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大原大次郎

グラフィック・デザイナー

藤野真人

フェアリーデバイセズ株式会社

SAKEROCKを始めとする数々のミュージシャンのCDジャケットや、CM、TV番組のロゴデザインなどさまざまな仕事を手がけながら、「文字」を題材にしたワークショップや展覧会なども精力的に行なっているグラフィック・デザイナーの大原大次郎さん。そんな彼がインタビュー相手に選んでくれたのは、フェアリーデバイセズ株式会社で代表を務める藤野真人さん。全世界から集めた宇宙画像を用いたプラネタリウムソフトや、ピアノの鍵盤をユーザーインターフェースにしたバイオリン、切り花が枯れにくくなる花瓶などを開発する藤野さんに、大原さんが聞きたいこととは一体?

3. 人間の癖はどこから生まれるのですか?

藤野真人 

癖の母体のようなものは脳のどこかにあるはずなのですが、文字を書くツールを変えると、脳の活性化する部位もおそらく変わってくるんじゃないかと思うんですね。

Q.人とバイオリンの間をあえて延ばしてみるという話がありましたが、これを僕の仕事に置き換えるなら、人と紙ということになると思います。僕がやっている文字のワークショップでは、自分の名前を定規などで書いたり、天地逆さにして書いたり、カーボン紙を当てて文字が見えない状態にして書いたりするんですね。これらはそれぞれ「ツール」「方法」「環境」を変えて文字を書くことをテーマにしているのですが、やってみて感じることは、線のストロークなどよりも、字間などの空間の捉え方にその人らしさようなものが出てくるということなんです。文字そのものよりも、間合いなど呼吸に近いようなものに癖の母体というのがあるような気がして、とても興味深いなと。

藤野:この発見はとても面白いですね。癖の母体のようなものは脳のどこかにあるはずなのですが、文字を書くツールを変えると、脳の活性化する部位もおそらく変わってくるんじゃないかと思うんですね。それにも関わらず、似たようなものが出てくるということになると、一体癖というのは脳のどこにあるんだろうと。きっとどこかに文字を空間的に把握する部位があって、それはツールに関係なく共通していて、癖にも関わっているんでしょうね。このワークショップは研究論文にもなるようなスゴく興味深いものだと思います。

「文化庁メディア芸術祭」ロゴ 「江口宏志 ない世界」ロゴ 山口‘Gucci’佳宏、鈴木啓之 「昭和のレコードデザイン集」表紙

Q.いま僕は、自分の手癖感の強いデザインを認知してもらえているありがたさは感じつつも、そこまで自分の癖を偏愛できず、自らの歌声を録音して聴いた時のような気持ち悪さも残るんです。だから、自分の手癖というのがどこから来ているのかという理由付けがもう少しほしくて、こういうワークショップをしているところがあります。例えば、音楽の話で言うと、ベートーヴェンが作った楽曲は、記譜という方法によって再生可能となり、いまそれを聴く人たちは、楽曲そのものではなく、指揮者や演奏者の「癖」や「ずれ」によって感動しているとも言える。現代の音楽にしても、エンジニアリングによってアウトプットには大きな違いが出てきますよね。

藤野:元となる音源を操作していくことで、何がどう変わっていくのかというのは、僕もとても興味があります。例えば、コンピュータに楽譜通り完璧に演奏させたものを標準とすると、人間の演奏というのは、どんどんその標準からズレていくわけですよね。その時に僕が思うのは、「コンピュータ」と「人間」というのは完全な二分化されているものではなく、その間には連続性があって、コンピュータによる標準の演奏と、人間の演奏というのは数直線で結べるんじゃないかということなんです。

Q.そういうものをグラフィック・デザインに置き換えたらどうなるんだろうということは僕もよく考えます。例えば、小学生がなぞって練習するような楷書や教科書体などがありますが、大抵の人はそこから離れた文字を書いていますよね。

藤野:僕たちはあのなぞり文字からどんどんズレていってしまう。そのズレ具合、標準と癖の差を考えていくのはスゴく面白いですね。そのズレを数値的に分析していけば、ある程度のパターンや指標を得ることはできるはずです。だから何だと言われればそれまでですが、そうやって定量的に物事を捕らえることで見えてくる側面があるのも事実だと思います。僕の友人から聞いた「存在の影」という言葉があるんですね。例えば、機械的な演奏から人間っぽい演奏に段階的に変化をさせていった時に、どの時点で人間の「存在の影」というのが現れるのか? 機械の演奏から僕らは「存在の影」をどこまで感じられるのかということが、僕のもともとの興味だったんです。<続く>

インフォメーション

昨年、藤野真人さんが出演した「TEDxSeeds」に、今年は大原大次郎さんの出演が決定!! 「TEDxSeeds 2012」は、11月17日に横浜赤レンガ倉庫で開催される。

もっと知りたい人は…

  • 大原大次郎 

    大原大次郎

    グラフィック・デザイナー

    1978年神奈川県生まれ。タイポグラフィを基軸としたデザインワークや映像制作に従事するほか、言葉や文字を題材としたワークショップ、エキシビション、レクチャーなど、自発的なデザインプロジェクトを展開する。

  • 藤野真人 

    藤野真人

    フェアリーデバイセズ株式会社

    1981年生まれ。東京大学大学院医学系研究科医科学専攻中退。エンジニア。フェアリーデバイセズ株式会社代表。