インタビューアーにスポットを当てる新感覚インタビューサイト

RSS

Qonversations Twitter

黒田潔

イラストレーター

韓 亜由美

アーバンスケープアーキテクト

カンバセーションズには4回目の登場となるイラストレーターの黒田潔さん。今回彼がインタビュー相手に選んだのは、黒田さんがイラストレーションを担当した朝霞浜崎団地のトータルバリューアップ計画「URBAN FOREST ASAKAHAMAZAKI DANCHI」で、デザインディレクションを担当したアーバンスケープアーキテクト・韓 亜由美さん。老朽化した団地の改修にとどまらず、3棟にも及ぶ建物全体を森に見立てたデザイン計画のもと、団地という住空間全体に新たな価値を与えることを目指した2年越しの大プロジェクトの舞台裏について、さまざまなお話を聞きました。

3. クライアントとはどう関わっていますか?

韓 亜由美 

クライアント側にもその場所の価値を上げたいという思いがあるのですが、そのためにはエンドユーザーが満足しないといけない。そうしたクライアントとエンドユーザー双方の思いを行き来しながら仕事をしています。

Q.前回ご一緒した新宿サザンビートにしても、今回の朝霞浜崎団地にしても、よくこういう仕事が実現しましたねと言われることがとても多いんです(笑)。僕自身、韓さんがクライアントにどんなプレゼンをして、GOサインをもらっているのかということにとても興味があります。

韓:たしかに、よくこんなプロジェクトが通りましたねと言われることは多いのですが、おそらくそれは誰もやったことがないプロジェクトだからなのだと思います。前例がないから、クライアントも実際にやってみないと判断がつかないところがあるんじゃないかと(笑)。私の場合は、自分から仕事をつくり、それをプロジェクトにしていくケースが多いんですね。例えば、新宿サザンビートの時は、工事現場の美化/イメージアップがテーマでしたが、人の通行の妨げになったり、景観を乱してしまうものを、何かでごまかすという考え方はしたくありませんでした。それまであった価値観を完全にひっくり返して、新しい価値をつくるようなものにしないと意味がないという思いから、あのプロジェクトは生まれました。実は、今回の朝霞浜崎団地も、もともとはエントランス周りと吹き抜け部分の提案をしてほしいという依頼だったのですが、それだけで変わるようには思えなかったので、もう少し生活している人たちの動的な視点というものを意識して、空間全体を住環境として統一的に考えてゆくことで価値を高めていくことが大切なんじゃないかとプレゼンしたんです。

Q.クライアントとは、毎回かなり密にやり取りを重ねていくのですか?

韓:今回のように公共性の高いプロジェクトでは、クライアントというのは管理する立場上、こういうことをしたら街の人や住民からクレームが来るのではないかということを常に意識しますし、自ら制限をつくってしまうところがあると思うんですね。一方で、私はデザイナーなので、やはりエンドユーザーの立場から話をしていきます。当然クライアント側にも、その場所の価値を上げたいという思いがあるのですが、そのためには駅の利用者なり、団地の住民なりのエンドユーザーが満足しないといけないわけです。そうしたクライアントとエンドユーザー双方の思いの間を行き来しながら仕事をしています。

URBAN FOREST ASAKAHAMAZAKI DANCHI URBAN FOREST ASAKAHAMAZAKI DANCHI

Q.特設サイトで、改修前後の映像が見比べられるようになっていますが、改めて大きく変わったんだなと感じます。毎日ここに暮らしている住民の方たちは、おそらく僕ら以上に色々感じるところがあるんでしょうね。

韓:18年目の改修だったこともあって、最初に団地を視察した時は、構造の鉄骨が錆びて塗装が剥げていたり、放置自転車で玄関通路が埋まっていたり、チラシなどが地面に散らかっていたりと、住環境としての劣化はすでに限界に来ているような状態でしたよね。住民の不満やあきらめもピークだったはずで、みんなとても辛かったと思うんです。そういう事情もあって、クライアントは非常に慎重でしたし、あまり刺激するようなことはしてほしくないという思いがあったと思います。でも、オープンハウスで住民の方たちと団地ツアーをした時に、意見を色々言っていたうるさがたの住人のおひとりも最後には「これからは、せっかくきれいになったこの環境を自分たちが意識して守っていかないとな」とおっしゃってくれて、とてもうれしかったですね。改修前に比べ、共用廊下に置かれているモノも減りましたし、団地に住んでいる方たち自身が自覚を持ち、意識を変えていくということが当初の目標だったので、わたしたち関係者みんな、ここまで来るのに大変だったけど、やった甲斐があったな、本当に良かったと思っています。<続く>

インフォメーション

黒田潔さんと小説家・古川日出男さんによる朗読イベントが、6月21日に京都・恵文社一乗寺店COTTAGEで開催。また、関連企画として、「舗装道路の消えた世界」原画展が京都・prinzで6月22日から7月19日まで開催される。

もっと知りたい人は…

  • 黒田潔 

    黒田潔

    イラストレーター

    イラストレーター。資生堂「ザ・コラーゲン」広告、 Van Cleef & Arpels銀座店ディスプレイ等を手掛ける。2005年新宿サザンビートプロジェクトのウォールグラフィックでグッドデザイン賞を受賞。東京都現代美術館MOTアニュアル10」。韓国ナム・ジュン・パイクアートセンター等の展覧会に参加。作品集「森へ」(ピエ・ブックス)、古川日出男氏との共作「舗装道路の消えた世界」(河出書房新社)を出版。

  • 韓 亜由美 

    韓 亜由美

    アーバンスケープアーキテクト

    東京生まれ。前橋工科大学教授。Studio Han Design代表。現代の都市に生活する誰もが人間らしく主体的に享受できる豊かさの新しい価値を求め、パブリックスペースを対象に、領域を超えて統合的なデザイン活動を展開する。地域性と社会性を意識したデザインで橋梁やトンネル、工事現場など数多くの都市環境のプロジェクトに参画。主な仕事に、日本海沿岸東北自動車道トンネルルート、「工事中景」新宿サザンビート、豊田ジャンクション全体景観など。