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熊野森人

クリエイティブディレクター

石井ゆかり

ライター

企業のブランディングや広告製作などを手がけるエレダイ2で代表を務める熊野森人さんが今回インタビューするのは、ご自身のWebサイト「筋トレ」やツイッター、ミリオンセラーとなった書籍「12星座シリーズ」、数々の雑誌やWebメディアでの占いコーナーなどをはじめとした文筆活動で知られるライターの石井ゆかりさん。かねてから石井さんのファンだったという熊野さんが、独自の視点と語り口で多くの熱狂的なファンを抱える石井さんに、星占いのことからコミュニケーションの話まで、さまざまな質問を投げかけました。
※このインタビューは、2016年10月20日に収録されました。

4. なぜ星占いだったのですか?

石井ゆかり 

エクスキューズできないけど、でも、仕事をしている。そういう、ある意味情けない状態でやっている仕事が「占い」です。

Q.僕は星占いに特に詳しいわけではなく、むしろ石井さんを通した世界でしか占いのことを見ていないんですね。石井さんのフィルターを通して解釈されたものが僕にはとても魅力的なんですが、なぜ石井さんは星占いというツールを使っているのかなということが気になっています。石井さんであれば、星占い以外のものでも読者の需要を満たす情報を供給できるんじゃないかなと。

石井:本当にできるかどうかは別として、どんなことでもやろうと思えばできると思い込んでいる自分はいるかもしれないです(笑)。過去にも、編集者に言われて『親鸞』や『禅語』いう、仏教関連の本も出したことがあります。自分の中には、何でも勉強をしたり調べたりして考えれば、ある程度のものにできるという思い上がった考えがあるのですが、ライターというのは本来そういうものかなとも思います。例えば、「このニュース知ってる?」という類の世間話があるじゃないですか。私がイメージしているのもそれに近いコミュニケーションです。たとえば、すべての人が、出版されているすべての本を読めるわけではないですよね。ならば、自分なりに読んだり考えたりしてできた文章を、個人的なお手紙の感覚で「発信」してもいいのではないか、と思ったりします。偉い先生の書いた立派で深遠な本、というのでない「本」も、あってもいいのではないか、という仮説ですね。そういうコミュニケーションを必要とするモードも、人間にはあるのではないかと。星占いをやるのは、さらにもう少し問題があります。占いというのは、時代によっては「風説の流布」みたいなものとして、イギリスなんかでは法律で禁止されていたこともあったくらいで、罪なものなんです。いまはたまたま取り締まられていないからできているだけで、たとえばお酒だって、禁酒法時代があったくらいで、人間にとっていいものかどうかというと、あまりいいものとは言えない。アルコール依存症とか、社会問題もあるくらいです。お酒でも煙草でも、摂取しなくてハッピーになれるならその方が絶対良いんです。もし、何か迷いや不安がある時に、占いではなく、たとえば芸術や文学などに触れて、自分なりに深く考えて、そこから生きる力を取り戻せるなら、そっちの方がよっぽど良いんです。

石井ゆかり『禅語』(2011年/パイインターナショナル) 石井ゆかり『親鸞』(2012年/パイインターナショナル)

Q.でも、芸術や文学よりも占いの方が生きる力になるという人もいるわけですよね。

石井:もちろん、誰もが何かに頼って生きているので、占いがその選択肢になっているということはあります。それこそ、お酒や煙草など、数ある「一時的に頼れるもの」の中では、占いは「あまりオススメできるものではないけど、かといってそんなにヒドイことにもならないかもよ」という程度の位置付けでしょう。応急処置的なものとしてはあってもいいけど、必ず出ないといけないもの。その世界に入りすぎてしまうと、お酒と一緒でダメになってしまうと思うんです。占いというのは、「あなたは~」という語り口で書かれているので、もの凄く読み手へのパンチが強いです。自分自身のことが書かれているわけですから。ストレートに心に入ってきます。どんなにライトな占いでもそういうところがあります。でも、それは決して根拠があるものではない。一方で文学や芸術作品には、ダイレクトに「貴方は〜」というふうに、自分のことは書かれていません。他人の人生や他人のイマジネーションが書かれているだけです。それはなによりも「本当のこと」なんですが、どうしても、読み手の側から作品の世界にがんばって入って行く必要があります。そこは大きな差があると思っています。

