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黒田潔

イラストレーター

辛酸なめ子

コラムニスト
マンガ家

カンバセーションズへの登場はこれで2回目となるイラストレーターの黒田潔さん。今回黒田さんがインタビュー相手に選んだのは、マンガ家、コラムニストとして様々な媒体で活躍している辛酸なめ子さん。一見あまり接点がなさそうにも思えるこのふたりをつなぐキーワードは、ズバリ「アイドル」!! 「アイドル」にまつわるコラムなども多数執筆している辛酸さんに、意外にもアイドルからの影響を受けてきたという黒田さんが聞きたいこととは果たして?

※このインタビューは、雑誌「QUOTATION」との共同コンテンツです。12月12日発売の『QUOTATION』VOL.13の誌面でもダイジェスト版をご覧になれます。

黒田潔 

インタビューの前に

いま、黒田潔さんが聞きたいこと

「僕は小・中学生くらいまで、アイドルが大好きだったんですね。大人になるにつれて徐々に興味は薄れてきてしまったのですが、いまだに自分が見てきた80〜90年代くらいのアイドルや、そこで聴いた音楽などが、作品のアイデアソースになることもあるんです。アイドルというのは華やかでキラキラしていて、強い光を放っているように見えて、僕が子供の頃に惹かれていた理由もそこにあったと思います。でも一方で、時代とともに立場が変わってしまったり、本人の意思と周りの大人たちが求めるもののズレなどもあるはずで、辛酸さんが以前に出した『アイドル万華鏡』は、そういう部分が興味深い解釈で書かれていて、とても好きな本なんです。辛酸さんのコラムなどは以前からずっと読ませてもらっていて、その後も何度かご一緒する機会はあったのですが、ちゃんとお話ができていなかったので、今日は辛酸さんにアイドルについての話や、いま興味を持たれているものなどについて聞いてみたいなと思っています」

黒田潔 

アイドルの変化について感じることはありますか?

いまはソーシャルメディアなどもあって、ネットで情報がすぐに見られてしまうので、アイドルの神秘性やカリスマ性というのがなくなっちゃったような気はしますね。

Q.僕が辛酸さんの文章を最初に読んだのは、たしか「サイゾー」なんですね。大学を出てイラストレーターになろうとしていた時期、「サイゾー」が好きでよく読んでいて、最初に仕事の売り込みに行った雑誌でもあるんです。当時そこで辛酸さんがアイドルのことをよく書いていて、視点が面白いなと思って読んでいたんです。辛酸さんは、子供の頃に好きだったアイドルとかはいたのですか?

辛酸:中学生の頃は南野陽子とかが好きでした。見た目もキレイですし、気が強そうというか自分を持っていそうな感じがしたんです。あまり歌が上手くないところも良かった。あと、中森明菜新田恵利も好きで、当時は自分の見た目とかは考えずに、アイドルみたいになれたらいいなと妄想しながら聴いていましたね。

Q.南野陽子とかの時代は、本人の意志なんて無視されている感じだったんじゃないかなと思うんです。よく当時のアイドルがベスト盤を出す時に、ファンに人気があった曲に対して「実はあの曲は好きじゃなかった」とコメントしているようなことも多かった気がするし、自分の意志と反してやらされていたことも多かったんだろうなと思ったりします。

辛酸:ピンク・レディーにしても、盲腸の手術の後にコンサートをして傷口が開いたという話がありましたね。苛酷な仕事で給料も安いし、日本の男性にエネルギーを与える聖母というような自覚がないと、なかなか務まらなかったんじゃないかなと思います。

Q.僕も辛酸さんと同じ世代なので、見てきたアイドルもほぼ同じだと思いますが、小学生くらいの頃は、昨晩テレビに出ていたアイドルの話とかが学校で飛び交っているような時代でしたよね。いまのアイドルもたまに見たりするんですけど、アイドルを取り巻くメディアというのも最近は大きく変わってきていますよね。

辛酸:そうですね。いまはみんなツイッターやGoogle+なんかをチェックしていますよね。ネットがない時代のアイドルというのは、ふたつくらいメディアを押さえておけばスキャンダルが出ないという感じだったと思いますが、いまはソーシャルメディアなどもあって、ネットで情報がすぐに見られてしまうので、アイドルの神秘性やカリスマ性というのがなくなっちゃったような気はしますね。

Q.最近のアイドルは、例えば、ももクロとかも踊りがちょっと変だったり、未完成だったりして、大丈夫かなと不安に感じてしまう要素があって、それが一緒に応援したくなるファン心理につながっているのかなと思ったりします。

辛酸:そうですね。ひと昔前の基準からするとあまりアイドルっぽくない感じはしますよね。これまでみたいにアイドルを崇めるというよりは、ヲタの人たちが上に立って、育てたり応援したりするという形が多い気がします。<続く>

黒田潔 

どんな視点でアイドルを見ているのですか?

