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大和田良

写真家

平野啓一郎

小説家

大和田良さんは、雑誌、広告媒体などで活動する傍ら、写真集や展覧会などでコンセプチュアルな作品を発表し、写真界の次世代を担う存在として期待されている、いま注目の写真家です。そんな彼が、「いま話を聞きたい人」として名前を挙げてくれたのは、京都大学在学中に『日蝕』で芥川賞を受賞し、その後も数々の注目作を世に送り出してきた小説家・平野啓一郎さん。実はこの平野さん、東川町国際写真フェスティバルで選考委員を務めるなど、写真への造詣が深いことでも知られているんです。そんな平野さんに、写真のことから小説のことまで、大和田さんが独自の視点でインタビューを行いました。

4. どんな人に小説を読んでもらいたいですか?

平野啓一郎 

音楽家やデザイナーなど小説以外のジャンルの表現者と接する機会も多くて、そういう人たちにこそ自分の小説を読んでほしいと思うんです。

Q.平野さんのインタビューなどを読んでいると、読者とともに歩んでいくという意識が強いように感じますが、読者に対してどんなアプローチを心がけているのですか?

平野:ジャンルが細分化されているなかで、特定のジャンルに興味を持つ層の規模はどんどん小さくなっていると思うんですね。そのなかで、これまで文学というのは限られた人しかいない、清流でしか生きていけない鮎みたいなものとしてあったけど、自分の作品には、鮎の美しさを保ちつつ、フナみたいに清流ではないところでも泳いでいけるたくましさを備えていてほしいなと。僕は、音楽家やデザイナーなど小説以外のジャンルの表現者と接する機会も多くて、そういう人たちと話すことはとても楽しいし、彼らにこそ自分の小説を読んでほしいと思うんです。でも、中には普段小説を読まない人たちも結構いて、そういう人たちに「本あまり読まないから」とやんわり断られるのがスゴく寂しいなって。だから、そういうクリエイターの人たちにも読んでもらいたいという思いがずっとあって、そうすると必然的にハードコアな小説ファンにしか伝わらない表現にするのは難しくて、そうではない人たちでも読んでもらえるような仕上げにする必要が出てくる。作家としてのテーマは譲ってはいけないし、最先端のことをしていくべきだと思いますが、インターフェースのデザインのような部分を少し整えるだけで、だいぶ間口は広がると思っています。

大和田良「BONSAI -Chiyo no matsu」 大和田良「Landscape」

Q.僕自身も、あくまでも自分が撮りたい写真を撮るけれど、鑑賞者のことを意識したり、写真に興味がない人にどう見せていくかということを同時に考えることは多いです。

平野:変な例かもしれないですが、純文学を山に例えると、登山家にしか登れない山だと思うんですよ。でも、富士山の五合目までバスで連れて行ってくれたら、普通の人でも頂上まで登ることができるし、そこで見える景色は、いままで自分の人生で見てきたものとは違う何かがあるはずですよね。これまで純文学の世界では、五合目までバスで連れて行くことは邪道だとされていて、結局その山に登る人が減っていくという問題があったんですが、別に五合目までを端折るかどうかは本質的な問題ではないと思うんですね。そういう意味では、アクセスをしやくすることで、自分の見ている世界を多くの人が見てくれるかもしれないと思っているところがある。究極的には、自分という変わった人間を普通の人たちが理解してくれるというものを書くということが理想なんじゃないかなと思っています。<続く>

インフォメーション

平野啓一郎さんが現在『モーニング』で連載中の長篇小説『空白を満たしなさい』の単行本は講談社より11月刊行予定。 大和田良さんは現在、11月刊行を目指し、写真雑誌『ShINC.MAGAZINE』を編集中。

もっと知りたい人は…

  • 大和田良 

    大和田良

    写真家

    1978年仙台市生まれ。東京工芸大学大学院芸術学研究科メディアアート専攻修了。主な著書に『prism』(青幻舎)、『ノーツ オン フォトグラフィー』(リブロアルテ)、『FORM』(深水社)、『伝わる、写真。」(マイナビ)等。2011年、日本写真協会賞新人賞受賞。

  • 平野啓一郎 

    平野啓一郎

    小説家

    1975年愛知県生れ。京都大学法学部卒。1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。以後、2002年発表の大長編『葬送』をはじめ、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。著書は『滴り落ちる時計たちの波紋』、『決壊』、『ド-ン』、『かたちだけの愛』『モノローグ(エッセイ集)』、『ディアローグ(対談集)』など。