インタビューアーにスポットを当てる新感覚インタビューサイト

RSS

Qonversations Twitter

新津保 建秀

写真家

ドミニク・チェン

株式会社ディヴィデュアル

今回カンバセーションズに初登場となるのは、企業のための広告や映像の撮影、建築、文芸、音楽、情報デザインなど領域を横断したドキュメントと共同作業を多く手がけている写真家の新津保建秀さん。そんな新津保さんがインタビュー相手に選んだのは、インターネット上における表現活動やコミュニケーション、コミュニティのあり方などに関する数々の著作で注目を集めるドミニク・チェンさん。スマートフォンアプリの開発などを行う株式会社ディヴィデュアルの設立メンバーでもあり、新たな視覚共有アプリをまもなくリリースするというドミニクさんに、新津保さんが聞きたいこととは?

3. インターネットの魅力は何ですか?

ドミニク・チェン 

インターネットを通して、世界中の映像や音楽に触れて、世界の面白さを改めて感じられたし、L.A.の学生寮の片隅から、自分の思いの丈をぶつけることができたんです。

Q.ドミニクさんがインターネットに触れるようになったのはいつ頃からですか?

ドミニク:大学はUCLAのデザイン系学科に進んだのですが、当時はちょうどグーグルなどが出てきて、ワークステーションにはPhotoshopやIllustratorが完備されていたにも関わらず、みんなのお目当てはインターネットでした。インターネットを通して、世界中の映像や音楽に触れて、世界の面白さを改めて感じられたし、L.A.で開催され、衝撃を受けた『SUPER FLAT』展のキュレーションをしていた村上隆さんが当時、「芸術道場」というネット掲示板を運営していたんですね。L.A.の学生寮の片隅から、「芸術とゲーム」「芸術とマンガ」などのお題に対して、自分の思いの丈をぶつけていたのですが、それが面白がられて、最高段位を頂くことができ、芸術道場師範代の楠見清さんのお声がけで『美術手帖』で展評や論考などを書かせて頂くようになったんです。現代美術には、日常生活では遭遇できないようなつくり手の思考がドロッと出ているような生々しさがあるし、色んなものがゴチャゴチャしながらも歴史とルールがしっかりあって、混沌と秩序の間で1mmでも人類を前に進めていこうとしている感じがとても面白かったんです。

ドミニク・チェン『インターネットを生命化する プロクロニズムの思想と実践』 ドミニク・チェン『オープン化する創造の時代』 ドミニク・チェン『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック』

Q.ドミニクさんの書かれたテキストは色んなところで目にしていて、シャープな文体もとても印象的だったのですが、こうしてお話を聞いていると、色々なことが腑に落ちてきました(笑)。

ドミニク:現代美術の世界でひとつ不満があったのは、なかなかコンピューターの話をできる人がいないということでした。ファミコンから始まり、ネットに連なっていくコンピューターの生々しさみたいなものがあったのですが、最近は少しずつ変わってきているとはいえ、当時はコンピューターやメディアアートは、現代美術とは別物として扱われていました。UCLAにいた周りの連中なんかは、光センサーをつかってDJソフトをハックするようなことをしていたし、ステラークという有名なオーストラリア人のメディアアーティストは、身体にIPアドレスを割り当て、ライブを見ている人がアドレスを入力すると特定の部位に電流が流れるというパフォーマンスなどをしていて、そういうものがとてもリアルに感じていました。そこから徐々にコンピューターメディア周りのアートフォームに興味を持ち、2003年に大学を卒用した後にICCに就職しました。

Q.その後会社を設立し、現在はアプリ開発などを行っていますが、そこにはどんな経緯があったのですか?

ドミニク:2005年頃から、ホワイトキューブの中の狂気よりも、シリコンバレーの狂気の方が面白いと感じるようになったんです。いまでは都市伝説的な話になっていますが、ドイツのART+COMというアート集団が、90年代末に現在のGoogle Earthのような作品をつくったことがあって、その展示を見て触発された人が、その後実際にGoogle Earthをつくったという話なんです。その真偽は別として、メディアアート界がデモンストレーション的な作品で興奮していたものが、グーグルフェイスブックによって社会実装されてしまったと考えると、個人の狂気よりも、むしろ情報社会の方が狂気じみた進歩をしているんじゃないかと。この生々しさをキープするためには、自分もそっちに行く必要があるんじゃないかと考えるようになり、その頃に意気投合したメディアアーティストの遠藤拓己と一緒に会社をつくったんです。僕にはずっと、ピュアリー・デジタルでも、ピュアリー・フィジカルでもない宙ぶらりんのリアリティがあって、常にそれを肌で感じられる場所に身を投じてきている気がします。<続く>

インフォメーション

ドミニクさんが開発した視覚共有アプリ「Picsee」のダウンロードはこちらから。

もっと知りたい人は…

  • 新津保 建秀 

    新津保 建秀

    写真家

    映像、写真、フィールドレコーディングによる制作を行う写真家。近年の活動に、雑誌『思想地図β』誌上における、福島県およびチェルノブイリの取材、代官山ヒルサイドテラスと周辺地区のドキュメント《Hillside Scenery》などがある。著書に『\風景』(角川書店)、『Rugged TimeScape』(池上高志との共作、フォイル)、『Spring Ephemeral』(フォイル)など、関連書籍に『建築と写真の現在』(TNプローブ)、『MTMDF』(HAKUHODO DESIGN)などがある。

  • ドミニク・チェン 

    ドミニク・チェン

    株式会社ディヴィデュアル

    1981年東京生まれ。フランス国籍。博士(東京大学、学際情報学)。NPO法人コモンスフィア理事。株式会社ディヴィデュアル共同創業者。主な著書に『インターネットを生命化する〜プロクロニズムの思想と実践』(青土社、2013年)、『オープン化する創造の時代〜著作権を拡張するクリエイティブ・コモンズの方法論』(カドカワ・ミニッツブック、2013年)、『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック〜クリエイティブ・コモンズによる創造の循環』(フィルムアート社、2012年)。