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坂部三樹郎

ファッション・デザイナー

猪子寿之

チームラボ代表

今回、インタビュアーとしてカンバセーションズに参加してくれるのは、ファッション・デザイナーとして活躍する坂部三樹郎さん。自身のブランド「ミキオサカベ」はもちろんのこと、さまざまなジャンルのクリエイターとのコラボレーション・プロジェクト「最前ゼロゼロ」など、ファッションという枠にとどまらない活動を続けている坂部さんがインタビューするのは、”ウルトラテクノロジスト集団”チームラボの代表・猪子寿之さんです。先日放送されたTBS『情熱大陸』も話題になるなど、IT業界の異端児として、いまさまざまな分野から注目を集めている猪子さんに、坂部さんが聞きたいこととは?

3. 西洋と東洋は何が違うんですか?

猪子寿之 

平和というのが、西洋の客観思想からすると駆逐につながるけど、東洋、少なくとも日本では妥協点の模索ということになってくると思うんですよ。

Q.ファッションにしてもテクノロジーにしても、これまで主流だった西洋的な思想から、これからは東洋思想の方に近づいてくるということが言われています。猪子さんはその辺をどう考えていますか?

猪子:西洋というのは、客観思想が根本にあるんですよ。もっと言うなら、「絶対的な何かがある」と信じている思想ですよね。宗教もそういうことだろうし、ハリウッド映画を見ても、主人公が客観的な正義で、そこに客観的な悪が登場してきて、正義が悪を駆逐しますよね。「駆逐こそが秩序」という考えがベースにある。その思想は、産業革命や自然科学とは相性が良かったんですね。一方で日本は、世界は主観的でしかないと捉えていたと思うんです。たとえば、「もののけ姫」のタタラ場の女王には、タタラ場としての正義があり、もののけ姫には、もののけの森としての正義があって、客観的な正義はどこにもない。平和というのが、西洋の客観思想からすると駆逐につながるけど、東洋、少なくとも日本では妥協点の模索ということになってくると思うんですよ。

Q.そうした日本の主観的な思想の方が、いまの社会とは相性が良いと。

猪子:マスメディア中心だった頃の社会は、客観思想とスゴく相性が良かったと思うんです。でも、ネットが出てきて、誰もが情報発信できるようになって状況が変わった。ネットが普及する前に「世界の正義のために」と言ってアメリカがクウェートに行った時はみんな拍手したけど、2000年以降にアメリカがイラクに行く際に同じことを言った瞬間、違和感を感じた。ネットが普通になって、それぞれの常識や立場があり、意見も情報も主観的である状態が当たり前になったから、90年代には通用した思想が、時代に合わなくなっちゃったんです。あと、西洋は「世界は有限だ」と思ってきたところがあって、それも東洋との大きな違いなんですよ。

チームラボ「秩序がなくともピースは成り立つ」

Q.例えば、資源などの話ですか?

猪子:それもわかりやすい例ですよね。学生の頃に、需要が増えると価格が上がり、供給が増えると価格が下がるというグラフを習いましたよね。もちろんそういう例もあるけど、一方でそうじゃない世界もあって。普通需要が増えると、その分供給も増えるじゃないですか。実はそうすると、コスト構造が改善されて、結果的に価格が下がるんですよ。つまり、世界が有限だという考え方からすれば、需要が増えれば価格も上がるけど、世界が無限だと考えると、需要が増えると価格は下がるんです。

無限概念と有限概念ではインセンティブが変わるから、人々の行動も大きく変わるんですよ。

Q.資源を無限と考えることもできるんですか?

猪子:例えば、昔は木材が最大の資源でしたよね。西洋の場合は、木は有限だと考えるから奪い合いになるんだけど、日本は切ったら植えればいいじゃんという考え方だった。つまり無限ですよね。2000年前の地球は、70%くらいが森だったんですよ。でも、例えばいまイギリスの森は、国土の何%だと思いますか? たった6、7%なんですよ。要は有限概念というのは、早く取った方が得なモデルなんです。一方で日本は、いまも国土の70パーセントが森。京都なんか、平安京の時代に1000年間も都で、当時世界のトップ10に入る都市だった。それがいまでもビックリするくらい周りが森じゃないですか。そんなのヨーロッパではありえない。無限概念と有限概念ではインセンティブが変わるから、人々の行動も大きく変わるんですよ。<続く>

インフォメーション

チームラボが空間設計と什器を手がけ、MIKIOSAKABEのアイテムも取り扱う渋谷パルコ内の「ぴゃるこ」の情報はこちらから。チームラボは、書家・紫舟さんとの新作インスタレーション「Love Letter Project '12」を10月13、14日に展示予定。さらに、10月30日~11月5日に開催される「東京デザイナーズウィーク」では伊藤若冲をテーマにした作品などを出展予定。

もっと知りたい人は…

  • 坂部三樹郎 

    坂部三樹郎

    ファッション・デザイナー

    2006年アントワープ王立芸術アカデミーファッション科首席卒業。07-08年秋冬シーズンのパリコレクションにプレゼンテーションという形で公式参加。08年春夏シーズンから東京とパリを軸に、ミラノ、ニューヨーク、バルセロナ、ベルリンなど各都市でコレクションを発表。 その後も、現代アーティスト・Chim↑pomや秋葉原のアイドル・でんぱ組.incなどとコラボレートしたショーなどで注目を集める。次世代の人間像を模索しながら、服を作るだけではないこれからの時代のファッションを提案している。

  • 猪子寿之 

    猪子寿之

    チームラボ代表

    ウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」代表。1977年徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。大学では確率・統計モデルを、大学院では自然言語処理とアートを研究。チームラボは、プログラマ・エンジニア、数学者、建築家、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、CGアニメーター、絵師、編集者など、情報化社会のさまざまなものづくりのスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。