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黒田潔

イラストレーター

韓 亜由美

アーバンスケープアーキテクト

カンバセーションズには4回目の登場となるイラストレーターの黒田潔さん。今回彼がインタビュー相手に選んだのは、黒田さんがイラストレーションを担当した朝霞浜崎団地のトータルバリューアップ計画「URBAN FOREST ASAKAHAMAZAKI DANCHI」で、デザインディレクションを担当したアーバンスケープアーキテクト・韓 亜由美さん。老朽化した団地の改修にとどまらず、3棟にも及ぶ建物全体を森に見立てたデザイン計画のもと、団地という住空間全体に新たな価値を与えることを目指した2年越しの大プロジェクトの舞台裏について、さまざまなお話を聞きました。

4. 人は何を求めていますか?

韓 亜由美 

最近は、現代アートでもサイトスペシフィックな作品が多くなっていますが、普段アートに触れないような多く人たちも何かを求めていると思うんですね。

Q.僕が小さい頃、学校に岡本太郎の立体作品があったんですが、大人になってから初めて岡本太郎がこういう人だったというのを知った記憶があるんですね。今回の自分の絵も、団地に住んでいる子どもたちに同じように認識されることもあり得るわけで、それはとても覚悟がいることでした。どれくらいの年月そこに残って、どれだけの人たちが目にする可能性があるのかということを意識して描いていくことはとても勉強になりました。

韓:ここに住む子どもたちに毎日寄り添うわけですからね。とても楽しみです。住環境の一部に組み込まれ、住民の人たちと関係をつくっていくというのは、美術館やギャラリーの中に展示されるのとはまた違う作品のあり方ですよね。最近は、現代アートでもサイトスペシフィックな作品が多くなっていますが、普段アートに触れないような多く人たちも何かを求めていると思うんですね。今回もオープンハウスの時に、住人の女性の方で私に凄い勢いでまくしたててくる方がいて、最初は文句を言われると思ったのですが、よく聞いてみると、「私はこのイラスト作品のことを他の誰よりもよく理解している」ということを伝えたかったみたいなんです(笑)。みんなで団地ツアーをした時も、「この先には鹿の子の絵がある」「このバラにはちゃんと棘が描かれている」などとても詳しくて、3月末の時点ですでに全館を3周くらい見て回ったというんですよ。彼女としては、自分が代わりに他の住民のみんなに伝えるから、モチーフにした植物の名前などもっと色々知りたいとおっしゃっていました。それを受けて、Webサイトにはデザインの解説もひと通り載せることにしました。

URBAN FOREST ASAKAHAMAZAKI DANCHI  Photo:Nacasa&Partners URBAN FOREST ASAKAHAMAZAKI DANCHI  Photo:Nacasa&Partners Shinjuku Southern Beat project

Q.それはうれしいですよね。先ほどの話じゃないですが、どうしても住民からのクレームが出ないように、目立つものや個性的な表現は削られ、結果当り障りのないものができ上がってしまいがちですよね。でも、やっぱりみんな面白いものにこそ惹かれるし、変わっていくことに興味を持っているんですよね。

韓:しかたない部分もあるのかもしれませんが、どうしても薄められた無味無臭のものができてしまうところはありますよね。そういう意味で、この団地のプロジェクトが良い刺激になればと思っていますし、これを見てくれた人たちが、こういうこともできるんだと感じてくれて、色んな形で広まっていくといいなと思います。そういう意味では、新宿サザンビートも、工事現場の仮囲いというものへの意識を少し変えられたプロジェクトだったのかもしれないですね。

Q.こうしたプロジェクトが形になっていくのは、やはり新しいものをつくろうという韓さんの強い気持ちがあるからで、さらにそれを最後まで持続させて形に落とし込むまでには凄いパワーが必要なんだなと改めて感じました。

韓:前例にしばられて他と比較されるより、いっそいままでになかった新しい解を求めたくなるんですね。その先を見てみたい一心で突き進んでしまう、怖いもの知らずなのかもしれないですね(笑)。例えば、住宅専門で仕事をしている人であれば、実績が専門誌などで世間に知られることで、住宅の設計を頼みたい人から仕事の話が来るということがありますが、私のように、工事現場、高速道路の走行空間、団地再生など、毎回新機軸ばかりやっていくような仕事の仕方だと、なかなかクライアントから依頼が来にくいという大変さはあります(笑)。だからこそ、クライアントを含め、一人ひとりとのご縁や出会いというのはとても大切で、得難いチャンスと人の組み合わせに恵まれてきたからこそ、実現できているのだと思います。<インタビュー終わり>

インフォメーション

黒田潔さんと小説家・古川日出男さんによる朗読イベントが、6月21日に京都・恵文社一乗寺店COTTAGEで開催。また、関連企画として、「舗装道路の消えた世界」原画展が京都・prinzで6月22日から7月19日まで開催される。

もっと知りたい人は…

  • 黒田潔 

    黒田潔

    イラストレーター

    イラストレーター。資生堂「ザ・コラーゲン」広告、 Van Cleef & Arpels銀座店ディスプレイ等を手掛ける。2005年新宿サザンビートプロジェクトのウォールグラフィックでグッドデザイン賞を受賞。東京都現代美術館MOTアニュアル10」。韓国ナム・ジュン・パイクアートセンター等の展覧会に参加。作品集「森へ」(ピエ・ブックス)、古川日出男氏との共作「舗装道路の消えた世界」(河出書房新社)を出版。

  • 韓 亜由美 

    韓 亜由美

    アーバンスケープアーキテクト

    東京生まれ。前橋工科大学教授。Studio Han Design代表。現代の都市に生活する誰もが人間らしく主体的に享受できる豊かさの新しい価値を求め、パブリックスペースを対象に、領域を超えて統合的なデザイン活動を展開する。地域性と社会性を意識したデザインで橋梁やトンネル、工事現場など数多くの都市環境のプロジェクトに参画。主な仕事に、日本海沿岸東北自動車道トンネルルート、「工事中景」新宿サザンビート、豊田ジャンクション全体景観など。