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毛利悠子

美術家

坂田和實

古道具坂田

今回インタビュアーを務める毛利悠子さんは、独自の機械装置を用いたインスタレーション作品を得意とするアーティスト。先日開催されたアートフェア東京でも、若手現代美術家に贈られる「ベーコンプライズ2014」を受賞するなど、各方面から注目を集めている毛利さんがインタビュー相手に挙げてくれたのは、1973年に目白で「古道具坂田」をオープンし、世界各地の日用工芸品、美術品などを収集・販売し、2012年に渋谷・松濤美術館で開催された展覧会や、ご自身の著書などで広く知られている坂田和實さん。当代きっての審美眼を持つ坂田さんに、毛利さんが聞きたいこととは?

2. どうやって価格をつけるのですか?

坂田和實 

1万円で買ったモノでも、本当に良いモノだと思うなら100万円で売ってもいい。それは非常に勇気と覚悟がいることですが、その勇気は持たないといけないと思っています。

Q.私の作品は機械を使うものがほとんどなので、どうしてもモーターなどが摩耗して、いつか壊れてしまうんですね。だから、これまで作品を売るということはしてこなかったんですが、去年初めて作品が売れたんです。先日のアートフェア東京でも、アトリエにあるビールの空き缶などを加工してつくった作品が売れたのですが、こういうものに価格がついて、売れるというのはどういうことなんだろうと。最近は、作品の価値ということについてよく考えるんです。

毛利悠子『variations#2 - Urban Mining』(2014) Photo:毛利悠子

坂田:以前に、うちにいらしたお客さんが、じっと商品を見つめて、「これを買ったらどうなるんでしょうか?」と質問されたんですね。その時は、これはガラス戸のこちら側にあるから値段がついていますが、これを買って外に持ち出した瞬間から、一般的には粗大ゴミになると思います、とお答えしました。お店の中では、そのモノが一番輝く場所に設置していますが、仮に外のゴミ捨て場に置いた瞬間に、それはゴミになるんですよね。

Q.坂田さんはモノに価格をつける時にはどんなことを意識していますか?

坂田:私が尊敬していた道具屋さんが、以前この店に来てくれて、モノを買ってくれることになったんですね。それはフランスで25,000円で買ったモノだったから、35,000円で売りました。その時に、「これはとても美しいと思うから、自分はこれを自分の店で10万円で売る」とその人はおっしゃったんですね。「25,000円で買ったモノを35,000円で売るなんて、君はタバコ屋じゃないんだよ」と。「僕らが売っているものは自分の価値観なんだから、それがお客さんとピッタリ合うのであれば、いくらで売っても文句は言われない」と言うんですね。極端な話、1万円で買ったモノでも、本当に良いモノだと思うのであれば100万円で売っても良いということです。それは非常に勇気と覚悟がいることですが、その勇気は持たないといけないと思っています。ただ、その人は帰り際に「俺が言ったようにやっているといつか潰れるぞ」という言葉を残していきましたが(笑)。

Q.現代美術の場合は、そこにコンテクストなどの裏付けが必要になることが多いですが、このお店にはキャプションや説明書きなどはほとんどないですよね。

坂田:うちでは、そういうモノに付いている肩書きや自分の色眼鏡を外してモノを見たらどうなるのかということを提案しているんです。そのモノを理解するということと、そのモノに惚れて買うということは違うことなんですよね。例えば、作家の名前や歴史的価値、技術的な完成度などがモノを評価する基準だと我々は教えられてきたわけですが、それが関係するのは価格であって、モノの美しさとはあまり関係がないんですね。高価で貴重なモノを、お金を持っている人たちが買うということはもちろんあって良いのですが、そうじゃない分野があっても良いんじゃないかと。誰かが決めた評価をなぞるのではなく、自分自身の評価に責任を持ち、もっと柔軟な感覚で幅を広げていくことができればと思っています。<続く>

インフォメーション

坂田さんが運営する千葉県の美術館・as it isにて、T氏個人コレクション展『my Foolish Heart』が10月5日まで開催中。(金・土・日曜のみ開館)。7月19日〜9月28日まで開催される『札幌国際芸術祭 2014』、7月26日〜9月15日まで国際芸術センター青森で開催される『MEDIA/ART KITCHEN AOMORI ユーモアと遊びの政治学』に毛利さんが参加予定。

もっと知りたい人は…

  • 毛利悠子 

    毛利悠子

    美術家

    1980年神奈川県生まれ。日用品やジャンクと機械部品を解体・再構成した立体物を展示環境に寄り添わせることで、磁力や重力、光、温度など、目に見えない力をセンシングするインスタレーション作品を制作している。主な個展に「ソバージュ 都市の中の野生」(Art Center Ongoing、2013年)、「サーカス」(東京都現代美術館ブルームバーグ・パヴィリオン、2012年)、主なグループ展に「MEDIA ART/KITCHEN」(インドネシア国立美術館、ジャカルタ、2013年)、「アートと音楽 新たな共感覚をもとめて」(東京都現代美術館、2012年)など国内外多数。

  • 坂田和實 

    坂田和實

    古道具坂田

    1945年福岡県生れ。1973年、東京・目白に古道具屋を開く。以来年に数回、海外へ仕入の旅に出かけ、ヨーロッパ、アフリカ、朝鮮、日本、南米など、さまざまな国の品物を扱う。1994年、千葉県長生郡長南町に「museum as it is」を開館(設計=中村好文)。2012年、渋谷区立松濤美術館で「古道具、その行き先ー坂田和實の40年」展を開催。著書に『ひとりよがりのものさし』(新潮社)、共著に『骨董の眼利きがえらぶ ふだんづかいの器』『日本民藝館へいこう』(新潮社とんぼの本)。