私は十数年くらい前にSPEEDが好きで、その後ブリトニー(・スピアーズ)とかにいったのですが、ブリトニーがおかしくなっちゃった頃からは、そういう背景も込みで受け入れないといけないなと思うようになりました。

Q.最近はAKBの総選挙とかがあったりして、競争がものスゴく苛酷じゃないですか。自分に対する評価が順位になって出てきたり、結果がよりダイレクトに求められていますよね。

辛酸:男性社会の考え方を持ち込んだ感じですよね。これがなければ「密告」とかもなかったんでしょうね(笑)。

Q.当時はまだ自分が若かったから単純に背後が見えていなかっただけなのかもしれないですが、昔のアイドルは、マイナスの要素やダークなイメージってあまりなかった気がするんですよね。でも、ネットが普及するにつれて、そういうアイドルの負の部分も見えてくるようになりましたよね。

辛酸:ですよね。私は十数年くらい前にSPEEDが好きで、その後ブリトニー(・スピアーズ)とかにいったのですが、ブリトニーがおかしくなっちゃった頃からは、そういう背景も込みで受け入れないといけないなと思うようになりました。たとえ本人がおかしくなっても、その後に出てくるCDが良ければ安心みたいな。

辛酸なめ子『アイドル万華鏡』

Q.基本的にファン視点でアイドルを見ているんですね。

辛酸:そうですね。最近のファンは、そういう背景も込みで見ているところがあるんだと思います。それがさらに進むと、男と会っていないかをチェックしたり、風紀委員みたいな感じになってきて、例えば声優さんのブログにクリスマスの食事の写真がアップされていると、そのソースを見て写真の日付をチェックするような人もいるみたいです。それが半分楽しみになっちゃっているじゃないですかね。一方で、昔みたいに妄想する楽しさみたいなものはなくなってしまったのかもしれない。あゆ(浜崎あゆみ)みたいに結婚して離婚してみたいなストーリーがあればいいんですけどね。

辛酸なめ子『アイドル万華鏡』

Q.自分の意志は関係なく、人形のように扱われていた昔のアイドルとは違って、いまは自分の意見は言えるけど、同時にファンの意見も入りすぎてしまって、あまり守られている感じがなくて大変そうですよね。

辛酸:それで恋愛禁止なんて言われた日にはという感じですよね。つんく♂なんかは、アーユルヴェーダのドーシャのバランスが乱れるという理由で日蝕を恐れていて、「日蝕禁止」にしちゃいましたからね (笑)。それが常軌を逸しているとツイッターとかでも話題になりましたよね。でも、恋愛禁止より日蝕禁止の方がいいですよね(笑)。<続く>

黒田潔 

なぜピンのアイドルは減ったのですか?

これだけいっぱいアイドルがいると、またすぐ別の子を好きになればいいやと思ってしまうのかもしれないですね。

Q.YouTubeとかで昔のアイドルの映像を見るのが好きなんですが、当時キラキラ見えていて刺激的だったものが、いま改めて見ると意外とスカスカだったりするんですよね(笑)。とはいえ、昔の中森明菜のようなエネルギーを放っているアイドルっていまもいるのかなと思ったりします。当時のように一人のアイドルにみんなが向かっていくような感じはなくなってきていますよね。例えば、昔だと宮沢りえとか周りの友達のほとんどが恋をしてしまうような存在がいましたよね。

辛酸:最近はなかなかそういう人はいないですよね。これだけいっぱいアイドルがいると、またすぐ別の子を好きになればいいやと思ってしまうのかもしれないですね。それで一人のアイドルというのが少なくなったのかもしれない。そういう意味では、最近だと声優さんなんかが、これまでのピンのアイドルに代わる存在になっている気がします。

Q.たしかにそうですね。武道館を満員にしたり、テレビで異常に盛り上がったりしていて、昔のアイドル像を体現しているのは声優さんなのかもしれない。

辛酸:平野綾とか完全にアイドルですよね。声優さんはある意味二次元の世界にいるとも言えるから、その入りたくても入り込めない距離感みたいなものがいいんでしょうね。

Q.声優さんは、アニメのキャラクターを引っ張っているところがあるから、素の人間性があまり出ないのがいいのかもしれないですね。韓国のアイドルとかが、何を喋っているかわからないけど可愛いみたいところと通じるところがあるのかも。あと、個人的に最近興味があるのは、アイドルそのものよりも、つんく♂秋元康などのプロデューサーなんです。彼らの女性観や見てきたアイドル像みたいなものが、確実に投影されている感じがして面白い。たとえば、秋元康はおそらく若い頃にモテていなくて、逆につんく♂はモテてたんだろうなみたいな(笑)。歌詞の内容などにも露骨にそれが出ていますよね。

辛酸:秋元康は処女性にこだわっていますよね。NMB48にも「ヴァージニティ」という曲があって、これが結構良いんですよ。ヴァージンを守らなきゃみたいな内容なんですけど、突然「パパには言えない」みたいな歌詞が出てきて、そこで突然現実に戻されるんです。小学生のメンバーもいるから、急に「パパ」って言葉が出てくると覚めちゃうんですよね(笑)。でもそれすらも狙いなのかなって。<続く>

黒田潔 

ソーシャルメディアをどのように活用していますか?

