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杉浦太一

株式会社CINRA 代表取締役

ヨシタケシンスケ

絵本作家

今回、カンバセーションズにインタビュアーとして初参加してくれるのは、カルチャーニュースサイト「CINRA.NET」の運営や、さまざまな企業や行政のWebサイト/メディアの制作などを手がけている株式会社CINRAの代表取締役・杉浦太一さん。そんな杉浦さんがインタビュー相手に選んだのは、先日最新作となる『このあと どうしちゃおう』を刊行した絵本作家のヨシタケシンスケさんです。亡くなったおじいちゃんが書き残したノートから、死について想像を巡らす主人公の少年をユーモアたっぷりに描き、各界から大きな反響を集めているヨシタケさんに、杉浦さんがいま聞きたいこととは?

4. 「死」をテーマに選んだのはなぜですか?

ヨシタケシンスケ 

両親の死を経験し、親が生きているうちに死の話をすることの難しとさと重要さを感じていました。同時にそれを自分から言い出すことの難しさも知っていたので、何かきっかけになるものがあるといいな、と。

Q.最新作の『このあと どうしちゃおう』は、これまでの絵本よりも明確なメッセージ性が感じられましたが、ヨシタケさんの中ではどんな思いがあったのですか?

ヨシタケ:『りんごかもしれない』を出した時は、これが最初で最後の絵本になるかもしれないと思っていたので、自分が好きな要素をすべて入れたんです。そうしたら思いのほか受け入れてもらえて2冊目がつくれることになり、その時からすでに死をテーマにした本をつくりたいとは言っていたんです。でも、「いつかやらせてあげるけど2冊目ではやめておこう」と言われて(笑)。結果的にこうして良いタイミングで出すことができたのですが、僕は以前に両親の死を経験し、親が生きているうちに死の話をすることの難しとさと重要さを感じていました。でも、同時にそれを自分から言い出すことの難しさも知っていたので、何かきっかけになるものがあるといいな、と。それは映画でもテレビでも漫画でも何でも良いのですが、お父さんはどう思っているのかということが聞けるきっかけになるようなものがあったら、当時の僕は救われていたはずで、その思いは東日本大震災を経ていよいよ確信に変わりました。冗談半分くらいじゃないと話しにくいテーマだからこそ、なんとかふざけて死の話ができないかというのが、今回の企画の目的でした。

Q.親御さんの死を経験されたのはいつ頃だったのですか?

ヨシタケ:母が亡くなったのは僕が27歳くらいの頃で、もうダメだろうと言われてからが長くて、入退院を繰り返す母を看病する中で家族もボロボロになっていきました。一緒に会話ができる時間は徐々に減っていくし、そうするとお互いにウソしかつけなくなるんです。家族だからこそ、相手のことを思ってウソをつきあうしかないところがあったのですが、母は家族が帰った後に、看護婦さんや同室の患者さんに悩みを打ち明けていたそうで、かわいそうなことをしたなという思いが残りました。とはいえ、死の話をそんな状況で話すことは難しくて、やっぱりお互いが元気な時に話すしかないんですよね。でも、そんな時に話そうとすれば、縁起でもないと言われてしまう。どんな理由であれ、大切な人が亡くなれば、後悔しか残らないんです。その後悔をひとつでもふたつでも減らすためには、笑いながら死について話ができたという記憶が大事になるんじゃないかなと。また、死について色んな世代の人たちが気軽に話し合える機会が増やせれば、死を間近にした老人が8歳の子どもが持っている天国のイメージを聞いて救われたり、20代の若者がお年寄りの死の話から自分の生き方を考えるきっかけをもらったりということがもっと起きてくるんじゃないかなと。

ヨシタケシンスケ『このあと どうしちゃおう』 ヨシタケシンスケ『このあと どうしちゃおう』

Q.物語の中では、死んだおじいちゃんが書き残していた「死んだらどうなりたいか」というノートを見つけた主人公の少年が、自分でも書いてみようとしますよね。ただそれを知るだけではなく、自分だったらどう考えるのかということが大切なんだろうと感じました。

ヨシタケ:僕はよく「隙間が空いている」という言い方をするのですが、感情や経験が当てはめられる内容が書かれていると、自分のこととして読んでくれるんです。何かのヒントやツッコミたくなるようなボケばかりが並んでいると、ついつい自分でも考えてしまうし、そのきっかけがつくれるとうれしいと思っています。ただ、本の中の少年は、僕もやってみようと思ったものの最後のページではもうそれに飽きています(笑)。死について考えることは大事だけど、でもやっぱり飽きるよね、長続きしないよねというリアルな感じも大事だなと。仮にこの少年が3日でやめてしまったとしても、一瞬の煌きのようなものがその子に植え付けられれば、その後が少しずつ変わる気がするんです。現実から空想することは気持ちが良いけど、逆にファンタジーから現実に戻るのは寂しいものです。でも、そういう寂しさや、現実と空想の距離感の埋め方まで含めて創作にしたいと思っています。いまは、ファンタジーをファンタジーとしてしか受け取れない人が多いように感じていて、それは先ほども話したように、世の中に美味しく調理されてから提供されるものが多すぎることが影響していると思っています。でも、面白いものを自分でつくることや、つまらなそうなものでも面白がるということは、もっとできるはずなんです。

Q.死という存在に対して、死んだ後の空想をノートに書き綴っていた物語の中のおじいちゃんは、ある意味ヨシタケさん自身でもあるのかもしれないですね。

ヨシタケ:僕自身がネガティブだからこそ、どうにかして世界を面白いものとして受け取りたいんです。そのためにどんな時でもスケッチ帳を持ち歩いて、世の中に転がっている面白いものをイラストにして拾い集めるようにしています。それはまさにこの本に登場するおじいちゃんそのもので、死が誰よりも怖くて不安だからこそ、どうにかして面白がらないとという思いがあるんです。<続く>

インフォメーション

ヨシタケシンスケさんの最新作『このあと どうしちゃおう』は、ブロンズ新社より発売中。

もっと知りたい人は…

  • 杉浦太一 

    杉浦太一

    株式会社CINRA 代表取締役

    2003年、大学在学中にCINRAを立ち上げる。アート、デザイン、音楽、映画などのカルチャーニュースサイト「CINRA.NET」や、アジアを中心としたバイリンガルシティガイド「HereNow」などの自社メディアの運営、企業や行政のメディア制作・運営、海外情報発信などに従事する。

  • ヨシタケシンスケ 

    ヨシタケシンスケ

    絵本作家

    1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、挿画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表。絵本デビュー作『りんごかもしれない』で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞、『りゆうがあります』で、第8回MOE絵本屋さん大賞1位など、数々の賞を受賞し、注目を集める。