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杉浦太一

株式会社CINRA 代表取締役

ヨシタケシンスケ

絵本作家

今回、カンバセーションズにインタビュアーとして初参加してくれるのは、カルチャーニュースサイト「CINRA.NET」の運営や、さまざまな企業や行政のWebサイト/メディアの制作などを手がけている株式会社CINRAの代表取締役・杉浦太一さん。そんな杉浦さんがインタビュー相手に選んだのは、先日最新作となる『このあと どうしちゃおう』を刊行した絵本作家のヨシタケシンスケさんです。亡くなったおじいちゃんが書き残したノートから、死について想像を巡らす主人公の少年をユーモアたっぷりに描き、各界から大きな反響を集めているヨシタケさんに、杉浦さんがいま聞きたいこととは?

2. 絵本を通して何を伝えたいのですか?

ヨシタケシンスケ 

人生には回り道もありますし、思い通りいかないことも多いし、夢だってなかなか叶わない。そういう身も蓋もないけど、リアルなことというのをどうにか面白く表現したいんです。

Q.最初の絵本『りんごかもしれない』では、どんなことを表現したかったのですか?

ヨシタケ:絵本は小さい頃からたくさん読んでいて好きだったのですが、いざつくる側になると、「子どもに何を与えるべきか?」とか「そもそも絵本とは何か?」と考え始めてしまい、自分に言えることなんて何もないんじゃないかと…。ただ、編集者の方がいくつかお題を与えてくれて、その中のひとつに「色んな目線でりんごを見る絵本」というものがあったんです。そこから、りんごというモチーフをさまざまな角度から見ることで、子どもたちに色々な視点を養ってもらうということを目的につくったのが、自分にとって最初の絵本でした。実際に絵本を描いてみて、それまでやっていたイラストの仕事と同じように、お題があれば絵本も描けるということがわかると同時に、(絵本は)ウサギが出てきてオオカミにいじめられたりするようなわかりやすい話がないとダメなんじゃないかというステレオタイプなイメージもなくなりました。絵本というのは、実は非常に奥行きがある表現媒体で、子どもが読むことさえできれば、やってはいけないことはそんなにないんだということを教えてもらえた気がします。

ヨシタケシンスケ『りんごかもしれない』 ヨシタケシンスケ『りんごかもしれない』 ヨシタケシンスケ『りんごかもしれない』

Q.「こういうことをしてもいいんだ」という気づきは、大学時代の明和電機さんの話にも繋がりそうですね。

ヨシタケ:そうですね。僕には姉が1人、妹が2人いるのですが、そこで自分の意見を言う利点は何もないんですよ。だから、自分で何かを決めたことがないばかりか、反抗期すらなくて。周りの友達が「うるせえババア!」とか言っている時に、僕は親から言われたとおりに勉強をしていて、自分でもこれはいつか壊れるんじゃないかと感じていました。そうやって生きてきたので、とにかく自分がミスをして怒られたりすることが嫌で、そうしないようにすることが人生最大の目標と言えるほどでした。いまでも場を荒立てないということは自分にとって大切なことで、いわゆる表現者とはかけ離れた、非常に役人的、保守的な考えの持ち主なんです。だからこそ、誰かに背中を押してもらう必要があるし、どうすれば怒られない表現にできるか、事を荒立てずに言いたいことを伝えられるかということが、自分の表現の方法論になっているんです。

Q.僕は、ヨシタケさんの絵本を通して、断定しないことの大切さということに気付かされたし、絵本に触れた子どもたちにしても、何かをひとつに決めなくても良いんだと安心できるような内容になっているんじゃないかと感じます。

ヨシタケ:僕は、玉虫色の表現が大好きなんです(笑)。自分は臆病で、ネガティブな考え方をしてしまうから、どんなことにおいても断定はできないし、責任を負いたくないという逃げ腰の部分があるんです。だから将来についてもはっきり目標を定めずに、その場で与えられた条件に対して応えていくというのが僕のスタンスなんです。でも、それによって結果として面白くなったり、自分だけでは到達できないところに行けることがあって、それが絵本であり、結婚や子育てだったりします。人生には回り道もありますし、思い通りいかないことも多いし、夢だってなかなか叶わない。そういう身も蓋もないけど、リアルなことというのをどうにか面白く表現したいという思いがあるんです。自分が子どもの頃に「夢は何か?」「将来は何をしたいのか?」と何度も聞かれて、自分の意見がないことにコンプレックスを感じていたからこそ、当時の自分が救われるような絵本をつくりたいんです。おそらく、僕の他にも100人中3、4人くらいはそういう子どもがいるはずで、僕の絵本はそういう子たちに向けて描いているところがあるんですが、それが思いのほかたくさんの人たちに面白がってもらえているようで、それが大きな驚きなんです。<続く>

インフォメーション

ヨシタケシンスケさんの最新作『このあと どうしちゃおう』は、ブロンズ新社より発売中。

もっと知りたい人は…

  • 杉浦太一 

    杉浦太一

    株式会社CINRA 代表取締役

    2003年、大学在学中にCINRAを立ち上げる。アート、デザイン、音楽、映画などのカルチャーニュースサイト「CINRA.NET」や、アジアを中心としたバイリンガルシティガイド「HereNow」などの自社メディアの運営、企業や行政のメディア制作・運営、海外情報発信などに従事する。

  • ヨシタケシンスケ 

    ヨシタケシンスケ

    絵本作家

    1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、挿画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表。絵本デビュー作『りんごかもしれない』で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞、『りゆうがあります』で、第8回MOE絵本屋さん大賞1位など、数々の賞を受賞し、注目を集める。