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杉浦太一

株式会社CINRA 代表取締役

ヨシタケシンスケ

絵本作家

今回、カンバセーションズにインタビュアーとして初参加してくれるのは、カルチャーニュースサイト「CINRA.NET」の運営や、さまざまな企業や行政のWebサイト/メディアの制作などを手がけている株式会社CINRAの代表取締役・杉浦太一さん。そんな杉浦さんがインタビュー相手に選んだのは、先日最新作となる『このあと どうしちゃおう』を刊行した絵本作家のヨシタケシンスケさんです。亡くなったおじいちゃんが書き残したノートから、死について想像を巡らす主人公の少年をユーモアたっぷりに描き、各界から大きな反響を集めているヨシタケさんに、杉浦さんがいま聞きたいこととは?

5. 子育てはどうすればいいですか?

ヨシタケシンスケ 

なるべく早いうちに、大人も大したことはないということを学んでほしいし、大人も子どももいい加減な人間同士、優しくし合わないといけないと感じてほしい。そうやって大人と子どもを取り持てるような絵本があるといいなと。

Q.ヨシタケさんにはお子さんがふたりいらっしゃると聞きましたが、『このあと どうしちゃおう』に出てくるような死の話について、お子さんと話したりするのですか?

ヨシタケ:うちには、小学校4年生と幼稚園の年中さんのふたりの男の子がいるのですが、そういう話はまだしていないですよ。ドキドキしながら、上の子に『このあと どうしちゃおう』を読ませた時も、「地獄のページが面白いね!」という感想で終わりました(笑)。でも、しんみりされてしまうよりは、そのくらいの反応で良かったなと思っていて、単純に面白がってくれたということがこの本にとっての成功なのかなと。「地獄のページが面白かった本」という記憶が残れば、大きくなってからまた読んでもらえる可能性があるし、絵本というのは人生で2回読む時期が来る可能性があることが大きな特徴で、大人になって読み返した時に全然違うものとして入ってくることもあります。人生の節目に同じ本がその人にまったく違う影響を与えることは面白いですし、そういうことが自分の絵本でも起きてくれるといいですよね。

ヨシタケシンスケ『このあと どうしちゃおう』

Q.僕も昨年子どもが生まれたんです。幼稚園や小学校の先生というのはある意味「これが正解です」ということや「目的を持ちましょう」ということを教える立場だと思うのですが、自分は父親という立場から子どもとどう接するべきかと考えてしまいます。

ヨシタケ:学校の先生にしても、親にしても、立場上「夢なんて持っても叶わないよ」なんていうことを子どもに言ってはいけないんですよね。だからこそ、子どもたちは、絵本などのコンテンツや、実際の人生経験を通して学んでいかないといけないことも多いと思うんです。僕はそういう部分を教えたいですし、「大人も大変なんだよ」とか、「結構いい加減なところもあるんだよ」ということを伝えることで、大人の信用を良い感じに落としたいんです。自分が子どもの頃に親から言われてイヤだったり、理不尽だと感じたことはいまでも覚えているけど、自分がそれを言う側になったことで、親にも事情があったということがわかりました。そういうものを、面白おかしくインフォメーションできたら素敵だなと。子どもというのは、どこかで大人をキタナイと感じる時期があって、それが遅ければ遅いほどこじらせるんですよ(笑)。だからなるべく早いうちに、大人も大したことはないということを学んでほしいし、大人も子どももいい加減な人間同士、優しくし合わないといけないと感じてほしい。そうやって大人と子どもを取り持てるような絵本があるといいなと。絵本を描いていて、さぞかし立派なお父さんなんだろうと言われたりもするのですが、実際はまったくそんなことはないし、親も子もお互いバカだから、10回言い争いをすれば9回は分かり合えないものです。自分自身できなくてイライラしていることを、なんとか上手くできたら良いなという思いで本にしているところがあるんです。

ヨシタケさんの仕事場も見せて頂きました!

Q.もし仮に、ヨシタケさんのすべての経験やキャリアをリセットして、時間や経済的な制約もなかったとしたら、どんなことをしてみたいと思いますか?

ヨシタケ:僕には欲求や野望というものが何もないんですよ。小さいところでニヤニヤしていたいだけなので、いつものメモ帳にひたすら絵を描き続けて、誰にも見せることなく死んでいくと思います。僕のヒーローはヘンリー・ダーガーなのですが、彼には自己実現や表現への欲求がなく、マンションの一室で自分のためだけに創作を続けていたんですよね。ヘンリーはたまたま発見されたから有名になったけど、自分の好きな時間を持ってコツコツと同じことを続けながら人知れず死んでいく人は世界中にたくさんいるはずで、だからこそ彼のストーリーに救われた人もいるはずなんです。それと同じように、世の中には、戦争がなくなる方法を発見したけど、それを発表せずに死んでいった人もいたかもしれないわけで、そういうことを考えるとちょっとワクワクするんです。明日急に戦争がなくなって世界が良くなるなんていうことは思いませんが、世界を変える何かの方法を明日思いつくかもしれないということだけは信じられるんです。それが実行できるかは別にして、そういうアイデアがどんな人の頭にも浮かぶ可能性というのは否定できない。明日には生きるに値することが起こるかもしれないという考えがあると、どんなに気持ちが落ち込んでも持ち直せるところがあるし、僕以外にもそういう考え方を持つことで救われる人がいるかもしれないと思うんです。<インタビュー終わり>

インフォメーション

ヨシタケシンスケさんの最新作『このあと どうしちゃおう』は、ブロンズ新社より発売中。

もっと知りたい人は…

  • 杉浦太一 

    杉浦太一

    株式会社CINRA 代表取締役

    2003年、大学在学中にCINRAを立ち上げる。アート、デザイン、音楽、映画などのカルチャーニュースサイト「CINRA.NET」や、アジアを中心としたバイリンガルシティガイド「HereNow」などの自社メディアの運営、企業や行政のメディア制作・運営、海外情報発信などに従事する。

  • ヨシタケシンスケ 

    ヨシタケシンスケ

    絵本作家

    1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、挿画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表。絵本デビュー作『りんごかもしれない』で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞、『りゆうがあります』で、第8回MOE絵本屋さん大賞1位など、数々の賞を受賞し、注目を集める。