台風が来た時とかに情報を得るために使ったりするくらいです。あと、たまにダライ・ラマのツイートを見たりします。

Q.ところで、辛酸さんが文章を書くようになったきっかけは何だったのですか?

辛酸:結構早い段階でWeb日記を書いたりしていたんです。日本でもインターネットがつながり始めて、まだアクセスポイントもそんなにないくらいの時期に、IT関係の仕事をしている知り合いに薦められてホームページを作ったんですね。そこで「女・一人日記」というタイトルで日記を書き始めて。当時は個人情報保護という概念が薄かったから、普通に地元の北浦和の駅で◯◯さんに会って何をしたとか、◯◯さんが初体験をしたらしいとか、そういう話を実名で平気に書いていましたね。

Q.その頃に比べると、最近はメディアもだいぶ変わってきましたよね。誰でもツイッターなどで簡単に発信できるようになったけど、同時に常に誰かに見られている感覚もある。僕はそういうことを考えてしまうところがあって、ツイッターとかをするのが苦手なんです。ツイッターやブログはその人のセンスやユーモアがスゴく出るものだから、興味がある人のものはチェックしているんですが、いざ自分で書こうとすると色々考えてしまうんです。「今日も良い絵が描けなかった」とか「なかなか筋肉痛が取れない」とかネガティブなことを書きがちみたいで、すぐ周りの人に心配されてしまったりして(笑)。

辛酸:ネットって念とかが増幅してしまいますよね。以前にある男性のネガティブなつぶやきだけを集めた本が出ましたよね。その人は彼女も仕事もなくて、「彼女がいるやつ全員爆発しろ」とか「バイト先の女の子のお団子ヘアを食べたい」とか、色んな妄想をつぶやいていたんですけど、そこまで極められればいいですよね。私は、悩みとかネガティブな内容をツイッターに書いたりすることが、恋愛離れにもつながっている気がしているんです。普通だったら彼女や彼氏に話すことをツイッターに書いて発散して満足している人は多いと思うし、ソーシャルメディアは人間関係に変化をもたらしていますよね。一方でFacebookではみんな良いことしか言わないみたいで、子供の写真とかレストランに行った時の料理の写真とか、表層的に幸せな写真しか見せていない人が多くて、それを見て自分の生活に劣等感を感じてしまう人もいるみたいですね。

辛酸なめ子『霊的探訪 スピリチュアル・レッスン』

Q.辛酸さん自身はソーシャルメディアをどのように使っているんですか?

辛酸:ツイッターに思いついたことを書いたりしていますが、誰もフォローはしていないし、あまり積極的には使っていないですね。例えば、台風が来た時とかに情報を得るために使ったりするくらいです。あと、たまにダライ・ラマのツイートを見たりします。芸能情報のサイトとかを結構見るので、それを見た後に魂を浄化するために見たりするのですが、その時間は俗世をちょっと忘れることができます。魂の成長とかについて書いているから神聖な気分になれるし、英語の勉強にもなるんですよ。<続く>

黒田潔 

ダライ・ラマとヤンキーの共通点は何ですか?

聖と俗じゃないですが、両方を取り入れていきたいなとは思っています。結局は強いエネルギーに惹かれているところがあるんだと思います。

Q.今日はアイドルの話を中心にしてきましたが、アイドル以外で興味のあるテーマはありますか?

辛酸:私は埼玉出身なんですが、地元ではヤンキーが一番強くて、学生の時もカッコ良い人や可愛い子はみんなヤンキーのグループに入っていたんです。小学生なのに女番長がいるような土地柄で、当時はマンガの「ホットロード」なんかも流行っていて、ヤンキー雑誌も出ていたから私も憧れはあったんです。とはいえ、運動もできなかったし、ヤンキーになるだけの気力もなかったんですけど、いまもヤンキー文化への憧れからの流れでEXILEを聴いたりしています。最近だと、関東連合の話とかにも興味があって色々検索していますね。知り合いが関東連合の人にインタビューした時に、「カッコ良いヤツはいつも悪いんだよ」って言われたと話していましたね。

