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太刀川英輔

NOSIGNER主宰
デザイナー

堀井秀之

東京大学i.school エグゼクティブディレクター

今回インタビュアーを務めるのは、NOSIGNERの代表として、プロダクト、空間、グラフィックをはじめ幅広い領域のデザインを手がける太刀川英輔さん。東日本大震災の直後には、被災地での生活を助けるさまざまなアイデアを集めるデータベースWiki「OLIVE」を立ち上げるなど、社会的に機能する無形のデザインを生み出すことを目指した活動で注目を集めています。そんな太刀川さんがいま興味を持っている分野はデザイン主導のイノベーション。デザインによるイノベーションのあり方を考える彼からの強い希望で、「イノベーションの学校」を謳う東京大学の教育プログラム「東京大学i.school」のエグゼクティブディレクターを務める堀井秀之先生へのインタビューが実現しました。i.schoolの公開ワークショップで講師を務めた経験もある太刀川さんが、独自の視点でその秘密を掘り下げます。

2. イノベーションはどのように起きるのですか?

堀井秀之 

生まれるアイデアというのは、アイデア出しの時にどれだけ自分で色々考えられたかで変わってきます。

Q.イノベーションという言葉は「技術革新」という意味合いで捉えられがちですが、デザインによってイノベーションが起こることがあります。いくつかのものが統合され、見たこともないような新しい形態に凝縮、変化することがある。それを実現するために必要になってくるのが、テクノロジー、デザイン、マーケティングなどそれぞれの分野の人たちが対話の場を持ち、一丸となってゴールを目指すことだと思っています。i.schoolが興味深いのは、「場」として機能しているからなんです。この場で集合知的にアイデアが揉まれていくことで、発明的創造が起こるという状況を目指されているように思うのですが、それは具体的にはどのように起こるのでしょうか?

堀井:新しい手段を思いつくというのは、個人の思考の中で起こることだと思うのです。だから、私のi.schoolのワークショップでは、みんなで話し合いをする前に、アイデア出しという個人の時間を作るようにしています。その時に思考していることは、ある目的を果たすための手段を考えるということで、これは、ある結果を引き起こす原因を考え出したり、ある現象を説明する法則を見つけ出す時の思考と同じなのです。これはアブダクション(=仮説的推論)といって、アメリカの学者チャールズ・パースは、同義語としてリトロダクション(遡及推論)という言い方もしています。

Q.僕の修士論文は「デザインの言語的認知」というタイトルで、デザインを言語学的に分析することで、デザインを理解する文法が見えてこないかというものでした。それも、アブダクションの考え方やパースの思考をベースにしたものだったので、スゴくよくわかります。

堀井:そのアブダクションの瞬間を質の高いものにしていくことが重要です。リサーチやインタビュー、観察など、そのために必要な事前作業がたくさんあって、その作業はグループで行います。それによって、それぞれが持っているバックグラウンドや知識を活用できるし、物の考え方や価値観の違う他者の理解に努めることは自分の世界観を広げることにつながります。自分から距離が遠いものを活用することで、思いもしなかった新しいものが生まれる可能性もあります。その作業を経てから、個々にアイデア出しをして、生まれたアイデアをもとにまたグループでディスカッションをします。自分のアイデアを説明したり、人のアイデアを聞いたりしている時に良いことを思いつく場合もあります。その結果生まれるアイデアというのは、アイデア出しの時にどれだけ自分で色々考えられたかで変わってくるのです。つまり、アイデア出しの時のアイデアの数と質が、その後に生まれるアイデアを規定していると思います。<続く>

インフォメーション

堀井秀之さんによる新著「社会技術論 ―問題解決策のデザイン」が7月25日に東京大学出版会より出版予定。
太刀川英輔さんが参加する、アジアの新興国の草の根にいるイノベーターを発見・体系化・啓蒙していくプロジェクト「Design For Freedom」が発足。

もっと知りたい人は…

  • 太刀川英輔 

    太刀川英輔

    NOSIGNER主宰
    デザイナー

    慶應義塾大学理工学部隈研吾研究室にて、デザインを通した地域再生と建築とプロダクトデザインの研究に携わり、在学中の2006年に「見えない物をつくる職業」という意味を持つデザインファームNOSIGNERを創業。社会に機能するデザインの創出(デザインの機能化)と、デザイン発想を体系化し普及させること(デザインの構造化)を目標として活動している。 平面/立体/空間を横断するデザインを得意とし、新領域の商品開発やコンセプトの設計、ブランディングを数多く手掛け、数多くの国際賞を受賞している。経 済活動としてのデザインのみならず、科学技術、教育、地場産業、新興国支援など、既存のデザイン領域を拡大する活動を続けている。災害時に役立つデザインを共有する「OLIVE PROJECT」代表。IMPACT JAPAN fellow。University of Saint Jpseph (マカオ) 客員教授。

  • 堀井秀之 

    堀井秀之

    東京大学i.school エグゼクティブディレクター

    1980年東京大学工学部土木工学科卒業、ノースウェスタン大学大学院修士課程・博士課程修了、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授。東京大学知の構造化センター長、専門は社会技術論、安全安心研究。著書「問題解決のための『社会技術』」、「安全安心のための社会技術」。