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勅使河原一雅

アートディレクター
ウェブデザイナー

原 和彦

臨済宗常福寺住職

今回カンバセーションズに初登場するのは、グラフィックとプログラミングを駆使した独自の作品世界をインタラクティブメディア上で発表し、国内外から高く評価されるクリエイター、qubibiでの活動でも知られる勅使河原一雅さん。そんな勅使河原さんがインタビュー相手として指名したのは、神奈川県相模原市にある臨済宗建長寺派「常福寺」の住職・原 和彦さん。禅寺でありながら、現代音楽、舞踏、映像などの分野で活動するさまざまな表現者を招いて開催される「常福寺ライブ」を年に2回開催している原さんに、昨年同ライブに出演した経験を持つ勅使河原さんが、いま聞きたいこととは?
※このインタビューは、雑誌「QUOTATION」との共同コンテンツです。3月24日発売の『QUOTATION』VOL.18の誌面でもダイジェスト版をご覧になれます。

5. 現在と過去の違いは何ですか?

原 和彦 

本質的な価値が認められている過去の作品に対し、現在の作家の作品は本質的かどうかを見極められないところがあるから不安です。でも、不安というのは面白いことでもあると思っています。

Q.絵や彫刻というのはモノとしてずっと残っていくものですよね。例えば、ひとりの作家が気持ちを込めて作った絵というものには、何かがまとわりつくものなのかなと思う時があります。僕がデジタルで作品をつくっているからこそ考えることなのですが、そこにはデジタルでは勝てない何か特別なものがあるのかなと感じたりするんです。

原:私は、丁寧に時間をかけて作ったものであれば人の心を打つかというと、そうとは限らないと思っています。逆に短時間でさっと描いたような線が人を感動させることもあるだろうし、どちらかというと作品に乗ってくるものというのはそうした手間暇よりも、その人の精神性の部分ではないでしょうか。もちろん、人によっては時間をかけたものに深い意味を感じる方もいらっしゃるだろうし、私は少し冷たい見方をしているのだと思いますが、どうしても精神性の方に重きを置いてしまうところがありますね。

DRIFTER by qubibi (Taste of NURO DEVILMAN) DRIFTER by qubibi (Taste of NURO DEVILMAN) DRIFTER by qubibi (Taste of NURO DEVILMAN)

Q.それを聞くと少し安心できます(笑)。これもよく考えることなのですが、原さんは、過去の作品と現在進行形の作品をそれぞれどう捉えていらっしゃいますか?

原:過去の作品は安心して見られるところがあります。私は骨董なんかも好きなのですが、こういうものはすでに評価が定まっていますよね。時代を越えて価値が認められていたり、人の心を打つというのは、そこに本質的な価値観があるからだと思うんです。一方で、現在の作家の作品は、それが本質的なものなのかどうかを自分では見極められないところがあるし、そういう意味では不安ですね。でも、不安だからつまらないのかというとそういうことではなく、不安というのは面白いことでもあると思っています。仏教には「煩悩即菩提」という言葉があって、これは迷いや苦しみは、そのまま救いでもあるという意味なんです。もし悩みや苦しみがすべて排除されてしまったら、非常につまらない世界になるでしょうし、不安や迷い、悲しみがあるからこそ、生きる歓びもあると思うんです。

Q.たしかに不安があった方が面白いです。

原:「大疑団を打破して、大信根を至る」と言われているように、本当に信じられるものは、本当に悩まないと得られないし、中途半端な悩みは中途半端な信心、信頼にしかならないものです。先ほど、花が好きだという話をしましたが、生花をする時にも花屋さんで買った花材というのはつまらなくて使えないんですね。逆に枝が曲がったり、途中で折れているものの方が魅力的に感じるのですが、これはつまり、現在という時間の中で、過去の苦しみを受け入れたり、楽しむということだと思うんです。大きな苦しみを味わった方がいいと言うと説教っぽくなってしまうし、いま現在苦しい思いをしている当事者に対してはそんなことは言えませんが、人生で最も苦しかった時期が、振り返ってみると一番大切な時間だったということはよくあります。でも、その一方で、一休さんは死ぬ時に、俺は死にたくないと言ったそうなんですが、それもまた素晴らしいことだと思うんです。私も死は受け入れたくないし、最後まで生かしてくれとすがりつきながら死んでいきたいですね。<インタビュー終わり>

インフォメーション

八木美知依トリオが出演する「常福寺ライヴ “be” ~死を想え」が4月5日に相模原・臨済宗常福寺にて開催予定。
3月31日まで銀座・クリエイションギャラリーG8で開催中の「光るグラフィック展」に勅使河原一雅さんが出展中。また、最新作「DRIFTER」は、devilman.nuro.jp/drifter/で公開中。

もっと知りたい人は…

  • 勅使河原一雅 

    勅使河原一雅

    アートディレクター
    ウェブデザイナー

    アートディレクター/ウェブデザイナー。Webサイトやゲーム等、インタラクティブメディア上での作品制作を行っている。D&ADやカンヌ広告祭、メディア芸術祭など国内外にて受賞多数。

  • 原 和彦 

    原 和彦

    臨済宗常福寺住職

    臨済宗常福寺住職第27代住職。自ら企画・運営を手がけ、1992年にスタートした「常福寺ライブ」では、養老孟司、ジム・オルーク、松田美由紀、ロバート・ハリス、大友良英らさまざまな文化人、クリエイターらを招き、舞踏、現代音楽、講演会などを開催している。