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大和田良

写真家

平野啓一郎

小説家

大和田良さんは、雑誌、広告媒体などで活動する傍ら、写真集や展覧会などでコンセプチュアルな作品を発表し、写真界の次世代を担う存在として期待されている、いま注目の写真家です。そんな彼が、「いま話を聞きたい人」として名前を挙げてくれたのは、京都大学在学中に『日蝕』で芥川賞を受賞し、その後も数々の注目作を世に送り出してきた小説家・平野啓一郎さん。実はこの平野さん、東川町国際写真フェスティバルで選考委員を務めるなど、写真への造詣が深いことでも知られているんです。そんな平野さんに、写真のことから小説のことまで、大和田さんが独自の視点でインタビューを行いました。

5. ファンを増やすにはどうすればいいですか?

平野啓一郎 

どの分野においても、作家同士の交流があって盛り上がっている場所が明確に外に発信されていると、世間も興味を持ってくれるだろうし、作品にアクセスしてくれる人も増えてくるんじゃないかなと。

Q.小説を読む人などと比べても、写真を見る人の絶対数というのはまだまだ少ないと思います。写真を見る人を増やしていくにはどうすればいいと思いますか?

平野:写真にしても、小説にしても、興味を持ってくれる人は、ほっておいても増えないと思うので、ある程度そういう人たちを作っていく意識が必要だと思っています。最近、保育園の先生と僕ら両親の間で娘の様子を書いたノートをやり取りしているんですが、それを大事そうに受け渡ししているのを見た娘が、スゴく関心を示すようになったんです(笑)。まさに、ルネ・ジラールの「欲望の三角形」なんですが、素直に面白がったり、感動している人たちがそこにいることで、自分も覗いてみたくなるという人間の心理は大事だと思うんです。それで最近、文学関係者のサークルみたいなものを始めて、1、2ヶ月に一度、面白い仕事をしている人たちで集まって親睦を深めるということをしています。芸術の歴史を振り返ってみても、例えばピカソモディリアーニショパンリストなど、同時代のアーティストが密にコンタクトを取っていた例は多い。それは自分の創作にも良い影響を及ぼすと思うし、文学、写真、音楽などどの分野においても、作家同士の交流があって盛り上がっている場所が明確に外に発信されていると、世間も興味を持ってくれるだろうし、作品にアクセスしてくれる人も増えてくるんじゃないかなと。

東川町国際写真フェスティバルで選考委員を務めている平野啓一郎さん。

Q.写真の世界で言うと、中平卓馬さんらの写真家が60年代に展開していた同人誌『プロヴォーク』や、それ以前の細江英公さんらによる『VIVO』などの活動には近いものがあるかもしれないですね。そうした活動体としての広がりとは別に、作品そのものの広がりという部分で考えていることはありますか?

平野:文学の世界では本が売れなくなってきているし、読者が何を求めているのかもわからなくなっています。そのなかで部数を伸ばそうとした時に、マーケティングをして、売れ線のテーマを考えるということくらいしかできていないのが現状です。マーケティングから今の人間の何かが見えてくるのは確かだと思うけど、ウケるからと、気の進まないテーマを書くのは作家としてできないし、仮にそれをしたところで読者が喜ぶかというと、むしろそういうことには敏感で、すぐに察知されてしまう。もちろん、そんなリーダビリティを考えずとも、自分が書いたものを良いと思って読んでくれる人たちというのが、僕にとって一番大切な読者だし、その人たちに向かって書き続けることも大事ですが、そういう読者と向き合うだけではなくて、彼らのこともひっくるめて、こういう人たちがいるんだということを、外側に向けて発信していくというのが、次の段階の理想なんじゃないかと思っています。

Q.これまでの小説が、本そのものを通して作家と読者のコミュニケーションが成立していたものだとしたら、これからは、読者から先の外の世界に向けて、作品が独立して広がっていくというイメージが平野さんの理想ということですか?

平野:そうですね。ただその時に「話題になる」ということを字義通りに考える必要があると思うんですね。ワッと騒がれることが話題になることだと思われがちですが、文字通り考えると「話」の「題」になるということなので、ふたりの人間が会っているときにそれについて話すようなものが、本来の意味で話題になるものということだと思うんですね。その本について話し合うことで自分を表現ができるし、相手のことも深く知ることができる。そういう会話の中心に作品が存在できるかどうかが大切だし、そうしたコミュニケーションの核心にアクセスできるものでありたいなと思っています。<インタビュー終わり>

インフォメーション

平野啓一郎さんが現在『モーニング』で連載中の長篇小説『空白を満たしなさい』の単行本は講談社より11月刊行予定。 大和田良さんは現在、11月刊行を目指し、写真雑誌『ShINC.MAGAZINE』を編集中。

もっと知りたい人は…

  • 大和田良 

    大和田良

    写真家

    1978年仙台市生まれ。東京工芸大学大学院芸術学研究科メディアアート専攻修了。主な著書に『prism』(青幻舎)、『ノーツ オン フォトグラフィー』(リブロアルテ)、『FORM』(深水社)、『伝わる、写真。」(マイナビ)等。2011年、日本写真協会賞新人賞受賞。

  • 平野啓一郎 

    平野啓一郎

    小説家

    1975年愛知県生れ。京都大学法学部卒。1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。以後、2002年発表の大長編『葬送』をはじめ、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。著書は『滴り落ちる時計たちの波紋』、『決壊』、『ド-ン』、『かたちだけの愛』『モノローグ(エッセイ集)』、『ディアローグ(対談集)』など。