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杉浦太一

株式会社CINRA 代表取締役

ヨシタケシンスケ

絵本作家

今回、カンバセーションズにインタビュアーとして初参加してくれるのは、カルチャーニュースサイト「CINRA.NET」の運営や、さまざまな企業や行政のWebサイト/メディアの制作などを手がけている株式会社CINRAの代表取締役・杉浦太一さん。そんな杉浦さんがインタビュー相手に選んだのは、先日最新作となる『このあと どうしちゃおう』を刊行した絵本作家のヨシタケシンスケさんです。亡くなったおじいちゃんが書き残したノートから、死について想像を巡らす主人公の少年をユーモアたっぷりに描き、各界から大きな反響を集めているヨシタケさんに、杉浦さんがいま聞きたいこととは?

3. ネットの炎上についてどう思いますか?

ヨシタケシンスケ 

世の中の争いごとの9割は言い方に問題があると思っています。同じことを伝えるにしても、どんな例え話を出せば、多くの人たちに理解してもらえるのかを考えていく必要があると感じています。

Q.僕は、主にインターネットの仕事をしているのですが、これまではネットの炎上って、インターネットの中だけの出来事だったと思うのですが、最近ではマスメディアもそこに加わり、いよいよ社会問題になりつつあるように思います。一人の人間が袋叩きに合い、消え去ったら全員が一瞬でその存在ごと忘れ去ってしまうというこの現象に怖さを感じます。ヨシタケさんはこれをを、どう見ていらっしゃいますか?

ヨシタケ:やっぱり単純に怖いと思いますね。誰かひとりが「あいつが悪い!」と言うと、「じゃあ自分も」と一緒になって叩く風潮がありますが、そこに乗っかる人たちは自分で何かを考えているわけではないんですよね。最大の問題は、すでに調理された状態のコンテンツが氾濫している世の中で、自分で判断する能力が全体的に低下していることにあるのだと思います。みんなが言っていることが本当のことなのかを考える余裕を持てないまま、他人の意見に反射的に対応しているだけのような気がします。でも、その人たちが悪いかと言えば、発言する側にも問題はあるように思えます。インターネットの恐ろしいところは、コミュニケーションにおけるプロと素人の見分けがつかないところで、それによって収集がつかないところまできているように感じます。いまは、ネット上で極端な発言をすれば、それをメディアが取り上げて、どんどんエスカレートしていく仕組みが出来上がっていることも影響しているのだと思います。僕は、世の中の争いごとの9割は言い方に問題があると思っています。同じことを伝えるにしても、どんな例え話を出せば、言葉狩りをする人たちを刺激せずに、多くの人たちに理解してもらえるのかというなどを考えていく必要があるんじゃないかと感じています。

ヨシタケシンスケ『もう ぬげない』

Q.発言する側の伝え方を洗練させていく必要があるということですよね。この手の話題になると、受け手側がもっと寛容にならないといけないというような少しお説教臭い話に向かいがちなところがありますが、ヨシタケさんの立場は少し違うようですね。

ヨシタケ:そんな寛容にはなれないよね、と考えてしまうんです。自分はおそらく性悪説で、現在のようなシステムをつくる人、それを利用する人がいる限り、お互いが良かれと思って行動していても、悪い状況が生まれてしまうことはあると思います。ある意味逃げの姿勢なのかもしれませんが、炎上させる人がいるのであれば、発信する側がそうさせない方法を考えるしかないと思うんです。「あいつの発言、なんか叩きにくいんだよね」と言われるような伝え方を探していくしかないし、言葉狩りをする人たちのイライラの矛先を違うところに向けられるスケープゴートのようなものを用意しないといけないんじゃないかなと。

Q.何かを叩くということも、その人にとっては正義を表明する行為なわけですもんね。

ヨシタケ:やっぱり自分が好きなことを言えることは気持ちが良いですし、その快楽というのは、寛容になるならないの話とは別で、抑えようがない感情のようなものなんだと思うんです。例えば、新聞などのように、ものを言うべき人とそうじゃない人が明確に分かれている世界に戻ろうとすることは、車は便利だけど人を轢き殺すかもしれないから乗るのはやめようというのと同じくらい難しいことですよね。テクノロジーというのはそういうものなので、事故処理の精度を少しでも上げていくしかない。そこで役立つのがユーモアだったり、架空の物語だったりするのかなと思います。ユーモアというのは国や文化によって線引きが難しいものですが、全人類共通のユーモアというものは必ずあるだろうし、お互いを傷つけない共通点を探して、分かり合えないもの同士が同じ方向を向くための座席の形のようなものを提案していく作業というのが、人にものを伝えていく人間にとって大切なのかなと。

ヨシタケシンスケ『このあと どうしちゃおう』 ヨシタケシンスケ『ぼくのニセモノをつくるには』

Q.まさにヨシタケさんの作品には、あえて誰も明言しないけど、どこかでみんなが感じていたことを伝えてくれる感覚があります。

ヨシタケ:僕の絵本には「あるあるネタ」が書かれていて、それ以上でもそれ以下でもないと思っています。人というのはお互いにわかり合えないものだからこそ、共通点が見つかるとうれしいし、安心できる。「スネをぶつけると痛いよね」とか「お腹が空くとションボリするよね」みたいな、ある条件がそろった時に誰にでも起こる現象というものに興味があるし、そういうことを本の中に散りばめられたらうれしいと思っています。<続く>

インフォメーション

ヨシタケシンスケさんの最新作『このあと どうしちゃおう』は、ブロンズ新社より発売中。

もっと知りたい人は…

  • 杉浦太一 

    杉浦太一

    株式会社CINRA 代表取締役

    2003年、大学在学中にCINRAを立ち上げる。アート、デザイン、音楽、映画などのカルチャーニュースサイト「CINRA.NET」や、アジアを中心としたバイリンガルシティガイド「HereNow」などの自社メディアの運営、企業や行政のメディア制作・運営、海外情報発信などに従事する。

  • ヨシタケシンスケ 

    ヨシタケシンスケ

    絵本作家

    1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、挿画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表。絵本デビュー作『りんごかもしれない』で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞、『りゆうがあります』で、第8回MOE絵本屋さん大賞1位など、数々の賞を受賞し、注目を集める。