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毛利悠子

美術家

坂田和實

古道具坂田

今回インタビュアーを務める毛利悠子さんは、独自の機械装置を用いたインスタレーション作品を得意とするアーティスト。先日開催されたアートフェア東京でも、若手現代美術家に贈られる「ベーコンプライズ2014」を受賞するなど、各方面から注目を集めている毛利さんがインタビュー相手に挙げてくれたのは、1973年に目白で「古道具坂田」をオープンし、世界各地の日用工芸品、美術品などを収集・販売し、2012年に渋谷・松濤美術館で開催された展覧会や、ご自身の著書などで広く知られている坂田和實さん。当代きっての審美眼を持つ坂田さんに、毛利さんが聞きたいこととは?

3. 日本人の感覚は特別なんですか?

坂田和實 

その空間の中で最も美しく見えるモノを選び、組み合わせていく。見立てと取り合わせということに関して、日本人は特別な感覚を持っているのだと思います。

Q.私が活動している現代美術の世界とは違い、坂田さんが扱っている古道具というのは、匿名性が高いものが多いですよね。

坂田:そうですね。特に日本人には、そういうモノへの共通した視点というものが、千利休の時代から脈々と受け継がれていると思うんですね。民藝運動を起こした柳宗悦にも、深澤直人さんや原研哉さんらの現代のデザイナーにも言えることですが、誰がデザインしたかわからない日常的な道具を取り上げ、その中にギリギリの必然性によって生み出された美しさ、つまり「用の美」を見出すという視点です。彼らは、ダイヤモンドを散りばめたような豪華なモノではなく、その辺にあるような日常的なモノを持ってくるわけですが、そのモノだけに目を向けるのではなく、千利休であれば詫びた茶室という空間の中で最も美しく見えるモノを選び、組み合わせていくんです。そうした見立てと取り合わせということに関して、日本人は特別な感覚を持っているのだと思います。

「ハリガネマネキン」(日本/昭和)『古道具、その行き先 坂田和實の40年』展より。撮影:ホンマタカシ  提供:渋谷区立松濤美術館 「コーヒー用ネル布」(日本/平成)『古道具、その行き先 坂田和實の40年』展より。撮影:ホンマタカシ  提供:渋谷区立松濤美術館

Q.坂田さんの著作で、平瓦をおにぎりを置くための食器として使っているという話に驚きました。かつて瓦だったモノを食器として使いこなす感覚に衝撃を受けました。

坂田:例えば、千利休が選んでいた道具と、柳宗悦が選んでいた道具というのは、それだけを見ると全く違うように見えるかもしれませんが、実はどちらも日常的なモノなんですね。要は、それを茶室のような詫びた空間で使うのか、民家のような強い建築空間で使うのかということが違うだけで、想定する建築空間に合わせて、日用工芸品を取り入れていくということが、一貫した日本のモノ選びだと思うんです。いま僕らは詫びた茶室で生活をしているわけではないし、昔ながらの民家を建てることも難しい。だとしたら、いま千利休や柳宗悦が選んできたものをそのままの形で持ってくるのでは、いまの僕たちの生活にうまく調和しないかもしれないし、むしろマンションやアパートという空間には、無印良品で買える1000円くらいの食器の方が合うかもしれない。そういう面では、かつて千利休が使っていて、いまは大変高価な茶碗と、無印良品のあるものは、美しさという面で変わらないかもしれないと思うんです。

Q.そうしたモノの見方というのは、日本独特のものなんですか?

坂田:そう思います。例えば、日本人が明治以降に教えられてきた美術の見方というのは、この150年くらいでヨーロッパから伝えられたものですよね。ギリシア・ローマ時代からルネサンスを経て構築された見方が世界中に広がり、スタンダードになっていったわけです。でも、その後写実的な絵画や、筋肉隆々の骨格ある彫刻というものに対して疑問を持つ人たちがヨーロッパなどでも出てきて、それが現代美術などにつながっていくわけですよね。また、ファッションの世界を見ても、三宅一生さん、山本耀司さん、川久保玲さんらが、既存の価値観を根底からひっくり返してしまったように、日本というのは、ヨーロッパが確立した美術の価値観に全面的には侵食されなかった特殊な国だと思うんです。いまは、そんな日本の基準というのは何なのかということを世界中が知りたがっている時代になっていると感じています。<続く>

インフォメーション

坂田さんが運営する千葉県の美術館・as it isにて、T氏個人コレクション展『my Foolish Heart』が10月5日まで開催中。(金・土・日曜のみ開館)。7月19日〜9月28日まで開催される『札幌国際芸術祭 2014』、7月26日〜9月15日まで国際芸術センター青森で開催される『MEDIA/ART KITCHEN AOMORI ユーモアと遊びの政治学』に毛利さんが参加予定。

もっと知りたい人は…

  • 毛利悠子 

    毛利悠子

    美術家

    1980年神奈川県生まれ。日用品やジャンクと機械部品を解体・再構成した立体物を展示環境に寄り添わせることで、磁力や重力、光、温度など、目に見えない力をセンシングするインスタレーション作品を制作している。主な個展に「ソバージュ 都市の中の野生」(Art Center Ongoing、2013年)、「サーカス」(東京都現代美術館ブルームバーグ・パヴィリオン、2012年)、主なグループ展に「MEDIA ART/KITCHEN」(インドネシア国立美術館、ジャカルタ、2013年)、「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」(東京都現代美術館、2012年)など国内外多数。

  • 坂田和實 

    坂田和實

    古道具坂田

    1945年福岡県生れ。1973年、東京・目白に古道具屋を開く。以来年に数回、海外へ仕入の旅に出かけ、ヨーロッパ、アフリカ、朝鮮、日本、南米など、さまざまな国の品物を扱う。1994年、千葉県長生郡長南町に「museum as it is」を開館(設計=中村好文)。2012年、渋谷区立松濤美術館で「古道具、その行き先ー坂田和實の40年」展を開催。著書に『ひとりよがりのものさし』(新潮社)、共著に『骨董の眼利きがえらぶ ふだんづかいの器』『日本民藝館へいこう』(新潮社とんぼの本)。