーとして初登場するのは、今年4月に4枚目となるオリジナルアルバム「ラッキー」をリリースしたラッパーの環ROYさん。ヒップホップの解釈を押し広げながら、精力的な活動を続けている環さんがインタビュー相手として指名したのは、「空中庭園」「八日目の蝉」「対岸の彼女」など数々のベストセラー作品を世に送り出してきた作家・角田光代さん。同じ言葉を操る仕事を生業とし、人生の先輩でもある角田さんに、果たして環さんはどんな質問を投げかけるのでしょうか?

5. どんな小説を書いていきたいですか?

角田光代 

歴史など長いスパンのものを書きたいんです。最近はきっちり歴史に根ざしたものを書きたいという思いがあるんです。

Q.角田さんはこれからどんな小説を書きたいと思っていますか?

角田:最近は、歴史など長いスパンのものを書きたいんです。千年単位くらいの物語とかを考えたいんですけど、それをやるとなると一から基礎知識を学ばないといけなくて、凄く時間がかかってしまうんです。以前に書いた「曽根崎心中」にしても、他の作家の方に比べて基礎知識や素養がないから、遊女とは?とか、江戸時代とは? というところから始めなくてはいけなくて、泣きながら勉強しました(笑)。これまで凄く短期間で書いてきていて、長時間準備をするということに慣れていないんですね。いつも準備ができないまま連載が始まってしまってなかなか取り組めないという苛立ちがずっと続いているんです。

(左)「曾根崎心中」(2011)、(右)「八日目の蝉」(2007)

Q.スケールを大きくしたいという欲求は自分にもありますね。なるべく100年単位とか1000年単位の歴史を踏まえた上で、いま自分がこういう音楽をやっているということが示せたらいいなと。だから、結構歴史のこととかを調べたり、話を聞いたりするんですよ。周りにもそういうのが好きなヤツが結構いて、例えば日本の縄文土器は世界で最初の食器だとか、そういう話を教えてもらったりするんです。縄文時代の日本は、周囲から敵も攻めてこないし、高温多湿な気候で動物も植物も豊富で、メチャ良い感じの空間だったらしいんです。だから他の大陸よりも狩猟生活の期間が長くて、縄文時代が1万年も続いたらしく、その間に凄く暇だったから、「じゃあ食器でも作ってみるか」みたいな (笑)。

角田:凄く面白い話ですね。最近は私もきっちり歴史に根ざしたものを書きたいという思いがあるんです。

Q.小説以外の分野で何かをやろうと思うことはないんですか?

角田:いまの仕事がなくなった時に何をするかということは常に考えているけど、積極的にやりたいと思うことはないですね。だから、色々できちゃう人は凄いなと思うんです。

Q.うらやましいですよね。ラップは人前でやるパフォーマンスだけど、作詞というのは全く違う作業なんです。ラッパーには、パフォーマーと作家の両方の側面があって、その比重はそれぞれ違うと思うけど、自分はどちらかというと、パフォーマーという部分にフォーカスしていきたいという思いがある。いまはラップが得意だけど、パフォーマンスという広い枠組みで表現ができるといいなと思っています。ただ、一から勉強するのは面倒くさいとも思ってもいるので、逃げの発想の粋は出ていないのかもしれません(笑)。

角田:私はロックが好きで、前にギターを勉強して、ひと通りできるようになったんですけど、そこから頑張り続けることはできなかった。そういう意味で小説というのは、ずっと頑張ってできている数少ないものなのかなと思います。

Q.要は自分が頑張れることをラップ以外で探さないとということなんでしょうね(笑)。<インタビュー終わり>

もっと知りたい人は…

  • 環ROY 

    環ROY

    ラッパー

    宮城県仙台市出身。東京都在住。2006年に1stアルバム「少年モンスター」を発表。以降、これまでにフルアルバム「BREAK BOY」「あっちとこっち」「ラッキー」を発表する。第15回文化庁メディア芸術祭大賞受賞作品「スペースバルーンプロジェクト」へ参加、楽曲提供を行う。FUJI ROCK FESTIVALをはじめとする様々な大型音楽イベントへ出演するほか、全国各地、屋内外、様々な場所にてパフォーマンスを行う。

  • 角田光代 

    角田光代

    小説家

    1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、98年『ぼくはきみのおにいさん』で坪田譲治文学賞、『キッドナップ・ツアー』で99年産経児童出版文化賞フジテレビ賞、2000年路傍の石文学賞、03年『空間庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞、06年「ロック母」で川端康成文学賞、07年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞を受賞。著者に『三月の招待状』『森に眠る魚』『くまちゃん』など多数。