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太刀川英輔

NOSIGNER主宰
デザイナー

堀井秀之

東京大学i.school エグゼクティブディレクター

今回インタビュアーを務めるのは、NOSIGNERの代表として、プロダクト、空間、グラフィックをはじめ幅広い領域のデザインを手がける太刀川英輔さん。東日本大震災の直後には、被災地での生活を助けるさまざまなアイデアを集めるデータベースWiki「OLIVE」を立ち上げるなど、社会的に機能する無形のデザインを生み出すことを目指した活動で注目を集めています。そんな太刀川さんがいま興味を持っている分野はデザイン主導のイノベーション。デザインによるイノベーションのあり方を考える彼からの強い希望で、「イノベーションの学校」を謳う東京大学の教育プログラム「東京大学i.school」のエグゼクティブディレクターを務める堀井秀之先生へのインタビューが実現しました。i.schoolの公開ワークショップで講師を務めた経験もある太刀川さんが、独自の視点でその秘密を掘り下げます。

3. 生まれたアイデアは誰のものですか?

堀井秀之 

自分たちがそれを実現していくというのであれば、アイデアをそのグループ全体のものとして考えていけるかが大切です。

Q.イノベーションの段階には、集合知的に行う拡散パートと、個人で行う収束パートがあって、類推して仮説を導く瞬間はひとりだけど、その仮説を検証していく過程は集合知化できるということですね。そのプロセスの循環というのは、そこで生まれたアイデアに対するオーナーシップを集団化させていくということでもあると思います。例えばそれは、デザイン事務所のあり方を考える上でもポイントになりそうですね。

堀井:そう思います。アイデアが絞られて実現に向かっていく時に、そのアイデアを自分個人のものと思うのか、グループ全体のものと思うのかは大きな違いです。良いアイデアを出してそれをどこかに納品するということであれば,個々が出したアイデアを投票制で選択すればいいかもしれないけど、自分たちがそれを実現していくというのであれば、アイデアをそのグループ全体のものとして考えていけるかが大切です。その気持ち作りという面もi.schoolにはあるのです。

Q.本来デザイナーというのはオーナーシップの塊です(笑)。賞を目指すということや名を上げることもそのひとつで、僕自身も気張ってやってきたところがあったけど、最近はちょっと違うなと思っています。それは、オーナーシップが集団に属している方がうまくいく場合があると思っているからなんですが、オーナーシップのあり方は組織にどんな影響を与えるとお考えですか?

堀井:例えば、個人の思いついたアイデアがあって、その人がオーナーシップを発揮して社長になり、給料を払って人を調達し、命令していくというやり方もあると思いますが、それだと組織としては続かないことが多いと思うのです。組織全体にオーナーシップがあるからこそ、みんなが我がことのように取り組めると思うし、オーナーシップを共有できていることに喜びを感じられるのであれば、そうあるべきなのではないかなと。

Q.それは往々にしてうれしいことだと思います。僕の師匠は、建築家の隈研吾さんなんですが、隈さんは「こんな課題があるから、一週間後までにやっておいて」とスタッフそれぞれに伝えて、1週間後にチェックをして、それぞれに対して15秒くらいずつで意見を言っていくという最小限のディレクションをする人でした。だから、スタッフはそこにオーナーシップを持っていられる。僕は、「このアイデアで隈さんを納得させてやるぜ!」と思ってやっていたので楽しかったし、ある意味ラッキーだったなと。ここには、オーナーシップとクリエイティビティの関係としてひとつの可能性があるなと思っています。

堀井:そうですね。今後時間があったら、芸術やスポーツなどあらゆる分野で、人がどう育てられているのかというのを比較して類型化してみたいなと思っています。それはi.schoolにとってもスゴく参考になるはずですよね。 <続く>

インフォメーション

堀井秀之さんによる新著「社会技術論 ―問題解決策のデザイン」が7月25日に東京大学出版会より出版予定。
太刀川英輔さんが参加する、アジアの新興国の草の根にいるイノベーターを発見・体系化・啓蒙していくプロジェクト「Design For Freedom」が発足。

もっと知りたい人は…

  • 太刀川英輔 

    太刀川英輔

    NOSIGNER主宰
    デザイナー

    慶應義塾大学理工学部隈研吾研究室にて、デザインを通した地域再生と建築とプロダクトデザインの研究に携わり、在学中の2006年に「見えない物をつくる職業」という意味を持つデザインファームNOSIGNERを創業。社会に機能するデザインの創出(デザインの機能化)と、デザイン発想を体系化し普及させること(デザインの構造化)を目標として活動している。 平面/立体/空間を横断するデザインを得意とし、新領域の商品開発やコンセプトの設計、ブランディングを数多く手掛け、数多くの国際賞を受賞している。経 済活動としてのデザインのみならず、科学技術、教育、地場産業、新興国支援など、既存のデザイン領域を拡大する活動を続けている。災害時に役立つデザインを共有する「OLIVE PROJECT」代表。IMPACT JAPAN fellow。University of Saint Jpseph (マカオ) 客員教授。

  • 堀井秀之 

    堀井秀之

    東京大学i.school エグゼクティブディレクター

    1980年東京大学工学部土木工学科卒業、ノースウェスタン大学大学院修士課程・博士課程修了、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授。東京大学知の構造化センター長、専門は社会技術論、安全安心研究。著書「問題解決のための『社会技術』」、「安全安心のための社会技術」。