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太刀川英輔

NOSIGNER主宰
デザイナー

堀井秀之

東京大学i.school エグゼクティブディレクター

今回インタビュアーを務めるのは、NOSIGNERの代表として、プロダクト、空間、グラフィックをはじめ幅広い領域のデザインを手がける太刀川英輔さん。東日本大震災の直後には、被災地での生活を助けるさまざまなアイデアを集めるデータベースWiki「OLIVE」を立ち上げるなど、社会的に機能する無形のデザインを生み出すことを目指した活動で注目を集めています。そんな太刀川さんがいま興味を持っている分野はデザイン主導のイノベーション。デザインによるイノベーションのあり方を考える彼からの強い希望で、「イノベーションの学校」を謳う東京大学の教育プログラム「東京大学i.school」のエグゼクティブディレクターを務める堀井秀之先生へのインタビューが実現しました。i.schoolの公開ワークショップで講師を務めた経験もある太刀川さんが、独自の視点でその秘密を掘り下げます。

5. イノベーションに本当に必要なことは何ですか?

堀井秀之 

デザインブックや百科事典を見た時に、なぜそれが自分の心に訴えかけるのか、そのメカニズムを言語化し、そのアナロジーを色々なケースに適用していくのです。

Q.アブダクションが導かれる条件としてリサーチがあるというお話がありましたが、i.schoolではその部分をかなり重視しているように思います。リサーチが集合知化できるデザインパートであるということについて、もう少しお話を聞いてみたいです。

堀井:これまでに世界中の色々なワークショップを見てきたのですが、そこにこれだけ時間を割いているのは、私くらいないんじゃないかなと思っています(笑)。多くのワークショップは、そこにどういう問題があるのかという目的の部分に重点を置くのですが、私のワークショップでは手段に関する準備を入念にします。活用可能な既存の手段を分析し、分析結果を活用できるようにする。例えば、椅子をデザインする時に、参考にはなるけれど、椅子そのものではないもの、例えばテーブルのデザインを考えたりするんです。そこからそのテーブルのデザインというものがどういう意味を持っているのかということを考え、あらゆるもののデザインに活かせるように上位概念化していくのです。

Q.ある現象を記号化し、抽象的に理解することでツール化できれば、色々な活用をしていけるという考え方ですね。

堀井:そういうことです。例えば、アフリカで見つけた面白いオブジェがあるとします。その時に、なぜ自分はそれを面白いと感じるのかを考えるのです。あるいは、デザインブックや百科事典を見た時に、なぜそれが自分の心に訴えかけるのか、そのメカニズムを言語化し、タグ付けしていく。そのアナロジーを色々なケースに適用していくのです。

Q.アナロジーを記号化・類型化しておくと、あるパズルを解くピースになるかもしれない。それはリサーチによってもたらされるということですね。ひょっとするとその先には、スティーブ・ジョブズのような天才の解体という話があるかもしれないですね。

堀井:そもそもスティーブ・ジョブズはそんなに複雑な人ではないと思いますけどね(笑)。私は、これまでi.schoolをやってきたなかで、イノベーションに大切なことが3つあると感じています。ひとつは、先ほどお話ししたプロセスのデザインができるようになること。もうひとつは、新しいものを生み出すのは良いことなんだというマインドセットを持つこと。そして3つ目は、「こういうデザインは許せない」とか「世の中はこうあるべきだ」とか「自分の世界観はこうだ」と言い切れる強い思いです。i.schoolで教えているのは、最初のふたつです。最後のひとつは、結局はその人自身がそう思えるかどうかという話になってくるのです。そして、スティーブ・ジョブズが生まれるかどうかというのも結局はそこなのですね。その部分を育む教育プログラムというのもあるのでしょうが、それこそ滝に打たれるとか、そういう話になってしまうかもしれない(笑)。それはi.schoolが目指すところではないですし、スティーブ・ジョブズを生み出すのが目的ではないというのは、そういうことでもあるのです。<インタビュー終わり>

インフォメーション

堀井秀之さんによる新著「社会技術論 ―問題解決策のデザイン」が7月25日に東京大学出版会より出版予定。
太刀川英輔さんが参加する、アジアの新興国の草の根にいるイノベーターを発見・体系化・啓蒙していくプロジェクト「Design For Freedom」が発足。

もっと知りたい人は…

  • 太刀川英輔 

    太刀川英輔

    NOSIGNER主宰
    デザイナー

    慶應義塾大学理工学部隈研吾研究室にて、デザインを通した地域再生と建築とプロダクトデザインの研究に携わり、在学中の2006年に「見えない物をつくる職業」という意味を持つデザインファームNOSIGNERを創業。社会に機能するデザインの創出(デザインの機能化)と、デザイン発想を体系化し普及させること(デザインの構造化)を目標として活動している。 平面/立体/空間を横断するデザインを得意とし、新領域の商品開発やコンセプトの設計、ブランディングを数多く手掛け、数多くの国際賞を受賞している。経 済活動としてのデザインのみならず、科学技術、教育、地場産業、新興国支援など、既存のデザイン領域を拡大する活動を続けている。災害時に役立つデザインを共有する「OLIVE PROJECT」代表。IMPACT JAPAN fellow。University of Saint Jpseph (マカオ) 客員教授。

  • 堀井秀之 

    堀井秀之

    東京大学i.school エグゼクティブディレクター

    1980年東京大学工学部土木工学科卒業、ノースウェスタン大学大学院修士課程・博士課程修了、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授。東京大学知の構造化センター長、専門は社会技術論、安全安心研究。著書「問題解決のための『社会技術』」、「安全安心のための社会技術」。