辛酸なめ子、堀江宏樹『天皇愛』

Q.たしかに僕の中学とかでも不良やヤンキーの人はスゴくモテていて、クラスの中心的な存在でしたね。辛酸さんは、アイドルやヤンキー文化などに興味を持つ一方で、先ほどのダライ・ラマの話など宗教やスピリチュアルな方面も掘り下げていますよね。普通何かを掘り下げていくと、ひとつのものに加担してしまうところがあると思うんですが、辛酸さんはそのバランスや距離感を取るのがうまいような気がします。

辛酸:聖と俗じゃないですが、両方を取り入れていきたいなとは思っています。せっかく人間として生まれたからには、両方を知りたいという思いがあるんです。去年、ダライ・ラマが大震災のための法要で来日された時に私もイベントに行ったんですね。最初にダライ・ラマがお経を読んでいる時は雨が降っていたのですが、彼が外に出ると急に雨が止んで。やっぱり聖人のパワーは違うんだなと感じました。

Q.共通しているのは、強いパワーやエネルギーのようなものに惹かれているところなのかもしれないですね。僕がアイドルを好きだったのも、強い力に惹かれてもっと知りたいと思ったり、自分に欠けているものを補いたいという気持ちがあったからなんだと思います。

辛酸:そうですね。ヤンキーとはちょっと違いますが、「ビッグダディ」とかも見ちゃうんですよね。あの生命力がスゴくたくましいなと思って。一方で、一般参賀とかに行くとロイヤルパワーみたいなものを感じるし、結局はそういう強いエネルギーに惹かれているところがあるんだと思います。<インタビュー終わり>

黒田潔 

インタビューを終えて

色んなものに目がいっていて、バランス感覚がとても優れていると感じたし、ヤンキー文化の延長でEXILEを聴いちゃうところとか、選ぶセンスがスゴく独特で面白かったですね。

「おそらく辛酸さんは、自分のことや、自分が好きなもの、興味を持っているものを熱弁するタイプではなくて、独特の淡々としている感じがとても面白かったし、その中でも自分なりの着眼点で人間観察をされている人なんだなという印象を受けました。自分を浄化するためにダライ・ラマのツイートを読むというのはスゴいクールダウンの仕方ですが(笑)、どっぷりアイドルに浸っているわけではなく、色んなものに目がいっていて、バランス感覚がとても優れていると感じたし、ヤンキー文化の延長でEXILEを聴いちゃうところとか、どこまで天然なのかわかりませんが、選ぶセンスがスゴく独特で面白かったですね。
自分にはないものや、強いエネルギーに惹かれるというのは、僕がアイドルを好きだった理由ともつながっていて、その辺は共通しているように思いました。いま僕は絵を描いていて、辛酸さんは文章などを書いていて、お互いに自分のエネルギーを向ける矛先がハッキリしていると思いますが、だからこそ辛酸さんが話していた聖と俗のバランスじゃないですが、変な気や邪気というものに対して敏感に考えていった方がいいんだろうなということを、話を聞きながら感じたりもしましたね」

インフォメーション

辛酸さんの最新著作『セレブの黙示録』が朝日新聞出版から発売中。黒田さんと作家・古川日出男さんの共著『舗装道路の消えた世界』が河出書房新社より発売中。また、同書籍の発売に合わせた朗読、ライブペイント&トークイベントが12月8日に下北沢B&Bで開催される。

もっと知りたい人は…

  • 辛酸なめ子「アイドル万華鏡」(2010/河出書房新社)

  • 辛酸なめ子「セレブの黙示録」(2012/朝日新聞出版)

  • 辛酸なめ子「霊的探訪」(2012/角川書店)

  • 辛酸なめ子「辛酸なめ子の現代社会学」(2011/幻冬舎)

  • 古川日出男、黒田潔「舗装道路の消えた世界」(2012/河出書房新社)

  • 黒田潔「森へ」(2010/ピエブックス)

  • 黒田潔 

    黒田潔

    イラストレーター

    イラストレーター。資生堂「ザ・コラーゲン」広告、 Van Cleef & Arpels銀座店ディスプレイ等を手掛ける。2005年新宿サザンビートプロジェクトのウォールグラフィックでグッドデザイン賞を受賞。東京都現代美術館MOTアニュアル10」。韓国ナム・ジュン・パイクアートセンター等の展覧会に参加。作品集「森へ」(ピエ・ブックス)、古川日出男氏との共作「舗装道路の消えた世界」(河出書房新社)を出版。

  • 辛酸なめ子 

    辛酸なめ子

    コラムニスト
    マンガ家

    1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。漫画家、コラムニストとして活動。近刊は『厄除開運人生』(祥伝社)、『サバイバル女道』(サイゾー)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『霊的探訪』(角川書店)など。