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毛利悠子

美術家

坂田和實

古道具坂田

今回インタビュアーを務める毛利悠子さんは、独自の機械装置を用いたインスタレーション作品を得意とするアーティスト。先日開催されたアートフェア東京でも、若手現代美術家に贈られる「ベーコンプライズ2014」を受賞するなど、各方面から注目を集めている毛利さんがインタビュー相手に挙げてくれたのは、1973年に目白で「古道具坂田」をオープンし、世界各地の日用工芸品、美術品などを収集・販売し、2012年に渋谷・松濤美術館で開催された展覧会や、ご自身の著書などで広く知られている坂田和實さん。当代きっての審美眼を持つ坂田さんに、毛利さんが聞きたいこととは?

4. 偽物を買ってしまうことはありますか?

坂田和實 

最初に見た時に素直に良いと思えなかったのに、知識をフル回転させてその市場価値を考えた上で買う時というのは、不思議と偽物をつかんでいる場合が多いです。

Q.坂田さんが買い付けをする際には、それをまた買う人のことは考えていますか?

坂田:以前は、これはこの人が買ってくれるかなと考えながら買い付けしていた時期もあったのですが、そういうモノはお客さんに心から良いと思って薦められないんですよ。また、最初に見た時に素直に良いと思えなかったのにも関わらず、自分の知識をフル回転させてその市場価値を考えた上で買う時というのは、不思議と偽物をつかんでいる場合が多いです。偽物をつかまされてしまった時は落ち込みますよね。お金のこと以上に、何十年という自分の経験が否定されるわけですから。でも、反対に偽物をまったくつかんでいないコレクションというのも見ていてもあまり面白くないんです。面白いことをやっている人は、ある程度色んなことに対して色気を持っているからこそ、ダマされるんですよね。以前にうちによく来ていた大好きな先輩は、遊ばないとモノは見えないよといつも話していました。真面目に勉強だけをしていればいいのかというと、そんなものではないんだよと。

「リモージュ 鍍金七宝キリスト像」(フランス/13世紀)『古道具、その行き先 坂田和實の40年』展より。撮影:ホンマタカシ  提供:渋谷区立松濤美術館

Q.色んなモノを見たり、触れたりすることが大切なんですね。

坂田:まだ20代後半の時に、非常に影響を受けたお客様さんがいて、一度その人の家に行ったこともあるのですが、あまりに素晴らしすぎて、ガタガタ震えながら車を運転して帰ってきた記憶があります。道具屋として自分が最終的に目指したいと思う世界がそこにあったんですが、その奥様に何年こういうことを続けているのですかと聞いたら、今年で3年目と答えるんですね。そこで僕は、ずいぶんと勉強したんじゃないですか? とつまらないことを聞いたら、こういうものは勉強するものではないんじゃないのと。日々の自分の生活を楽しんだり、映画を見たり、音楽を聞いたりしないと見えてこない世界で、本を買って勉強したからといって簡単にわかる世界ではないと。実は、2012年に松濤美術館でやった展覧会で講演をした時に久々にお会いして、そこでもお礼を言わせて頂いたんですが、そのご夫婦にはとても感謝をしています。道具にしか興味がなかった当時の僕と比べて、非常に幅広い興味を持たれている方でしたね。

毛利悠子『サーカス』(2012) Photo:新津保建秀 毛利悠子『I/O』(2013) Photo:松尾宇人

Q.最近の若い人たちについてはどうですか?

坂田:いまは30代前後の人たちがとても面白いと感じています。彼らは、子供の頃に靴下を買う時から自分が好きなものを自分で選んできた世代ですよね。当然、もっと大きくなってからも、自転車や洋服などすべて自分たちの責任で選んできたと思うんです。一方で、僕らの世代というのは、奥さんが買ってきた背広やネクタイを身につけて会社に通うような人がほとんどで、自分の判断または責任でモノを選ぶということを日常的にしていなかった。そういう人たちが定年退職をして、初めてアートや骨董に興味を持つということとは全然違う感覚を持った新しい世代なんですよね。若い世代の展覧会などを見に行っても、彼らは安くて美しくて面白いモノをどんどん出しているし、非常に手強い相手だなと感じています(笑)。そういう意味では、ここ10年くらいでこの世界にも凄く広がりが出てきていますし、さらにアート、ファッション、デザインの分野などと、古美術や生活工芸と言われているものが渾然となり、同じテーブルの上に乗って、何が一番美しく魅力的かと競っている時代となりました。これからの10年はそれがさらに加速していくのだろうなと思っています。<続く>

インフォメーション

坂田さんが運営する千葉県の美術館・as it isにて、T氏個人コレクション展『my Foolish Heart』が10月5日まで開催中。(金・土・日曜のみ開館)。7月19日〜9月28日まで開催される『札幌国際芸術祭 2014』、7月26日〜9月15日まで国際芸術センター青森で開催される『MEDIA/ART KITCHEN AOMORI ユーモアと遊びの政治学』に毛利さんが参加予定。

もっと知りたい人は…

  • 毛利悠子 

    毛利悠子

    美術家

    1980年神奈川県生まれ。日用品やジャンクと機械部品を解体・再構成した立体物を展示環境に寄り添わせることで、磁力や重力、光、温度など、目に見えない力をセンシングするインスタレーション作品を制作している。主な個展に「ソバージュ 都市の中の野生」(Art Center Ongoing、2013年)、「サーカス」(東京都現代美術館ブルームバーグ・パヴィリオン、2012年)、主なグループ展に「MEDIA ART/KITCHEN」(インドネシア国立美術館、ジャカルタ、2013年)、「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」(東京都現代美術館、2012年)など国内外多数。

  • 坂田和實 

    坂田和實

    古道具坂田

    1945年福岡県生れ。1973年、東京・目白に古道具屋を開く。以来年に数回、海外へ仕入の旅に出かけ、ヨーロッパ、アフリカ、朝鮮、日本、南米など、さまざまな国の品物を扱う。1994年、千葉県長生郡長南町に「museum as it is」を開館(設計=中村好文)。2012年、渋谷区立松濤美術館で「古道具、その行き先ー坂田和實の40年」展を開催。著書に『ひとりよがりのものさし』(新潮社)、共著に『骨董の眼利きがえらぶ ふだんづかいの器』『日本民藝館へいこう』(新潮社とんぼの本)。