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黒田潔

イラストレーター

黒田育世

ダンサー
振付師

黒田潔さんは、美しい線画で描かれる動植物のアートワークで人気のイラストレーター。雑誌や本の装丁をはじめ、さまざまな分野で活躍を続け、さらに2010年には、自らの足でアラスカの森を歩き、その情景をイラストで表現した作品集『森へ』を出版。その後も作家・古川日出男さんとのコラボレーションなど、ジャンルを横断しながら、精力的に作品発表を行っています。そんな彼が今回インタビューしたい人は、ダンサー、振付師として活躍し、近年では映画『告白』の出演でも話題を集めた黒田育世さん。黒田潔さんが初めて彼女のパフォーマンスを目にしたのは、古川日出男さんと黒田育世さんによる朗読パフォーマンス『ブ、ブルー』でのこと。そこで目にした黒田育世さんのパフォーマンスがずっと忘れられなかったそうです。幼い頃からバレエを学び、その後も自らの身体を使った表現を生業にしてきた黒田育世さんに対し、イラストレーションという平面表現を突き詰めてきた黒田潔さんが、いま本当に聞きたいこととは?

3. プロとして大切なことはありますか?

黒田育世 

どれだけ人が褒めてくれようとも、自分をゼロに持っていくことができるのは、自分の強みだと思います。

Q.あるインタビューで、「人間だったらもともと知っていることを表現する」という黒田さんの言葉を読んたんですが、僕は「ブ、ブルー」の公演を見た時に、水でビシャビシャになりながら激しい動きをする黒田さんを見ていて、自分の身体がビクンと反応する感覚があったんです。これが、小さい頃の記憶に残っている「人間がもともと知っていること」なのかなと。こういう感覚は、映画などではなかなかダイレクトに入ってこないけど、同じ場を共有できるパフォーマンスというだからこそ呼び起こされるのかもしれないですね。でも、それを舞台の上で、自分の肉体を使って伝えていくというのは、自分を完全に開放することのような気がして、僕なんかはなかなか難しいなと思ってしまいます。

黒田:いまもすべてを開放できているかというとそうではない気がします。やっぱり変なプライドや、便利になりたくないという思いなどがあって、すべてを手放せているわけではないし、ズルいことはしたくないとか倫理的な部分に縛られているところもある。でも、そもそも「身体がある」ということ自体が不自由なことですからね。

「ブ、ブルー」 Photo:片岡陽太

Q.抑制されることで本当にやりたいことが見えてくるということが、僕のこれまでの経験にはあって、その過程で築かれた基礎がある人とない人には大きな違いがあるように感じます。プロとして人に何かを伝えるためには、ある程度のクオリティを提示しないといけないと思うし、個性というのはその上に表現されてくるものだと思います。黒田さんがずっとバレエをやっていたことも、いまのパフォーマンスに大きく影響していそうですね。

黒田:バレエでも日舞でもなんでもいいんですが、削ぎ落とされるまでトレーニングされたものを身体の中に持っているというのは、とても強いことだと思います。それがあるといつでも謙虚になれるし、それはスゴく得なことですよね。逆に自分に何もないと謙虚になることは難しいと思うんです。例えば、バレエのポジションというのはどこまでも追求していけるもので、「1番」という基本的なポジションがあるのですが、「それすらまだこんなに汚いんだ」と思うと、ゼロに戻れるんです。どれだけ人が褒めてくれようとも、自分をゼロに持っていくことができるのは強みだし、だからこそそこから一歩進んで「1」に近づくことをスゴく感謝できる。ムッシュかまやつさんの『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』という歌を知っていますか? 曲の中で「すべてのものが珍しい赤ん坊は、何を見ても何をやってもうれしい」ということが歌われていて、これが本当に良い歌なんです。

何かフォーマットができてしまったり、すでに知っていることをやってしまった時に、スゴく悔しくなるんです。

Q.常に自分をニュートラルな状態にしておきたいという意識が強そうですね。

黒田:負けず嫌いなんだと思います。何かフォーマットができてしまったり、すでに知っていることをやってしまった時に、スゴく悔しくなるんです。もちろん自分が気づいていない手癖のようなものもあると思うんですが、それを自分で見つけてしまった時に、「何も新しいことやってないじゃないか!」と。それは世の中的に新しいものとは関係なくて、自分にとっていまこの時期につかまないといけなかったものをつかめたかった時なんかに、「ワー、バカー」って(笑)。だから毎回冒険なんですが、死ぬほど苦しんでやっていると、奇跡的に見たことのない世界に行けることもあるんですね。安全な場所を作るのではなく、ちょっと勇気を出すことでこんなことが起こるということに、自分でもビックリしたいんです。
<続く>

インフォメーション

黒田育世さん率いるBATIKの結成10周年を飾る新作『おたる鳥をよぶ準備』が、愛知芸術文化センターアイホール(伊丹)SPAC-静岡県舞台芸術センターの3館共同製作作品として上映される。その後、東京でも上演予定。

公演スケジュール
2012年6月30日、7月1日 SPAC 「ふじのくに⇄せかい演劇祭」 舞台芸術公園 野外劇場「有度」
2012年10月28日 アイホール(伊丹)
2012年10月31日、11月1日 愛知県芸術劇場小ホール
2012年11月15~18日 世田谷パブリックシアター

もっと知りたい人は…

  • 黒田潔 

    黒田潔

    イラストレーター

    イラストレーター。資生堂「ザ・コラーゲン」広告、 Van Cleef & Arpels銀座店ディスプレイ等を手掛ける。2005年新宿サザンビートプロジェクトのウォールグラフィックでグッドデザイン賞を受賞。東京都現代美術館MOTアニュアル10」。韓国ナム・ジュン・パイクアートセンター等の展覧会に参加。作品集「森へ」(ピエ・ブックス)、古川日出男氏との共作「舗装道路の消えた世界」(河出書房新社)を出版。

  • 黒田育世 

    黒田育世

    ダンサー
    振付師

    BATIK主宰、振付家・ダンサー。6歳よりクラシックバレエを始める。2002年にBATIKを設立し、次々に作品を発表。バレエテクニックを基礎に、身体を極限まで追いつめる過激でダイナミックな振付けは、踊りが持つ本来的な衝動と結びつき、ジャンルを超えて支持されている。飴屋法水古川日出男笠井 叡野田秀樹などアーティストとのクリエーションも多い。映画『告白』(中島哲也監督/10年)への出演も話題となった。