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黒田潔

イラストレーター

韓 亜由美

アーバンスケープアーキテクト

カンバセーションズには4回目の登場となるイラストレーターの黒田潔さん。今回彼がインタビュー相手に選んだのは、黒田さんがイラストレーションを担当した朝霞浜崎団地のトータルバリューアップ計画「URBAN FOREST ASAKAHAMAZAKI DANCHI」で、デザインディレクションを担当したアーバンスケープアーキテクト・韓 亜由美さん。老朽化した団地の改修にとどまらず、3棟にも及ぶ建物全体を森に見立てたデザイン計画のもと、団地という住空間全体に新たな価値を与えることを目指した2年越しの大プロジェクトの舞台裏について、さまざまなお話を聞きました。

2. 住民の反応はいかがですか?

韓 亜由美 

全体像が見えない段階で、突然壁に昆虫の絵が描かれていたりしたらビックリするかもしれませんが、説明をすることで住民の方たちの理解が豊かになっていくというのはありますよね。

Q.今回の朝霞浜崎団地のプロジェクトでは、テキスタイルのようなグラフィカルなパターンを展開していく案からスタートしたそうですね。

韓:そうですね。今回は住空間だったので、環境の中に埋め込まれ、背景になるようなものがいいんじゃないかという考えが始めにありました。また、先にもお話したように、そこに住む人たちを包み込むような「森」をイメージしていたので、植物的なパターンを展開していくことまでは決めていたのですが、いざ検証してみると、テキスタイルのようなパターンだけでは、これだけ広い空間をカバーできないということがわかりました。パターンが背景として埋め込まれるのでもなく、単体の絵がポツンとあるのでもなく、それらが繋がり合ったひとつの世界をつくっていく必要があると感じ、すぐに黒田さんのことが思い浮かびました。新宿サザンビートの時もそうでしたが、黒田さんの植物の絵は具象でありつつも、いわゆる図鑑的なものではなく、それらがある背景や周囲の空気感まで感じさせてくれるような独特の世界観があると感じています。

URBAN FOREST ASAKAHAMAZAKI DANCHI URBAN FOREST ASAKAHAMAZAKI DANCHI URBAN FOREST ASAKAHAMAZAKI DANCHI

Q.今回は僕の線画イラストレーションだけではなく、有機的なモチーフを金網フェンスで表現したアプローチなども考えて頂きましたが、毎回アイデアの引っ張り方が面白いですよね。また、各フロアのテーマカラーにまつわるポエティックなキーワードを韓さん自身が書かれていましたが、これを目にする子どもたちはかなり想像が広がりそうですね。

韓:マザー・グース」のようなリズム感のある言葉や、「ハリーポッター」の呪文などを意識して書きました。多くの団地の良くない点は、均質で画一的な疎外感を与えてしまうところだと思うんですね。特に最近は表札を出さない人も多いので、それこそ、どの階も同じで部屋番号だけが廊下に並んでいるような状態です。それを変えたくて、今回は各フロアの配色を変え、それぞれ異なるアイコンも黒田さんにつくって頂いんたんですよね。塗装工事に入る前、広場前の仮囲いにフロアカラーとワードを設置したのですが、まるで謎かけ言葉に答えようとしているように、買い物かごを持ったままジッと眺めていた住人の方がいたのも印象的でした(笑)。

Q.自分の表現に対するダイレクトな反応というのはなかなか得づらいので、今回のように住民の方の反応が間近で見られるのはうれしいです。僕のイラストレーションというのはファンシーで親しみやすいような表現ではないので、人によってはわかりづらかったり、怖いと感じられたりするのではないかと少し心配していました。

韓:例えば、まだ全体像が見えない段階で、旅行から帰ってきたら突然壁に昆虫の絵が描かれていたりしたらビックリするかもしれませんが、この団地全体が森なんですよということを説明することで、住人の方たちの理解が豊かになっていくというのはありますよね。今回は工事中、団地の子どもたちと一緒に、黒田さんのアートワークの一部を用いた塗装体験のワークショップをしたのですが、これをきっかけにお母さんたちに顔を覚えて頂き、声をかけてもらえるようになったことも非常に良かったなと思っています。<続く>

インフォメーション

黒田潔さんと小説家・古川日出男さんによる朗読イベントが、6月21日に京都・恵文社一乗寺店COTTAGEで開催。また、関連企画として、「舗装道路の消えた世界」原画展が京都・prinzで6月22日から7月19日まで開催される。

もっと知りたい人は…

  • 黒田潔 

    黒田潔

    イラストレーター

    イラストレーター。資生堂「ザ・コラーゲン」広告、 Van Cleef & Arpels銀座店ディスプレイ等を手掛ける。2005年新宿サザンビートプロジェクトのウォールグラフィックでグッドデザイン賞を受賞。東京都現代美術館MOTアニュアル10」。韓国ナム・ジュン・パイクアートセンター等の展覧会に参加。作品集「森へ」(ピエ・ブックス)、古川日出男氏との共作「舗装道路の消えた世界」(河出書房新社)を出版。

  • 韓 亜由美 

    韓 亜由美

    アーバンスケープアーキテクト

    東京生まれ。前橋工科大学教授。Studio Han Design代表。現代の都市に生活する誰もが人間らしく主体的に享受できる豊かさの新しい価値を求め、パブリックスペースを対象に、領域を超えて統合的なデザイン活動を展開する。地域性と社会性を意識したデザインで橋梁やトンネル、工事現場など数多くの都市環境のプロジェクトに参画。主な仕事に、日本海沿岸東北自動車道トンネルルート、「工事中景」新宿サザンビート、豊田ジャンクション全体景観など。