インタビューアーにスポットを当てる新感覚インタビューサイト

RSS

Qonversations Twitter

勅使河原一雅

アートディレクター
ウェブデザイナー

原 和彦

臨済宗常福寺住職

今回カンバセーションズに初登場するのは、グラフィックとプログラミングを駆使した独自の作品世界をインタラクティブメディア上で発表し、国内外から高く評価されるクリエイター、qubibiでの活動でも知られる勅使河原一雅さん。そんな勅使河原さんがインタビュー相手として指名したのは、神奈川県相模原市にある臨済宗建長寺派「常福寺」の住職・原 和彦さん。禅寺でありながら、現代音楽、舞踏、映像などの分野で活動するさまざまな表現者を招いて開催される「常福寺ライブ」を年に2回開催している原さんに、昨年同ライブに出演した経験を持つ勅使河原さんが、いま聞きたいこととは?
※このインタビューは、雑誌「QUOTATION」との共同コンテンツです。3月24日発売の『QUOTATION』VOL.18の誌面でもダイジェスト版をご覧になれます。

3. お経って一体なんですか?

原 和彦 

仏教的な信仰になった頃からは、意味よりも「行」としての意味合いが深まっていったのだと思います。お経を唱えることは、自分の信心をつくっていく行為なんです。

Q.お経というのは、当然そこに書かれていることに意味があると思うのですが、いまはそれを知らずに読み上げていくところがありますよね。昔の人は意味をわかって読んでいたんでしょうか?

原:日本に仏教が入ってきた500年代は、学問としての側面も大きかったので、もちろんその意味を理解していたと思いますが、仏教的な信仰になった頃からは、意味よりも「行」としての意味合いが深まっていったのだと思います。現代社会は科学的なことしか信じられなくなってしまったという話をしましたが、本当に信じられる空間をつくるためには、「行」をする必要があるんです。例えば、檀家になると何回もお寺に通ってお坊さんに挨拶したり、お気持ちを届けたりしないといけないので、普通に考えたら霊園に料金を振り込むだけの方が楽だし、便利なはずなんです。でも、ご本尊様にお参りするということを10年続けると、本堂の前で手を合わせた時にホッとできる空間が生まれるんです。10年続けなければその感覚は生まれないし、それがひとつの信心の素のようなものです。お経を唱えることも同じで、自分の信心をつくっていく行為なんです。

Q.僕が小さい頃、うちではお経を唱える習慣があったんですね。自分ではよくわからないまま、言われるままお経を唱えていました。ある時期から面倒になってその習慣はなくなったのですが、あの時に膨大な時間をかけてしていたことは、いま自分の中にどのような形で残っているんだろうとたまに考えたりするんです。

原:普段は保険のように自分の中にしまい込まれていて、なかなか顔を出してこなかったとしても、もし今後何かに追い込まれてしまった時などに、信心というものが心の働きとして出てくるかもしれませんね。繰り返しになりますが、信じる世界というのは自分がつくり上げていくしかないんですね。逆に人というのは、説明されるほど信じなくなってしまうところがある。説明は、反発や疑いを生み出すものです。言葉があるとどうしてもその裏を見ようとして信心から離れていく。一方で自分で行や儀式をするということは、疑いようのない世界を作り上げていくことです。だから、私はなるべく説明しないようにしています。

過去に行われた「常福寺ライブ」の様子。 現代音楽 金沢健一氏(彫刻・演奏)、永田砂知子氏(演奏) 過去に行われた「常福寺ライブ」の様子。 ダンス 山田せつ子氏

Q.それは「常福寺ライブ」の話にも通じることですね。

原:説明をすることで目の前のものが見えなくなってしまう場合があります。例えば、私は絵画展などに行っても、作品の横にある説明書きは絶対に見ないんです。あれを見てしまうと影響されて、絵が見えなくなってしまうからです。「常福寺ライブ」にしても、出演して頂く方には、具体的な言葉が入るものは避けてほしいというお願いをしていて、なるべく言葉を排した世界の中で形をつくっていくということを意識しているんです。<続く>

インフォメーション

八木美知依トリオが出演する「常福寺ライヴ “be” ~死を想え」が4月5日に相模原・臨済宗常福寺にて開催予定。
3月31日まで銀座・クリエイションギャラリーG8で開催中の「光るグラフィック展」に勅使河原一雅さんが出展中。また、最新作「DRIFTER」は、devilman.nuro.jp/drifter/で公開中。

もっと知りたい人は…

  • 勅使河原一雅 

    勅使河原一雅

    アートディレクター
    ウェブデザイナー

    アートディレクター/ウェブデザイナー。Webサイトやゲーム等、インタラクティブメディア上での作品制作を行っている。D&ADやカンヌ広告祭、メディア芸術祭など国内外にて受賞多数。

  • 原 和彦 

    原 和彦

    臨済宗常福寺住職

    臨済宗常福寺住職第27代住職。自ら企画・運営を手がけ、1992年にスタートした「常福寺ライブ」では、養老孟司、ジム・オルーク、松田美由紀、ロバート・ハリス、大友良英らさまざまな文化人、クリエイターらを招き、舞踏、現代音楽、講演会などを開催している。