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大原大次郎

グラフィック・デザイナー

藤野真人

フェアリーデバイセズ株式会社

SAKEROCKを始めとする数々のミュージシャンのCDジャケットや、CM、TV番組のロゴデザインなどさまざまな仕事を手がけながら、「文字」を題材にしたワークショップや展覧会なども精力的に行なっているグラフィック・デザイナーの大原大次郎さん。そんな彼がインタビュー相手に選んでくれたのは、フェアリーデバイセズ株式会社で代表を務める藤野真人さん。全世界から集めた宇宙画像を用いたプラネタリウムソフトや、ピアノの鍵盤をユーザーインターフェースにしたバイオリン、切り花が枯れにくくなる花瓶などを開発する藤野さんに、大原さんが聞きたいこととは一体?

2. どんな思いで開発をしているのですか?

藤野真人 

人間と人工物との関係性には、まだまだ色んなパターンがあると思うんです。自分としてはそこをもっとカルティベートしたいし、多くの人にその面白さを見出してほしいなと考えています。

Q.藤野さんは基礎医学や生物学を学ばれていたそうですが、もともとは学者になりたかったのですか?

藤野:はい。でも、優れた学者というのはすでに世の中にたくさんいるので、自分は違う道を選んでもいいのかなと思うようになり、テクノロジーと生物や自然科学などを組み合わせたことをやるようになりました。それだけ聞くと立派な感じがするかもしれないですが、全然そんな話ではなくて、単に「花が枯れるのが悲しい」というような個人的な動機に基づいているものがほとんどです。

現在藤野さんが開発中の草花が枯れにくくなる花瓶。

Q.藤野さんが作っているものは、大まかに言えばITの製品ということになるのかもしれないですが、そのきっかけや込められている思いというのは、たしかにスゴく個人的なものであるような気がします。

藤野:そうですね。例えば、最近は草花が枯れにくくなる花瓶を開発しているのですが、切り花を誰かからもらっても普通は1週間くらいですぐに枯れてしまいますよね。それは僕にとってスゴく寂しい体験なんですね。おそらく世の中にはそういう人たちがたくさんいると思うんです。またその一方で、すぐに忘れてしまう人、元気な時の花を絵に描いて残す人など、問題への向き合い方というのはそれぞれだと思うのですが、僕の場合は、もっと切り花が長生きできるような装置が作れないかと思って、それをずっと実験しているんです。この花瓶がまさに典型なのですが、基本的には自分がほしいと思うものを作りたいというのが前提にあります。当たり前のことですが、「本当に作ってみたい」と思えるものや、「これは面白い」と思ったものを作ることがやっぱり面白いですし、自分がそう思えるものだからこそ、極限までこだわれると思うんです。

Photo by T.Hamasaki

Q.そうした製品を人々に届けていくにあたって、どんなことを考えていますか?

藤野:人間と人工物との関係性には、まだまだ色んなパターンがあると思うんです。自分としてはそこをもっとカルティベートしたいし、多くの人にその面白さを見出してほしいなと考えています。実用的な例で言うと、夜暑い時にクーラーをおやすみモードにするじゃないですか。うちの場合、その操作をするのにリモコンのボタンを6回も押さないといけないんです。こんな時に、クーラーと人とのコミュニケーションが、リモコンを介してしかできないという現状に問題があると感じるわけです。既存のインターフェースには、まだまだ発展する余地がたくさん残っています。僕らは、ピアノの鍵盤を弾くとバイオリンから音が鳴るという装置も作っているのですが、これもピアノの鍵盤というものをインターフェースにして、人とバイオリンの間をあえて延ばしてみることで、どんな体験が生まれるのかということを実験したくて作っているんです。

Q.それによって何か得られたことはありましたか?

藤野:鍵盤を通してバイオリンを弾こうとすると、最初はなかなか勝手がつかめないのですが、「こういう風に音が鳴るんだ」ということがわかってくると、間に鍵盤があるということが気にならなくなってくる。さらに慣れてくると、使う人の個性というものも反映されてくるんです。別の例を出すと、例えばショベルカーの先にマジックペンをつけて文字を書こうとしたとします。もちろん一般の人はショベルカー自体を操作できないけど、熟練した人がそれを必死に練習すれば、上手い文字が書けるようになるかもしれないし、そこには個性も反映されてくると思うんです。このように人間がツールに適応していくということに僕は面白さを感じます。一般的には、機械が人間に合わせるべきだという風潮がありますが、本当は逆なんじゃないかなと。人間が機械に合わせたら、もっとスゴいことができるんじゃないかと思っているんです。<続く>


インフォメーション

昨年、藤野真人さんが出演した「TEDxSeeds」に、今年は大原大次郎さんの出演が決定!! 「TEDxSeeds 2012」は、11月17日に横浜赤レンガ倉庫で開催される。

もっと知りたい人は…

  • 大原大次郎 

    大原大次郎

    グラフィック・デザイナー

    1978年神奈川県生まれ。タイポグラフィを基軸としたデザインワークや映像制作に従事するほか、言葉や文字を題材としたワークショップ、エキシビション、レクチャーなど、自発的なデザインプロジェクトを展開する。

  • 藤野真人 

    藤野真人

    フェアリーデバイセズ株式会社

    1981年生まれ。東京大学大学院医学系研究科医科学専攻中退。エンジニア。フェアリーデバイセズ株式会社代表。