熊野さんが設立した新会社「ゆっくりおいしいねむたいな」のティザームービーより。

Q.例えば、星のめぐりをベースにした占星術でも、占う人自身の経験次第で、答えはそれぞれ変わったりしますよね。先ほどお話に出たように、作家というのは自分のインプットをもとに新しい物語をつくり、それを読んだ人たちが共感したり、陶酔したりしますよね。でも、その作家がインプットしたソースが普遍的なものかというと絶対にそんなことはない。占いにしても同じで、たとえ星占いという同じソースだったとしても、石井さんの占いは信じられるけど、他の人のものは信じられないということが起こり得るはずですよね。

石井:それはあると思います。ただ、それが自分の書いた小説やエッセイだったり、誰かをインタビューした原稿なのであればある程度責任が持てます。「誰が考えたことですか?」「この人です」って答えられますよね。でも、星占いはそうではない。「星がこうなってますよ」というのは、もうどこに責任があるのかわからない(笑)。だから、星占いとして語ってしまった時点で、人間理性という最終的な人間社会の責任のよりどころ、ということを考えると、決して健康的ではないです。「未来はこうですよ」ということを言ってしまった時点で、人間理性という土台がないものになるから、人間のおこないとしては、無責任なんです。その責任が持てないものが大きな仕事になっているという状況は問題だと感じるところがあります。でも、人は占いを求めるというどうしようもない事実があって、その欲求は決してなくなりません。誰が考えたことでもない、もっと遙か遠いところにある何事かと繋がっていたい、という思いを、人間はなぜか古い昔から持っているからです。やっていいかどうかは別として、占いは、もう厳然と「ある」んです。エクスキューズできないけど、でも、仕事をしている。そういう、ある意味情けない状態でやっている仕事が「占い」です。タバコ会社が、パッケージに「健康を害する恐れがあります」と大きく書きながら、でも、それを売っていますよね。あのビジネスモデルに近いのかもしれません。「タバコはいいものですよ!」とは言えないし言わない、けれど、タバコを売る仕事がある。占いもそれと同じだと、私は思っているのです。<続く>

インフォメーション

まるごと一冊石井ゆかりさんを特集した「Figaro」の占いMOOK本が12月9日に発売。書き下ろしの占い特集と、半期ごとに出していた「袋とじ」が収録予定。
熊野さんが、「快適な食時間をデザインして、毎日しあわせを感じられるようにすること。」をテーマにした新会社「ゆっくりおいしいねむたいな」を設立。

もっと知りたい人は…

  • 熊野森人 

    熊野森人

    クリエイティブディレクター

    1978年生まれ。大阪府出身。IAMAS(岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)特別研究課程修了。株式会社eredie2代表取締役、クリエイティブディレクター。株式会社ゆっくりおいしいねむたいな代表取締役、京都精華大学非常勤講師、京都造形芸術大学非常勤講師、東京芸術学舍講師。企業の商品やサービスの売り方を考えて広告をつくったり、企業そのものをブランディングしたり、行政の企画を練ったり、自社で世の中をちょっとザワザワさせるものをつくることが1つめの仕事。学生に「考える方法」と「行動する方法」を教えることが2つめの仕事。家で食器を洗ったり、トイレやお風呂を掃除したりすることが3つめの仕事です。

  • 石井ゆかり 

    石井ゆかり

    ライター

    1974年生まれ。星占いの記事やエッセイなどを執筆、独特の文体で人気を集める。2010年刊行『12 星座シリーズ』(WAVE 出版)は120万部を超えるベストセラーに。2014年には続編『3年の星占い』を刊行、33万部のヒットとなる(2015年2月現在)。著書は、他に『禅語』『親鸞』『青い鳥の本』シリーズ(パイ・インターナショナル)、『愛する人に。』『愛する力』『「美人」の条件』(幻冬舎コミックス)、『子どもの自分に会う魔法』(白泉社)、「ひかりの暦」(小学館)等多数。